第114話 新しき精霊竜の目覚め
〝その通りだ〟
突然聞こえてきた声の方を向くと、そこには炎の翼を持った赤い竜、サラマンダーがいた。
〝新たな精霊竜の誕生を言祝ごう。……司祭よ、よく導いてくれた〟
「サラマンダー様……!」
じいちゃんが頭を垂れた。
〝楽にして良い。……我は確信していた。ライト、そなたが我を刃と変えた時から……〟
そのサラマンダーの言葉に、じいちゃんとベヒモスが驚いている。
「お、お前……」
〝サラマンダーを刃と成したのか……!〟
別に悪いことはしてないはずなのに、二人からの圧が凄い。
〝……久方振りに竜の御子が精霊竜として目覚めたのだ、素直に祝ってやって欲しいが……〟
サラマンダーも若干引き気味だ。
俺は圧から逃げるように、サラマンダーの前に移動した。
「な、なぁサラマンダー、聞いてもいいか?」
〝うむ〟
「俺は……どうなったんだ?別に変わったところはないし、竜にもなってないけど……」
翼がどうとか言ってたような気もするが、今のところ何もないみたいだ。
〝今、そなたは人の身に精霊竜の精神を宿している状態だ。そなたがその命を全うした時、魂は世界へと還るが、そなたの肉体は精霊竜として覚醒……つまり竜の姿を得ることになる〟
「そうなのか」
〝それと他の精霊竜との契約も、そなた自身で行えるから心配はいらぬ〟
「良かった、あの牙が無くなったから、どうしようかと思ってたんだ。……じゃあ、今までとあまり変わらない感じなんだな」
〝そうだな……精霊竜の精神を宿せるよう、幾分身体の構造が変化しているが、基本的には人と変わらん。ただ、精神力が増えたことと、敏感な者はお前の中に精霊竜の気配を感じられるかもしれぬから……気を付けるがよい〟
「うん、わかった」
サラマンダーは気遣うように俺を見た。
〝また様子を見に来よう。……ではな、ライトよ〟
そう言うと、サラマンダーは空気に溶けるように消えていった。
入れ替わりにどこからか竜の宝玉が飛んできて、俺の頭の上に乗った。
「……これで、じいちゃんの用事も終わったんだよな?……じゃあ俺たちも帰ろうぜ」
「お前……実はだいぶ肝がすわっとったんじゃな……」
何故か、じいちゃんが感心したように俺を見た。
まぁちょっとひどい目にあったけど、今までとあまり変わらないなら、別に気にする程のことじゃないしな。
そうして俺たちは竜の神殿を後にしたのだった。
村に着いたのは、その日の夕方だった。
ベヒモスは竜の神殿を出たところで、空気に溶けるように消えていき、俺はじいちゃんと徒歩で村まで帰ってきた。
「さすがに腹が減ったわい。帰ったらすぐ飯にしよう」
「さんせーだ」
村の見張り番から結構心配されてたみたいだけど、じいちゃんが適当に誤魔化してくれた。
もう夕食の時間になっているからか、通りに出ている人はまばらだ。
俺たちも足早に家へと向かった。
「さてと、リナベル殿は無事かの?」
言いながら、じいちゃんが家のドアを開けて中に入っていく。
いやいや、リナベルはそんな簡単にくたばらないから、ブックデーモンが100体いたって無事に決まってるだろ。
じいちゃんに続いて家に入ったとたん、いい匂いが漂っていた。
どうやらリナベルが夕食を作ってくれているようだった。




