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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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113/120

第113話 母親のこと

 ベヒモスは俺を調べているんだろう、その場から動かない。

 この際だ、俺も気になってたことを聞いてみよう。

「……なぁじいちゃん。俺も聞きたいことがあるんだけど」

「なんじゃ?」

「俺の母さんのこと……何か知ってたら教えてほしいんだ」

 俺は真っ直ぐに、じいちゃんを見た。

「会ったことないし、顔も知らないから、その……寂しいとかじゃなくて、俺がまだ何も分からない時にそういうことをしてたから……どんな人なんだろうって思って……」

 じいちゃんは何かを堪えるように、じっと俺を見ている。


「……枷を外してもらった時に、一瞬声を聞くことができて……俺に普通の人間としての生を歩ませてあげたいって言ってたんだ。……もう今さらだけどな」

「……あやつめ、そんなに嫌だったのか」

 じいちゃんの握り拳が震えていた。

「じいちゃん……?」

「……子にまで己の考えを押しつけおって……!」

 空を睨んで言葉を吐き出したじいちゃんはちょっと怖かった。


 これ、地雷だったのか?俺が話を振っちゃったせいだけど、なんとかしないと俺に被害が……。

「……ライトよ、お前の母親はわしの娘じゃ。父親については本当に分からん。最期に顔を見ただけだからな」

 幾分落ち着いたのか、じいちゃんは少しずつ話し始めた。


「……あやつは才能があった。儂なんかよりずっとな。幼い頃からどうやら精霊竜の声を聞いていたらしい。せっかくの才能じゃ、わしは司祭となれるよう教えていたが、あやつは全く興味を示さんかった。それよりも都会に出て素敵な人を見付けて、普通に暮らしたいと言っておったわ。そしてあやつが18になった時、置き手紙一つで村を出ていった……」

 俺はただじっと、じいちゃんの話に耳を傾けていた。


「あやつはそれきり手紙も寄越さず……音信不通じゃった。……わしの連れは、お前も知っての通り、早くに病気で逝ってしまったが……連れがおったら、少しはあやつと話が出来たかもしれん……とも思っておったが……。そして、久し振りに帰って来たかと思ったら……、お前を儂に託して事切れおった……」

 じいちゃんの拳がまた、震えていた。


「あやつは気が強くて……自分の意思は曲げない奴じゃった……。儂もだいぶ手を焼いたが、何故こんなことになってしまったのか……。儂はいまだに囚われておるんじゃろうな……」

 じいちゃんにかける言葉が見つからなかった。


 俺はじいちゃんに近付いて、ただハグをした。

「ライト……」

「じいちゃんが過剰に心配する意味がやっと分かったよ……。でも、俺には一緒に戦ってくれる仲間がいるから大丈夫。精霊竜からの頼まれごとを果たしたら、必ずまたここに帰って来るよ。……母さんのこと、話してくれてありがとう」

 じいちゃんは……まだ割り切れてないけど。

 多分、生き方の違いで……、母さんは母さんで精一杯、生きたんじゃないかと思う。


 しばらくして、俺はじいちゃんから離れた。

 何故か、じいちゃんが怪訝な顔をしている。

 どうしたんだ?

「ライト……お前、精霊竜になっておるのか……?」

 えっ……?なんだって……!?

「お前に触れることで感じたが……、これは……」


〝……司祭よ、我もその結論に至った〟

 ベヒモスが言葉を挟んできた。

〝恐らく……ライトの中にあった精霊竜の因子が、牙の力をもってライト自身を精霊竜へと昇華させたのだろう〟

 ベヒモスは俺をしっかりと見据えていた。

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