第112話 精霊竜の因子
「あああああぁっ……!!」
轟音と共に、俺を中心に衝撃波が起こった。
驚いた竜の宝玉が飛んでいく。
じいちゃんはベヒモスが守ってくれていた。
すると、椅子の魔法文字が輝き、光の鎖が現れて俺を椅子に縛りつけた。
「こ、これは……いったい……」
〝ライトは精霊竜の因子を受け継いでいたのか……!? それが牙を取り込むことで活生化され……まだ馴染みきれず暴走しかけている……!〟
「なんじゃと……!? 儂らは精霊竜の巫女の末裔であるだけで……因子など受け継いでおらんはずじゃが……」
〝……そういえば、ライトの精神世界に……小さな金色の竜が棲んでいた……。あれは恐らく後天的に……〟
じいちゃんとベヒモスが何か話しているが、自分が叫んでいる声のせいでよく聞き取れない。
とにかく苦しい……!
力を逃がしたいのにそれが出来ず、内側でずっと暴れ続けている。
どうすれば楽になれる?このまま耐え続けるしかないのか!?
俺の意思では動かせない身体も、自由を求めて光の鎖を引き千切ろうとしている。
これがなければ、きっとじいちゃんとベヒモスにも被害が及んでいただろう。
今はこの光の鎖の拘束が有難かった。
そうしてしばらく苦しんだ後。
突然、背中の方から力が噴き出す感覚があった。
「……黄金色の翼……!」
〝まさか……〟
それと同時に身体が楽になり、光の鎖も消えていった。
「翼が……消えた……」
俺の背後を凝視していたじいちゃんとベヒモスが我に返り、側までやってきた。
「今度こそ……大丈夫だな?」
俺は荒い息を整えながらうなずいた。
「まさかこんなことになろうとは……すまんかったライト、お前を苦しませるつもりはなかったんじゃが……」
「うん、分かってる……ベヒモスも……知らなかったんだろ……?」
〝……お前が精霊竜の因子を持っていると知っていたら、教えてやれたのだが……。ライト、精霊竜の因子を取り込むきっかけなど……何か覚えていないか?……今思えば、我がお前に惹かれたのも……恐らくその因子を持っていたことが、一因だったのではないかと思うが……〟
「その……精霊竜の因子って……何?」
〝そうだな……、お前の中に刻まれた、我等の力の断片とも置き換えることができる。要は、精霊竜の影響を受けているということだが……〟
うーん、そんな出来事あったかな?
最初に会った精霊竜はベヒモスだし。
「ベヒモスは……違うのか……?」
〝いや、我ではない。あの翼の色は違う〟
ん?翼……?
俺は首を捻って後ろを見たが、何もなかった。
〝小さい頃など……は、さすがに覚えがないか……〟
小さい頃……。あ、もしかして……。
「……俺、じいちゃんに吸血鬼の真祖の所で鍛錬したって話をしたよな?」
「ああ、お前に枷が嵌められていたと……それを吸血鬼の真祖に外してもらったんじゃったか」
〝お前に枷を嵌めていただと……!?〟
あ、ベヒモスは初耳だっけ?
〝それは誰だ!? 我が成敗してやろう……!〟
「い、いや、その人はもういないから大丈夫……というか、じいちゃんに話す時も端折っちゃったけど、真祖が言うには……俺の母親らしき人は、原初の精霊竜の力を借りて俺に枷を嵌めたらしい……」
「なん……じゃと……?」
〝原初の精霊竜……だと?〟
「うん。きっかけ……っていったら、それぐらいしかないと思うけど」
〝お前の因子は原初の精霊竜だというのか……〟
ベヒモスは驚くと同時に、俺に鼻先を近付けてきて、そのまま匂いを嗅ぐように鼻を動かしていた。




