第109話 自室にて
次に目を開けた時、そこには見なれた天井があった。
「……いつの間に……」
インディアの俺の部屋だ。
ベッドサイドのテーブルを見ると、竜の宝玉がちょこんと止まっていて、左手の手袋と師匠の魔法陣符が置かれていた。
「あっ……」
俺は飛び起きて、急いで手袋をはめた。
左手のことはじいちゃんに説明してるけど、あんまり見られたくないんだよな。
そして師匠の魔法陣符を手にとった。
……ベヒモスが拾ってくれたのかな。
「そういえば、お礼を言ってなかったな。見届けてくれて、ありがとう」
俺はテーブルに止まっている竜の宝玉に感謝を伝えた。
あの時の俺に、独りじゃないと伝えてくれたのは、やっぱり有り難かった。
「うむ、そなたは良くやった」
そう言って俺の頭の周りを飛び回った後、頭の上に着地した。
「あら、お目覚めのようね」
声が聞こえた方を見ると、部屋の入口からリナベルが顔を出していた。
「リナベル!……あ」
俺、そういえばリナベルに何も言わずに行っちゃったよな。
ま、まずい……、ここは先手必勝だ!
「ごめん、リナベル!勝手に動いちゃって……!この通りだ、謝るよ!」
俺は勢いよくリナベルに頭を下げた。
そのままの姿勢で待っていると、リナベルがゆっくりと近付いてきた。
「……私に吸血された後だったから、ちょっとびっくりしたけど……」
俺の前で立ち止まると、俺に頭を上げさせた。
「詳しくはベヒモスから聞いたわ。……大変だったわね」
そう言うと、俺を抱き締めた。
「リナベル……怒らないのか?」
「あら?怒って欲しかったの?」
「い、いや……」
「……怒れないわよ。……マリーを送って、無事に戻ってきたんだから」
リナベルは俺の頭をぽんぽんっと軽く叩いて、俺から離れた。
「……アクセラバードもいたって聞いたわ、ほんとによく無事だったわね」
「うん、それなんだけど……最初に来たのはグラナギアで……」
俺はその時の状況をリナベルに話した。
「結果的に……アクセラバードに助けられた形になったのかも……」
リナベルは難しい顔をしていた。
「……ライト君、それを恩に感じてはダメよ。あくまで向こうの都合でそうなっただけ。あなたは運が良かったのよ」
「そ……そうなのかな?」
「ええ、そうよ」
リナベルが真っ直ぐに俺を見つめてきた。
その目を見ていると、なんだかそんな気がしてきた。
「確かに……運が良かったんだろうな」
その時、俺の腹の虫が盛大に鳴いた。
「ご、ごめん……。そういえば俺、どれくらい寝てたんだ?」
「うふふ、まる二日ってところかしら」
俺は衝撃を受けた。豊穣の力を使った時でさえ、まる一日だったのに……。
そりゃ腹も減るわな。
「あなたが泣き疲れて寝てしまったって、ベヒモスが言ってたわ。それでここへ運んで来た時、一悶着あったんだけど、デジャヴを見てるようで面白かったわ」
リナベルはころころと笑った。
……俺が寝てた間に何があったんだろうな?
「さ、それじゃご飯を食べに行きましょ。おじいさんを安心させてあげて」
「うん、そうだな」
俺はリナベルと共にダイニングへ移動した。




