第105話 師弟対決
先に動いたのは紅い機神だった。
剣を銃に持ち替えて銃撃してきた。
「くっ……!」
あの銃は連射できるのか!
フェルドも似たようなやつを持ってたから、量産タイプだな……。
俺はひたすら避ける。
あの銃は確か精神力が切れるまで撃ち続けられるはず……。
このままじゃ、埒が明かない。
「“水槍”」
銃撃を避ける時に放った水の槍が、紅い機神に襲いかかる。
紅い機神は銃撃で水の槍を破壊したが、辺りに大量の水がばら撒かれた。
「かかったな!“天地雷”!」
天地を繋ぐ雷が紅い機神に降り注いだ。
水をかぶってるから結構効くはずだ。
「ガアアアアッ……!!」
紅い機神が吠えた。
一瞬、片膝をついたが、すぐに態勢を立て直し、再び剣で斬りかかってきた。
「うそだろっ!」
効いてないのか!?
俺は後ろに下がって剣を躱した。
その後も斬りかかってきた剣を連続で躱し続けていると、紅い機神がじれたのか、銃に切り替え撃ってきた。
「こんな至近距離で……!」
身体を捻って避けるが、少し脇腹を持っていかれた。
「“回復”……!」
即座に治療するが、痛みを感じた身体はすぐには動かない。
紅い機神は再び剣に切り替え、袈裟斬りを放ってきた。
「“魔法盾”」
展開された障壁が、破壊されながらも紅い機神の剣を弾いた。
その隙に、紅い機神から距離をとる。
「“爆熱光”!」
凄まじい爆発が紅い機神を包み込んだ。
「グアアアアアッ……!!」
紅い機神が苦悶の声を上げた。
効いてる……!
このクラスの魔法じゃないと、大したダメージは与えられないのか……!
ごっそりと魔力を持っていかれたけど、迷ってる場合じゃない。
続けて撃とうとしたら、銃撃された。
「くそっ……!」
さすがにそれは許してくれないか……!
俺はまた、ひたすら躱す。
そして銃撃が途中から魔法に切り替わった。
「やばいっ……!」
ゴブリン共を薙ぎ払った炎の渦に襲われたと思ったら、溶岩みたいな岩が飛んでくる。
これは……両の腕を振るう者の魔法だ……!
「“吹雪”……!」
……師匠はサラマンダーを信仰してて、加護を得てるから、火系の魔法が得意だった。
両の腕を振るう者の能力で使う魔法の片方は、いつも火の魔法……多分、制御がしやすかったからだろうな……。
紅い機神が放った魔法を、ブリザードが飲み込んでゆく。
こっちも身体強化をかけてるから、ハイクラスの魔法の威力は半端ないはずだ。
「“氷結霧”!」
ダメ押しで、もう一つ氷系の魔法を重ねる。
それを見た紅い機神は「獄炎」を重ねて相殺した。
「マジか……!」
その炎の中を突っ切って、紅い機神が斬りかかってきた。
間に合わない……!
俺は咄嗟に左手で剣を受けた。
斬り飛ばされるなら、それでも構わない。
硬質な音が響き、紅い機神の剣が止まった。
驚く紅い機神を「風」で吹き飛ばす。
そして「雷」の魔法陣符を取り出した。
今なら、俺にも出来ると思う。
魔法陣符に魔力を流すと同時に唱えた。
「“雷光矢”!」
空中にいる紅い機神に、轟音と共に無数の雷の矢が降り注ぐ。
悲鳴すら掻き消され、紅い機神は地面に叩きつけられた。
「出来た……!どうだ……!?」
声と魔法陣符の二重詠唱。
紅い機神は動かない。
「やった……のか?」
紅い機神に近付こうとした時。
急に起き上がった紅い機神は狂ったように「獄炎」を連発してきた。
「ちょっ……!」
俺も「氷結槍」でその全てを相殺する。
どんだけ魔法陣符に「獄炎」を描き込んでんだよ、師匠……!
しばらく続いた魔法の撃ち合いは、唐突に終わった。
紅い機神の魔法陣符が発動しなかったのだ。
「魔力切れ……!やるならここしかない……!」
俺は一枚の魔法陣符を取り出した。
ここに来る道すがら、結局いい策が思いつかず、苦し紛れに描いた魔法陣。夜にその威力を増すという。
俺の魔力も残りわずか……頼む、効いてくれ……!
魔法陣符に魔力を流すと同時に唱えた。
「“流星衝”!!」
紅い機神が銃に切り替え、その引き金を引く直前。
空から幾筋もの光が、紅い機神に降り注いだ。
それは凄まじい威力をもって、周囲の地形を変えていく。
衝撃と共に粉塵が舞い、紅い機神の姿が見えなくなった。
しばらくの間続いたそれが終わった後、辺りは静寂に包まれた。




