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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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104/120

第104話 決意

 どれくらいの時間、そうしていただろう。


 流す涙も枯れた頃、ようやく心が落ち着いてきた。

「師匠……」

 待ってると言ったその声は、苦しそうだった。

 そして、時間がないとも。


 ……アクセラバードが言っていた。グラナギアが紅いやつに精神洗浄を行ったって……。


 記憶と感情をまっさらにされて……それでも、俺を思い出して会いに来た……。

「俺は……」

 師匠の想いに応えてあげたい……。


 けど、それをすれば二度と……師匠に会えなくなってしまう……。


 俺はもう一度、師匠の姿を思い浮かべた。

 俺に触れたその手は、少し震えていた。

 師匠は苦しんでる……。

 苦しんでるその声は、救いを求めているように思えた。

 他ならぬ俺に、救って欲しいと……。


 その瞬間、俺の心が決まった。

「……分かった、師匠。今行くよ」


 ようやく踏ん切りがついた。

 俺が師匠を救わなきゃ。


「後でベヒモスに謝らないとな……」

 さっきは感情がぐちゃぐちゃになってて気付けなかったけど、ベヒモスが言ってたのはそういうことだったんだ。

 許してくれるか分からないけど……。


「でも、まずは師匠の所に行かないと」

 俺はそのまま静かに村を後にした。



 北の山までは徒歩でおよそ1時間。

 無策で行けば逆にやられるだろうから、道すがら準備をすることにした。

「心は決まったようだな。ならば、我が見届けよう」

 声が聞こえて、竜の宝玉が頭の上に乗ってきた。

「ありがとう」

 独りじゃないと思うと、少し心が軽くなった。


 さらに雲が出て、いつもより暗い夜道をひたすら歩く。

 最初、リントヴルムに頼もうかと思ったけど、どこかに行ってていないし、「飛翔(フライ)」は……まだちょっと自信がないんだよな。

 こんなことならもっと練習しとけば良かった……。

 ぼやいててもしょうがない、とにかく急がないと。


 師匠は……強い。

 現役のSランク冒険者で、両の腕を振るう者(ツヴァイハンダー)、今は……機神の精神感応兵器(ウェポン)も使えるはずだ。

 対して俺は、右手しか使えず本来の戦い方が出来ない。

 コーディから近接戦闘は避けた方がいいと言われてるから、剣も使えない。

 魔法一択か……結構きついな。

 それでも、やるしかない。


 北の山の山頂付近には、古い時代に建てられたと思われる神殿の跡があった。

 神殿は石で作られていたのだろう、繊細な彫刻を施された石があちこちに散らばっている。


「……お待たせ、師匠」

 奥に佇んでいた影に、声をかけた。

 影が振り返り、こちらへ歩いてくる。

「……遅イ」

 紅い機神は、俺の前で立ち止まった。

「モう……来ナいかト思っテイた……。アイつに見付カる前デ良かっタ……。ウゥッ……!」

 紅い機神は頭を押さえた。

「イイかい、ライト……機神の心臓(コア)ノ位置はヒトと変わラなイ……!隙がアれバ……ひと思いニやっテ……アアアアアッ……!!」

「師匠っ……!」

「……我々ノ敵ハ……排除スル……!」


 紅い機神は剣を抜いて斬りかかってきた。

「くそっ、いきなりかよ……!」

 俺は防御膜を張り、「身体強化(リインフォース)<全(オール)>200%」と「継続回復(リジェネレーション)」をかける。

 そして剣の間合いから急いで脱した。

 紅い機神は追撃とばかりに「炎(フレイム)」を放つ。

「“氷(アイス)”!」

 炎と氷がぶつかり、地面に水たまりができた。

「相殺できた!威力は負けてない……!」

 紅い機神はさらに「雷(サンダー)」を撃ってきた。

 俺は横っ飛びで避け、急いで態勢を整える。

「魔法陣符(マジックカード)はほんと何使われるか分からないから厄介だよな……」


 紅い機神は手を止めて俺の出方を伺っている。

 俺はそんな紅い機神を睨み返した。

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