第103話 夜の訪い
その夜、ふと目が覚めた。
リナベルに吸血された後は、だいたい朝まで深く眠ってることが多いんだけど。
誰かに呼ばれたような気がするんだよな。
俺はベッドから下りて家の中を歩いてみたけど、寝てるじいちゃんとリナベル以外誰もいなかった。
いや、いたらいたで怖いんだけど。
でも……たまにいるんだよな、迷いスピリットみたいなのが。
そういうのはじいちゃんの専門だから、出た時は祓ってもらってたな。
「うーん、家の中じゃないとしたら外か……?」
なんとなく気になって、外に出てみることにした。
空には雲がかかっていて、いつもより少し暗く感じる。
俺は家の周りをぐるっと回って、花畑までやってきた。
「やっぱり気のせいだった……ん?」
奥に、何か見える。
よく目を凝らしてみると、それは……。
そこにいたのは……。
「あ、あ……」
紅い機神だった。
「なん……で……」
動揺する俺に、紅い機神が近づいてきた。
「やっト……見付けタ……」
紅い機神は俺に手を伸ばし、そのまま抱き込んだ。
「ライト……あんタにシか…… 頼めなイ……。ドうか、あタしを……破壊しテ欲シい……。もう……時間ガない、北の山デ……待っテる……」
苦しげにそう言うと、すぐに俺から離れ、闇の中に消えていった。
何も、考えられない。
俺はしばらくその場に立ちつくしていた。
ようやく思考を再開するも、今あった出来事が幻だったんじゃないかとさえ思えてくる。
「北の山……」
そこで待っていると言った。
だけど……!
「できる訳……ないじゃないか……!」
迷惑かけて、あれだけお世話になった恩人なのに……!
どうして……どうして俺なんだよ、師匠……!
「くそっ……!」
感情を抑えきれず悪態をついたものの、段々と涙が溢れてきた。
俺は力なくその場に膝をつき、うずくまることしか出来なかった。
〝……いつまでそうしているつもりだ?〟
気付くと、ベヒモスが目の前に立っていた。
「ベヒモス……」
一瞬顔を上げてベヒモスを見たが、またすぐにうつむいた。
〝師を救ってやらないのか……?〟
師匠を救う、だって……?
「違う……!俺には……師匠を救うなんて出来ない……!ヒルダに聞いたら、もう元には戻れないって……!」
〝お前こそ何を勘違いしている?我は……〟
「分かってる!でも……俺には無理なんだよ……!何でお世話になった人を……やらなきゃならないんだ!師匠は俺を救ってくれたのに……!そんな恩を仇で返すようなこと……俺は納得できない……!」
師匠は俺を生かしてくれた、なのに俺は……!
〝納得できずとも、師の願いは理解しているのであろう?……疾く行ってやると良い、師はお前を待って……〟
「うるさいっ……!!」
俺の声に、ベヒモスが目を見開いて固まった。
「嫌なんだよ……!俺には出来ない……!」
頭では、理解できていても……!
「うう……」
俺は再びうずくまった。
〝……ふん、情けない奴め。ならば、いつまでもそうしているがいい〟
そう言うと、ベヒモスは姿を消した。




