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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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102/120

第102話 精霊竜の居場所

 見覚えのある書庫が目の前に広がっている。

 無事に元の場所に戻って来たようだ。

「ふう……えらい目にあったわい。まさかここにブックデーモンがおったとは」

 じいちゃんは服を払ったあと、下に落ちていた本を拾い上げた。

「おお、これじゃこれ。この本を探しとったんじゃ」

 動作に違和感はないから、どうやらケガもないようだ。


「ふむ……原素神殿のさらに北、険しい山に囲まれた高原に、氷雷の神殿と光闇の神殿が建っておるらしい。そこに4柱の精霊竜が祀られておるとのことじゃ。……どうやら昔の巡礼路だったようじゃな」

「へぇ……」

「巡礼路の行き着く先は、精霊竜王バハムートの御下(みもと)であるという……。お前が会えるかは分からんが、この本にはそう書いてあるな」

「精霊竜王……バハムート……」


 精霊竜たちを束ねる存在であり、一説には原初の精霊竜より産み出された一番最初の精霊竜であるといわれている。


「気合いを入れて契約してこい」

「うん、分かった」

 俺はじいちゃんの目を見て、しっかりとうなずいた。

「……さて、動いたら腹が減ったのう。そろそろ食事にするか」

 窓の外にきれいな夕焼けが見える。

 それを見て思い出した。

「じいちゃん、俺の花たちは元気か?」

「う、うむ、とりあえず枯らしてはおらんぞ」

 枯らして、ない……。

「……じいちゃんとリナベルは先に食べててくれ。俺は花を見てくる」

 かなり心配だ。

 俺は振り返らずに花畑へ向かった。


「……ほんとにかろうじてってところだな」

  咲き終わった花はそのままにしてるし、雑草を抜いてない。ところどころ元気のない花もある。

「こりゃやることだらけだ……」

 俺は黙々と作業をした。

 さすがに雑草を抜く魔法なんてないから、手で丁寧に抜いていく。

 雑草って言っても、ここじゃ緑は貴重だから、後で適当な所に植えなおしとこう。

 それから咲き終わった花を摘んで、伸びすぎた茎を切って整えていく。

 元気のない花たちに肥料もやっとかないとな。


「うん、これでよし」

 俺は最後に「水(ウォーター)」の魔法陣符(マジックカード)を発動した後、少し魔力を加えた。

 水は細かく分かれて、雨のように花畑に降り注ぐ。

「俺……本当に魔法の腕が上がってたんだ……」

 旅に出る前は、何回か「水(ウォーター)」を使わないといけなかったのに、今は1回で終わってしまった。

「うむ、花々が生き返った。喜ばしいことよ」

 頭の上から聞こえてきた声にびっくりした。

 乗っかってたの、時々忘れてるんだよな。

「……む、来客だぞ」

 そう言って、竜の宝玉は飛び立った。


 振り返ると、花畑の入口にリナベルが立っているのが見えた。

 リナベルは真っ直ぐに俺の所に向かって歩いてくる。

「作業は終わったかしら?……遅いから迎えに来たわよ」

 ……ん?リナベル、耳が尖ってる……。

 俺の視線を感じたのか、リナベルはバツが悪そうに頭をかいた。

「ここには心地良い魔力が漂っていて、身を委ねていたら集中が切れてしまったのよ。滅多にそんなことはないんだけどね」

 そう言って、俺の目の前で立ち止まった。

 俺は反射的に一歩あとずさる。

 こういう時のリナベルは、多分歯止めが効かないから。

「……ふふ、良く分かってるじゃない」

 リナベルは俺の右腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。

「わっ……」

「いつも悪いわね」

 よろけた俺を受け止めると、リナベルはそのまま俺の首筋に犬歯を刺し込んだ。


 やっぱりこうなったか……。

 俺は諦めて、リナベルのされるがままになっていた。

 空にはすでに星々が煌めいていた。

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