第101話 禍々しい書庫の探索
目を開けると、そこも書庫だった。
ただ、じいちゃんの書庫と比べると、かなり禍々しい。本棚の色も黒に近いブラウンで、敷かれている絨毯はボロボロ、しかも床のいたるところに怪しげな本が散乱している。
「ふふ、上手くいったわね」
「リナベル!」
立ち上がった俺の後ろにリナベルがいた。
「ん?上手くいった……?」
どういうことだ?
「ええ。ブックデーモンは本に宿る実体のない悪魔系の魔物でしょ?宿る物がなくなると死んじゃうから、本を燃やそうとした私たちを自分の空間に引き込んで、殺そうとしてるってところね。きっとあなたのおじいさんもここにいるはずよ」
そういうことか……!
「さ、早くおじいさんを探しましょ!精神力を吸われて廃人になっちゃうわ」
「わかった!」
それから禍々しい書庫を、じいちゃんの気配を頼りに進んでいった。
時々俺たちを排除しようと、本が襲いかかってくる。
本が噛みついてきたり、魔法を使ってきたりとやりたい放題だ。
本が噛みつくって何なんだよ!
イラっとしたから左手の方ではたき落としてみたら、結構ダメージがあるみたいで、だいたい一撃で倒せたな。
あれ?もしかして左手、意外と使える?
「ライト君、後ろ!」
俺はリナベルの声に反応して、後ろから噛みつきにきた本に左の裏挙をヒットさせた。
壁に激突した本は、音もなく消えていく。
あぶね、油断してた。
「……地味に凶器よね、それ」
「同じこと考えてたよ。痛くないし金属だから結構いけそうな気がする」
まぁいざって時用で。ただ硬そうなやつは気を付けなきゃだけど。
禍々しい書庫は迷路のようになっているところがあって、巧妙にじいちゃんの気配を隠そうとしているのが分かる。しかも……。
「また行き止まり!」
この棚、壊せたりしないかな……。
「……何か物騒なこと考えてない?……大丈夫よ、近くまで来てる証拠だから」
「ほんとか?」
「ええ、来てほしくないから時間かせぎをしてるのよ。案外すぐそこかも……。ほら、噂をすれば」
突然現れたブックデーモンが、リナベルに襲いかかってきた。
「おっと。……ライト君、私がこいつを引きつけてる間におじいさんを探して!」
「分かった!」
リナベルがあんな魔物に負ける訳がない、俺は急いでじいちゃんの気配を辿った。
「この奥か!」
本棚の角を曲がり、辿り着いたその先にいたのは……。
「あ……れ?」
ブックデーモンをシバいているじいちゃんだった。
あいつ、複数いたのか!
「ふん、まだお前に喰われるほど弱っとらんわい」
トドメとばかりに流れるような動作で魔法陣を描き「炎」を叩き込んだ。
業火に焼かれたブックデーモンの断末魔の叫びが辺りに響き渡る。
そして跡形もなく消えていった。
「……あら、もしかして私たちは必要なかったかしら?」
本棚の角からリナベルがひょっこり現れた。
「いや、助かった。……外から攻撃を加えてくれたんじゃろ?その時に拘束から抜け出せたんじゃよ」
その時、辺りにふわりと光の粒子が舞い始めた。
「そろそろ時間ね、急がないと空間の崩壊に巻き込まれるわ」
リナベルは俺とじいちゃんに向けて手を差し出した。
俺は迷わずリナベルの手を取り、それを見たじいちゃんも少し遅れて手を取った。
「いくわよ、“脱出”!」
俺たち三人の姿がその場から消えていった。




