第9話「星と闘の向こう側」
夜のゲーセンは、昼間よりも静かだった。
紗佳は星雀PASSと雀闘羅カードを握りしめながら、
奥の筐体へ向かった。
(今日は……オンライン対戦、やってみよう。)
胸の奥が少し震える。
怖さと期待が混ざった、初めての感覚。
紗佳は星雀ONLINEの筐体にカードを挿した。
「オンライン対戦を開始します」
画面が青白く光り、
全国のプレイヤーがマッチングされていく。
(どんな人が来るんだろう……
CPUとは違う、“本物の読み”が来る。)
対局が始まる。
相手の打牌は、CPUよりもずっと静かで、深い。
(この人……河の作り方が綺麗。
読みを隠してる……)
紗佳は星雀ONLINEで磨いた“静かな影”を使い、
相手の手を追う。
中盤、相手が一瞬だけ迷った。
(揺れた……!
ここだ──)
紗佳は牌を切る。
画面が止まり、文字が浮かぶ。
ロン
紗佳の勝ちだった。
「……っ!」
胸の奥が熱くなる。
(オンラインでも……通用するんだ。)
紗佳は席を移し、
赤黒い光を放つ雀闘羅の筐体へ向かった。
カードを挿すと、
画面が力強く光る。
「オンライン闘卓へようこそ」
(星雀ONLINEとは……空気が違う。)
対局が始まる。
相手は序盤から攻撃的だった。
(速い……!
星雀ONLINEの人よりずっと速い……!)
紗佳は必死に読みを重ねる。
星雀ONLINEで得た“静かな影”と、
雀闘羅で磨いた“攻撃の圧”を同時に使う。
中盤、相手が一気に攻めてきた。
(この攻撃……裏がある。
もう一つの形を見てる……)
紗佳は迷いを振り切り、
一打を選んだ。
画面が止まり、
赤い文字が浮かぶ。
ロン
紗佳の勝ちだった。
「……勝てた……!」
胸の奥が熱くなる。
星雀ONLINEとは違う、
“闘いの熱”が指先に残った。
筐体から離れると、
紗佳は深く息を吐いた。
(星雀ONLINEの静かな読み……
雀闘羅の攻撃的な読み……
どっちも必要なんだ。)
胸の奥に、
昨日よりも濃い影が揺れていた。
(影が濃くなるほど……
私の華も強くなる。)
紗佳はそっと呟く。
「……もっと強くなる。
二つの星の向こう側まで。」
その声は、夜のゲーセンに静かに溶けていった。
こうして──
紗佳の華は、オンラインの強者たちと戦うことでさらに深く、強く揺れ始めた。
第9話を読んでくださり、ありがとうございます。
霧島紗佳という少女は、光と影の境界に立つ存在です。
彼女が初めて卓に向かう瞬間の“揺れ”を、
どうしても丁寧に描きたいと思いました。
麻雀という勝負の世界は、
牌の音よりも、心の音のほうがずっと大きい。
紗佳の影が揺れ、京一郎の影が寄り添い、
二人の距離が静かに動き始める──
その最初の一歩が、この1話です。
ここから紗佳の“華”と“茨”がどう育つのか、
見守っていただければ嬉しいです。
霧島葵




