第6話「星の読み」
部室に入ると、部員たちが自然と紗佳に視線を向ける。
「紗佳、今日も頼む!」
「昨日のアドバイス、マジで助かった!」
紗佳は笑顔で頷く。
昨日よりも自然に、胸の奥が落ち着いていた。
(星雀ONLINEでの練習……
やっぱり意味があったんだ。)
卓につくと、指先が静かに牌を撫でる。
その動きは、昨日よりも深く、迷いが少ない。
一年の男子部員が対局している。
紗佳はその後ろで静かに見守る。
(この形……三色が見える。
でも、スピードを重視するなら……)
紗佳は自然と口を開いた。
「その牌、切らない方がいいかも。
相手の河、ちょっと変だよ。」
男子部員は驚いたように振り返る。
「え、紗佳……なんで分かるの?」
紗佳は少し照れながら答える。
「昨日、星雀ONLINEで練習したの。
CPUの打ち方が……なんか、読みの勉強になって。」
部員たちがざわっとする。
「ゲーセンで練習してるのか!」
「紗佳、やる気すごいな……!」
紗佳は照れながら笑った。
(私……本当に麻雀が好きなんだ。)
その様子を、京一郎は卓の向こうから静かに見ていた。
紗佳がふと気づき、目が合う。
京一郎は、昨日とは違う表情をしていた。
どこか、ほんの少しだけ柔らかい。
(京一郎くん……なんでそんな顔するの?
怒ってるわけじゃない……よね?)
胸の奥がざわつく。
でも、そのざわつきは昨日よりも優しかった。
「……打つぞ。」
京一郎が静かに言う。
紗佳は頷き、卓につく。
配牌を整えると、京一郎がわずかに目を細めた。
「昨日より……迷いが減ってるな。」
「うん。星雀ONLINEで練習したから……
なんか、読みが前より見える気がする。」
対局が始まる。
紗佳の読みは冴え、京一郎の手を何度も揺らす。
しかし──
京一郎は紗佳の一打を見て、静かに言った。
「……そこ、深い。」
紗佳は息を呑む。
「深い……?」
「昨日までの“浅さ”じゃない。
星雀ONLINEで迷った分、読みが一段階深くなってる。」
紗佳の胸が熱くなる。
(京一郎くん……気づいてくれてる。)
京一郎は続けた。
「ただし──深い読みには、深い影がつく。
その影を見失うな。」
紗佳は唇を噛む。
(影……また出てきた。
でも、昨日より怖くない。)
◆ ラスト:星の読みが紗佳を前へ押す
対局が終わると、紗佳は静かに息を吐いた。
昨日より強くなった自分を感じる。
(星雀ONLINEでの練習……
私の読みを変えてくれたんだ。)
部室を出ると、夕陽が校舎を赤く染めていた。
紗佳は空を見上げる。
華は広がり始めた。
影も、茨も、確かに形を持ち始めている。
紗佳はそっと呟く。
「……もっと強くなる。
星の読みも、影の読みも……全部抱えて。」
その声は、夕陽に溶けて消えた。
こうして──
紗佳の華は、星雀ONLINEの光を受けてさらに強く輝き始めた。
第6話を読んでくださり、ありがとうございます。
霧島紗佳という少女は、光と影の境界に立つ存在です。
彼女が初めて卓に向かう瞬間の“揺れ”を、
どうしても丁寧に描きたいと思いました。
麻雀という勝負の世界は、
牌の音よりも、心の音のほうがずっと大きい。
紗佳の影が揺れ、京一郎の影が寄り添い、
二人の距離が静かに動き始める──
その最初の一歩が、この第1話です。
ここから紗佳の“華”と“茨”がどう育つのか、
見守っていただければ嬉しいです。
霧島葵




