第12話「支部大会開幕」
支部大会当日。
蒼陵南高校の一行が会場に到着すると、
空気が一気に変わった。
体育館の一角に設けられた対局スペースは、
静寂と熱気が同居している。
卓の配置、点棒の音、選手たちの影──
すべてが“勝負の場”の匂いを放っていた。
紗佳は会場に足を踏み入れた瞬間、
胸の奥がざわついた。
(影が……多い……
重い影……軽い影……
揺れてる影……
全部違う……)
影の深度を知ったばかりの紗佳には、
この空気はあまりにも濃かった。
京一郎が隣で言う。
「紗佳。
影を軽くして、深度を意識して歩け。」
紗佳は小さく頷き、
呼吸を整えながら会場を見渡した。
◆ 各校の影
真田がタブレットを開き、
対戦校の情報を確認しながら説明する。
「まず霧谷総合。
“変則の迷宮”と呼ばれる学校だ。
打ち筋が読めない。
影が乱される。」
紗佳は霧谷総合の選手を見る。
彼らは静かに卓を見つめているが、
影が常に揺れているように見えた。
(迷宮……
影が乱される……)
真田は続ける。
「次に無音寺高校。
“影ゼロ”。
影を消す打ち方をする。」
紗佳は息を飲む。
影を読む自分にとって、
影がゼロの相手は最悪の相性だ。
(影が……ない……
どうやって読むの……)
真田はさらに言う。
「蒼陵中央。
“実戦派”。
影を揺らすというより、
流れを掴むタイプだ。」
紗佳は蒼陵中央の選手を見る。
彼らは落ち着いていて、
影が一定のリズムで揺れている。
(流れ……
影とは違う揺れ……)
京一郎が紗佳の肩に手を置く。
「紗佳。
影の深度を意識して見ろ。
揺れを怖がるな。」
紗佳は深呼吸した。
◆ 蒼陵南の影
蒼陵南高校の控え席に着くと、
章仁が静かに言った。
「霧島。
お前の影は深い。
深度がある影は、揺れやすい。
だが揺れは“記録”だ。
揺れを抱えたまま打て。」
紗佳は頷く。
(揺れても……
負けない……)
武流が横から言う。
「霧島。
茨は使うな。
お前は茨じゃない。
影と華だ。」
紗佳は拳を握る。
(茨は使わない……
影と華で……)
玲央が笑う。
「紗佳。
支部大会は怖いけど、
怖いからこそ面白いんだよ。」
紗佳は少しだけ笑った。
◆ 開会式
開会式が始まると、
会場全体の影が一斉に揺れた。
選手たちの影が重なり、
深度の違いがぶつかり合う。
紗佳はその中で、
自分の影の揺れを感じていた。
(揺れてる……
でも……逃げない……)
京一郎が小声で言う。
「紗佳。
影を軽くして、深度を抱えろ。
それが……お前の麻雀だ。」
紗佳は静かに目を閉じた。
影が揺れる。
深度が震える。
だが──逃げない。
(揺れてる……
でも……これが私の影……)
開会式が終わり、
いよいよ一回戦が始まる。
インターハイ編スタートこれからさらに盛り上げていこうと思います




