ー弐拾伍ー「中京」
何とかテストも終わり、前のから一ヶ月以内に投稿できたのですが、時もに比べれば短いですが、読みづらいです。
更に、スパンを置き過ぎた所為か、書きたかった内容がぱーんしたんで、自分が書きたかった程全体的な内容が深掘り出来なかった事が未練です。
其れで避ければどうぞ。
葉月の七日。
「ちょっとあんた!そんな所で暇してんなら手伝いなさい!!」
「え…い、今、修行ちゅ「ただ飛び跳ねてるだけで何が修行よ!もたもたしないで早く来なさい!」」
※ ※
「…ちゃんと、自主トレだったんだけど、なー…」
「…どんまい…」
其れなりに仲をよくさせてもらっている弦作さんの妹さん、みこさんに否応なく連れて来られて、文官の仕事の手伝いをさせられる事になった。
廊下を一緒に歩くのは、さえちゃん、みこさん、弦作さんに僕の四人。殿の正面口に纏めて置かれていた複数の木箱を分けて運び出していた。此の中で多分一番力がある所為か、僕のだけ異様に大きいし重いし。自主トレは中断させられたが、此れも一種の筋力トレーニングだと思っておこう。基本武器が針刀と針の僕に筋力が必要かはさておいて。
「其、れにしても…此の木箱、重い、ね…何が入っている、の?」
「薬の類よ」
「薬?」
「此処には大和と、最近はさえがいるから薬なんていらないって思われるけど、治療系の歌は血にしろ精神的疲労にしろ負担が大きいからね。軽々しく歌に頼るわけにはいかないのよ。殿の外じゃあ、歌で治療なんてあり得ないしね。
南環で採れる薬草の類ならまだしも、そうじゃないやつは他から貰わないといけないのよ。
其れが今日届いたの。
先ずは此れを殿の保管場所に移して、中身の不備の確認、其れから運ぶ場所ごとに振り分けて…あ~、考えただけでも嫌~!」
上の方に向かって叫ぶみこさんに、弦作さんは隣で、「万殿は楽しそうでしたけどね」と苦笑していた。
「じゃ、じゃあ…さえちゃんは、く、薬だから、手伝ってる…わけか」
「…確認作業とかは…携わる人が一番……だって。………本来なら…大和がやるべき……なん…だけど…………」
「いいのよ。薬屋なのに日光にやられた不養生野郎よりも、あたしはさえの方が信用できるわ」
※ ※
「え?…二人、って…ふ、双子ってわけじゃ、ないの?」
「うん。僕が生まれてから十ヶ月後にみこが生まれたので、生まれた年は一緒なんです」
「…だから…同じ年なんだ…」
「双子はよく似るらしいんですけど、わたし共は其れ以上の自身はありますね。
とはいえ、性格といえばわたしはみこ程堂々とはしていられませんし、兄上殿等にはがたいから何迄離されましたから其の皺寄せがきたのではないかと「弦作!止まって!!」
…みこ?」
一番前を歩いていたみこさんが唐突に声を荒げ、弦作さんは表情を引き締めてみこさんの様子を窺った。
警戒心を隠しきれていないみこさんの見る先には、今廊下の角を曲がった二人の男がいた。彼等を見て、弦作さんも肩に力を入れ、僕とさえちゃんを彼等から遮るように体の向きを変えた。
彼等は、弦作さんやみこさんと同じ格好で文官らしかったが、装飾が凝り、煌びやかと言えばいいのか、己が上位であると主張するような格好だった。殿の中で、こんな人達は見た事がない。
二人の男の内、先に歩く方の深いダークピンクの長髪の男がみこさん達を目で捉えると、面白そうに顔を歪めた。
「おやおや、此れは此れは麗しきみこ様では御座いませんか。あとは帰るだけという矢先に貴方のような御方に会えるとは、わたくし、とてもでは表せぬ程の幸せ者で御座いますなぁ。
弦作様もご無沙汰で御座いますとも」
舐めるような口調で喋りながら後ろに男を伴い近づいてくる男。みこさんは其の男に絶えず嫌悪の目線を送る。其の足は後ろに引きそうになった所を踏ん張った。
「〈中京〉の高位文官であるあんたが、唯の春の都の一文官でしかないあたしに話しかけるなんて大層お暇なようね。油を売ってるくらいなら、早く中京にでも帰って〈帝〉の御機嫌でも窺ったらどう?」
「いえいえ、中京を支えて下さっている各都の、勤勉たる文官様と話を交わらせるもわたくし共の立派な役目で御座いますから。其のような謙遜は不必要で御座いますよ」
「ふん…で、今日は何の用?」
「本日は定期の情報交換で御座いますよ。充実とした時間を過ごさせて頂きました。…しかしながら、此のような取るに足らない小事で都の最上位者である藤姫様が出張るのは如何様な事とかと。中京が一小役人に対して行うには些か過剰ではないかともわたくしとしては考えが御座いますわけでしてね。
とはいえ、関係の度合いというのもありますから、此処は一つ、彼の方の傍付きである…理知様、などは如何でしょう」
意気揚々と口を回す男に対し、みこさんは苦虫を嚙み潰したような表情で、「あんたの口で理知の名前を口にしないで…!」と口にした。
そんな大きな声ではなかったが、けして聞こえない距離ではない其れを目尻を上げるだけで流した男は、視線を少し逸らして、弦作さんの後ろに隠れていた僕達…特にさえちゃんに目を向けた。
「其の方々は?」
「っ!此の方々は…貴方には関係ない人達です…!」
懸命に言葉を重ね、興味を消そうとしたが男には然程効果がなく、弦作さんが退かされずいっと男はさえちゃんに近付いた。
「…そういえば、風の噂で聞きましたねぇ。春の都で五人の若い客人を迎え入れた、とか。尚且つ、其の全員が詠い手である、とか。其の一人が治癒の歌意であるとか、ねぇ…」
「「っ!!」」
弦作さんとみこさんが、あからさまに不味いという顔をして息を呑んだ。
「春の都の殿に在中する治癒師は大和様一人であったというのに、其の装いと同じ様な姿という事は、貴方こそが治癒の詠い手なので御座いましょう。
いや、羨ましいですねぇ。傷ついた身体を治す力を力の持ち主を手に入れられる、というは」
其の時見えた。其の男の目に薄暗い何かが映り込んですのを。
さえちゃんも逃げようと足を後ろに下げるが、男の目が其れを許してはくれない。男の手が今にも触れそうになっていた瞬間、
「其の子は!!」
みこさんが大きな声で叫んだ。
其の声に反応して、さえちゃんを見ていた男の目がみこさんに向く。目が離れた事でさえちゃんの肩から力が抜け、弦作さんが自分の後ろに下げた。
「確かに治癒の力を持った珍しい子よ」
「ほぉ…やはりそうで御座いましたか」
「でも、万物に通用する所為で其の能力は他の同能力に比べても格段に弱いわ。能力を行使したところで、間に合わないで殺す可能性だって大いにある。そんな能力、中京には必要ないわよね?」
冷や汗を流しながら、口角のひくつく得意気な笑顔でみこさんは男に問いた。
男は二、三秒みこさんに目を向けて、溜息を吐いて、
「…冗談で御座いますよ。中京には優れた治癒の詠い手が既に御座いますとも。其の程度の詠い手など御呼びでは御座いませんよ。
……さて、長々と留まらせて頂きましたし、わたくし共はそろそろ御暇させて頂きましょう」
後ろに付く男から、耳元で何か囁かれた男は一歩下がってから軽く頭を下げた男は、警戒する僕達をすんなり通り過ぎて、一度振り返って口角を上げて笑って去った。
彼の姿が見えなくなって、全員が男より大きな溜息を吐いて体の力を抜いた。僕なんて何もされてないのに、どっと疲れた。
「さえ、ごめんね。あんたの事、酷く言ったわ」
「……平気………其の通り…だし……」
弦作さんは力を抜き過ぎて、薬の入った木箱がずり落ち掛けた。
「お二人をややこしい内事情に巻き込んですみません。先程廊下で会った彼は、名を神風 浜荻と言い、此処より北にある中京より来る、春の都の担当の役人なのです」
※ ※
保管庫にて、みこさんは口を開いた。
「春の都と中京には、古くからの因縁があるの。あたし達の生まれるずっと前からのね」
其の因縁には、春の都の成り立ちが深く関わるらしい。
春の都は遠い昔の藤姫様の祖先が興した都なのだが、そもそも其の切っ掛けになったのは祖先が中京から帝によって追い出されたからだそうだ。
しかも、追い出した理由は其の髪と目の色。祖先は帝の系譜、しかし分家であったが故に帝の紫の髪に比べて薄い、現在の藤姫様と同じ藤色であったわけだが、誰だかが帝に比べ、藤姫様の祖先の髪色の方が慎ましやかで美しいと発言し、多くが其れに同意したという。此れに帝は怒り、祖先の一族、其の従者諸共に野垂れ死ねと言わんばかりに放り出したというだから、僕もさえちゃんも呆れてしまった。
「そうやって追い出した藤姫様の祖先の方々が春の都を興した事自体は、管理する北畿で手が一杯だった中京にとって寧ろ利益でした。放置していた南環を治めてくれる存在が現れたのですから。ですから、春の都は中京に認められて今も存在しているのですが、其れと此れとは別なんですよ。春の都は、帝にとって目の上のたん瘤同然なんです」
「そう!だから、中京の奴等は嫌がらせしかしないわ!
中京の管理する北畿も通らせてくれないのよ。其れが無ければ、此の荷物だって四津顔経由で二回海跨がないで、陸路で天山から運ぶ事が出来るのよ!!」
木箱は頑丈。なので、置いた木箱の上にみこさんはどっかり座り、椅子にした木箱をバンバンと叩いて悔しさを表した。
「今日だって、下手したらさえをあいつ等に盗られてたのよ!!弦作、あんた、何も言わないんだったらせめてあいつをさえに近づけさせないようにくらいしなさいよ!そんくらいならあんたにも出来るでしょ!!」
「すみません、みこ。殆ど相手をさせてしまいました」
「あー!!!最悪最悪最悪!何で荷運び中にあんな奴と顔合わせなくちゃいけないの!もう最っ悪!!」
みこさんは日頃の鬱憤も加味しているんだろう、自分の手が赤くなるのも気にしないで木箱に当たった。弦作さんは口を挟まないがみこさんにさり気無く同意に小さく頷くが、叩かれる箱を心配し目線が上下した。
「あいつ等ほんと碌な事しない!私達の仕事だってあいつ等が余計な事さえしなければもっと少ないし、鬼だってあいつ等自分達で退治しないで南環に追い立てて寄越してくんのよ!其の所為で幾つかの集落が駄目になったわ!!」
みこさんのボルテージは最高潮に達し、口が止まらない。筈だったんだけど、
「っ理知だって――――」
「梓の次女殿が此方にいらっしゃるとお聞きしたのですが…」
…。
噂は影でも此の速さはないと思う。名前を出した途端に本人が保管庫に顔を出した。なんか此のパターン最近多くないか?主に三井寺、さん。
注目を集めた本人もちょっと困ったようで言葉に詰まり、名指ししたとある人は恥ずかしい事を言ったわけじゃない事は周知ながら赤くなっていた。ナイスブレーキ。
「理知殿、御用とはなんでしょう?」
「…ゴホンッ、次女殿に手伝って頂きたい事がありまして…」
と言うと、みこさんは俯いた儘、ささっと豊国さんの傍に寄り、無言で其の背中を押した。
此れに小さく噴き出したのは弦作さんでみこさんはきっ、と睨みつけて、豊国さんへの催促を早めた。
※ ※
ノーサイド
「理知は、中京の事、憎く思ったりはしてないの?」
みこは理知に声を掛けた。
「理知でしょう?一番あいつ等からの被害を被ったのは。許せないのは。幸せを奪ってたのは、あいつ等でしょう?!如何して城と殿を我が物顔で歩き回られて、好き勝手嫌な事されて、其れでも平然としていられるの!?」
「平然も何も、自分等は共に和国を担うものです。いざという時の為にも、其処に不和があってはいけないのです。一時の衝動、個人の感情に任せて、台無しにするべきではありませんよ」
立ち止まって、みこは保管庫から出てから一度も上げなかった顔を上げる。
吊り上げた目には沢山の涙を拵えていて、ある感情で胸を一杯にして其の目で前を歩く背中を貫いた。
「っっなんで…理知こそ怒るべきじゃない!なんでよっ!なんであたしばっか…!なんでみんなあいつ等の事我慢できるのよ…!!まるであたしが……子供みたい…!」
「次女殿」
みこの前にあった背中は知らぬ間に消えていて、みこの前に理知は立っていた。
理知はあまり動かさない其の顔で不器用に笑い、悔しさに涙する彼女の頭にそっと手を乗せた。
「自分は今、幸せなのですよ。
藤姫様の傍に居られて、沢山の仲間に囲まれて、次女殿が怒って下さっている。自分は其れだけで充分なんです」
ノーサイド エンド
此の御話の三大課題
1、最近似たような話の作りが多い。
2、弦作と理知の口調が一人称以外全部被った事に気付いた。
3、主人公が喋らない。
いやー…改善していきたいですね(白目)。
今回、新しく三つの地域の名前を出しました。名前の付け方は此方↓
(南環…三県の頭文字)
北畿…近畿の北部分
四津顔…日本神話で四つの顔があるといわれる島
天山…山を隔てて天の司る正反対の漢字が使われる地方
何処の地方とは言いません。厳密には異なる設定なので。
後は日本地図っぽいものを連想して頂ければ、大体の薬の流通ルートが分かるかと。
誤字脱字、文章的におかしな点はないでしょうか?




