11話 対人イベント(?)
「でも、本当に良かったんですか? 有効にして」
転移された森の中の開けた地点で、今更ながら迷う僕。
「そうじゃないとつまらないじゃない」
「うん。一獲千金も狙えるんだよ?」
「……獲物を見るような目で僕を見ないでもらえますかね」
しかしそれを、有効にする事は当たり前だと言わんばかりに、僕の迷いを不思議そうに見つめ、次第に狩りでも始めるのかと錯覚する程、挑戦的な目線に変える天姉とまや。
「やってしまったのは仕方ないですが、これは言わば、バトルロワイヤル、というやつじゃないでしょうか?」
「それはそうね。特に最終日はランキングの変動が激しそうね」
「どんどん狩ろ?」
「──三人揃っている内は、連携が出来るからいいですけど、一人の時に奇襲受けたら詰みますよね。手堅く、ボス狩りに集中した方がよかったんじゃないですか?」
「ゲームって……楽しむ為のものよ?」
「ランキングで上位入りするより、楽しさ優先」
「……こんな時に正論を言わないでくださいよ。まぁ同意ですけども」
説得された形で迷いは解消され、納得いかないまま方針が決まった。
これ、絶対あとで後悔するやつですよね……。
「それはいいとして──取り敢えずボス狩りですかね」
「確かに、今のまま対人戦やっても、特にメリットも無ければデメリットも無い状態ね」
「逆に考えれば、失う物がない今こそ対人戦」
戦う気満々に、腕に力を入れて瞳を輝かせる、まや。
「バトルジャンキーじゃないんですから、よっぽどの物好き以外、時間を無駄にしないんじゃないです────あぁ……噂をすればなんとやら、ですね。警戒して下さい。真っ正面に五人です」
この機を狙ったかのように現れたプレイヤー達。隠蔽スキルを無効化する為のスキルである、看破を習得している僕には、木々の太い枝を足場にする彼等が見えるのだが、習得していない天姉とまやには、視認できない。
「色んな便利スキルばかり取っている蓮にぃ。役に立つ」
「れんれん様々よね」
「四字熟語みたいに言わないで下さい。全員隠密スキル高いみたいですから、警戒だけは怠らないで下さいよ。どうやら、先日のござるさん関連みたいです」
「ござるさん、居るの?」
「えぇ。ござるさんだけ隠密低いみたいで、姿形がくっきりと見えます」
他の四人は、輪郭がぼやけているが、ござるさんは顔がはっきりと浮き出ている。
「あら、リベンジかしら」
「どうします?」
「ござるさん弱いからもういい」
「そうね。メリットも無いでしょうし」
「はは……分かりました。じゃあ撒きます。閃光弾使用しますので、光を視界に入れないように────では」
二丁の短機関銃を森に向け、忍んでいる外敵に聞こえる筈もない警告を呟く。
「過度な光にご注意を」
両手に持つ銃を、前方広範囲に向けて銃弾をばらまく。もちろん弾は、閃光弾。ある程度、相手との距離を潰した弾一つ一つが、爆発するようにこの場の光量を飛躍させる。
自滅しないよう目を閉じつつ、発煙手榴弾をアイテムから取り出し、周囲に転がして──。
「煙に紛れて逃げましょう」
現実では有り得ないような速度と範囲で広がる煙に姿を隠し、森の中へと入り込んだ。
「蓮にぃ、こんな事だけ手際良い」
「だけって何ですか。だけって」
「毎日やっているものね?」
「やっているんじゃなくて、やらされているんですが。相手はモンスターですがね。第一、一気に連れてくる量が多過ぎなんですよ。もっと少なければ、わざわざ閃光弾使わなくて済むんです」
「多い方が楽しいじゃないかしら?」
「その楽しさに巻き込まれる僕の身にもなって下さい……」
緊張感のない、談話を続けながら、意外と小範囲だった森を抜けた。




