いっぱいいっぱいなのよ
この世界は、剣と魔法と夢の国である。
種族に関して、大まかに分類すると人間族、獣人族、ドワーフ、エルフ、魔族に分けられる。
また、エルフやドワーフは生態、居住区域により呼び名も代わる。
エルフの中には、魔法に特化した亜種めいたのが居るのだが、彼らをダークエルフと呼ぶ。
エルフからしたら、差別用語なのだそうな…
そんなダークエルフは、混血児で有る捨て子を保護していたりする。
私もそうだ。
「ジャン、成果は?」
「そこそこだ。勉強の方はどうだ、アーニャ?」
「知識は問題ないと思う…実践がダメダメ。昨日は畑を水びだしにしちゃってさぁ」
そう告げると、手にしていたフォークを落とした。
その顔に浮かぶのは絶望…
致し方無い…何せ自給自足の中、畑が水びだしになったと聞いたら、食料は買い出しに頼ることになる。
そのお金は、ジャンが商いをして稼ぐのだから…
「それで…あの仔さぁ、飼って良い?」
裏の畑をゴロゴロ転がりながら移動する球体生物は、畑の救世主だった。
畑横の枯れ井戸に居着いていたらしい球体生物は、平成の世における比較的メジャーな海獣…アシカやアザラシの様な鳴き声を上げて転がっている。
「…ローンか」
「は?」
ローン?借金でもしてたかと思ったら、あの球体生物のことらしい
一般的にはセルキーと呼ばれる。
セルキーならば知っているぞ。中に人が入っていると昔の人は信じていたらしいな。
「言っておくが、ローンは飼えないぞ」
「…何故」
「ローンは魔獣寄りの精霊で、危険なんだよ
…何より、デカクなれば与える魔力量も増える。
恐らくは…この家の、前の家主もそれで魔力が空になったのかも知れない」
「そんな…タマコ(仮)が大喰らいだなんて」
だが、よくよく考えてみればそうかも知れないと納得した。




