バスク山のふもと
僕たちはバスク山のふもとの町まで来た。
馬たちを休ませるためだ。
そして馬車を預かってもらえる施設を探した。
幸運なことに宿屋で預かってもらえるとのことだった。
「よかったですね」
シスター「ええ、幸運でしたね」
セシル「お馬さんたちも休まないと」
シスター「さて、山を登りますわよ」
セシル「えー、もうちょっとゆっくりしましょうよー」
僕たちは相変わらず温泉でまったりしていたが、そうしているわけにもいかずに山を登ることになった。
また山の頂上は雲で覆われてて、槍みたいな山頂は雲を貫いている。
また登るのか…
「はあ…」
僕は自分が使命を帯びているとは言え、こんな苦行ばかりさせられてるのが嫌になってきた。
はあ、なんで僕ばっかり…
帰ったらまた次の山にお参りしなくてはならないし山から街へ街道を通さなきゃいけない。
その時は図面と工程管理やるのは自分だし、街と学校の運営もたまには見ないといけない。
はあ、なんで僕ばっかり…
そんなことを考えながら山を登っていたら中腹くらいまで来た。
途中牛の化物のミノタウロスとか珍しい魔物がいた。
こっちに気づかなかったので僕たちは歩みを進めた。
「はあ、はあ、あ…」
僕は足の痛みを感じた。
どうやら歩きすぎてまめが潰れたらしい。
シスター「大丈夫ですか?ヒール!」
僕の足は光に包まれて痛みが退いた。
「ああ、ありがとうございます、もう大丈夫です」
セシル「お姉様〜私も〜」
シスター「あなたも、まめが潰れたの?」
セシル「そうじゃないけど…」
シスター「こらこら、魔力も温存しないと」
セシル「カエデさんばっかりずるい…」
セシルはすね出した。
はあ、シスター以外は精神的に限界だ。
シスター「わかりました、ではここで野営をしましょう」
セシル「こんな山道危険ですわ!」
シスター「誰か一人見張りを立てて他の二人は休みましょう」
「わかりました、僕が見張りをします、二人は休んでいてください」
セシル「はーい!」
シスター「すみません、私も交代で見張ります」
僕は見張りを買って出た。
今のセシルの精神状態だと「私たちに見張りをやらすの!?」と責められかねないからだった。
責任感というよりも回避に近い。
はあ、この世界にはスマホもないしどうやって暇を潰そうか。
と思っていたらシスターが話しかけてきた。
シスター「ごめんなさいね、私たちに気を使って見張りを買って出てくださったんですね」
「いえいえ、お気になさらず」
シスター「セシルはもう寝てます、まだ子供なのでご迷惑をかけるかと思います」
「そ、そうですかね、見た目は大人っぽいですけど…」
シスター「カエデさんも大変でしたね、ここ何年かは急に市長や校長になったりして」
「いえ、慣れてますから」
シスター「なんでも抱え込んでしまうあなたをきっとみんな尊敬してますわ」
「え、そうですかね…」
セシル「お姉様…寝ないんですの?」
シスター「はいはい、じゃあカエデさん、時間が経ったらまた」
「はい、休んでてください」
僕は結局徹夜で見張りをしていた。
朝少しだけ仮眠を取らせてもらって僕たちは歩き出した。
結局僕は寝不足だったが、ヒールを使えるシスターは完全に回復したみたいだ。
一行は雲に差し掛かった。
セシル「くっ、前が全然見えませんわ」
シスター「道に従って歩きましょう」
険しい・・・
険しすぎる・・・
さすが霊峰・・・
三人で道なき道を歩いた。
どこまで続くんだろう・・・
誰も声を発しなかった。
沈黙の中歩いていたら雲を抜けた。
セシル「霧が晴れましたわ!」
シスター「そうね、もう少しね」
「・・・」
僕は精神的限界をゆうに超えていたので何も言葉を発しなかった。
遥か向こうに山頂が見える。
僕たちは山頂に向かって歩き出した。
この辺まで来ると植物もだいぶ減り岩ばかりになる。
まだ見たことのない月面もこんな感じなのかもしれない。
セシル「岩ばかりですわね」
シスター「そうね、動物もほとんどいないわね」
「息が・・・」
シスター「大丈夫ですか?カエデさん、休みますか?」
「いえ、行きましょう」
僕は下手に休むよりも前進することを選んだ。
ハヒュッ、ハヒュッ
僕の呼吸は異様に乱れていた。
セシル「大丈夫ですの?」
シスター「そうですわ、お休みになったらいかがですか?」
「いえ、僕は・・・」
そう言うと僕の意識は遠のいた。




