宴
魔王を退けた件と、街道が開通した件で街全体で大きな祭りをすることになった。
連日飲めや歌えやの大騒ぎだった。
結界は非常に強力になったので弱い魔物はほとんど寄り付かなくなった。
おじさんたちはいつものように酒浸りだった。
冒険者ギルド長「おう!カエデ!飲んでるか!」
「あ、いえ、少しですが・・・」
警備隊長「お前が飲まなきゃ誰が飲む!」
商工会議所長「俺が飲む!」
建築ギルド長「お前はいいだろ」
シスター「うふふ」
「シスターも飲んでるんですか?」
シスター「こんな日は神も許してくださいますわ」
冒険者ギルド長「しかし大したやつだな」
警備隊長「ほんとだな、あの魔王と互角だもんな」
商工会議所長「いやあ、格闘でも勝てないなんて」
建築ギルド長「さすが俺たちのリーダーだ」
「いえ、それほどでも・・・」
シスター「謙遜する必要ありませんわ」
「そうでしょうか・・・」
冒険者ギルド長「あとは魔王だな」
警備隊長「ああ、あいつしつこいよな」
商工会議所長「うーん、大金はたいて魔道具の研究してもいいが」
建築ギルド長「ほんとゴキブリみたいなやつだな」
シスター「あら嫌だわ、そんな例え」
そう、逃げて行ったあいつ。
去り際に無限細胞分裂と言っていた。
魔物を無限に作り出す能力だろうか。
冒険者ギルド長「まあ、あいつに関してはのちのち会議しないといけないだろうな」
警備隊長「そうだな・・・」
商工会議所長「新型兵器を大金はたいて研究しないとな・・・」
建築ギルド長「まあ、今は忘れてパーっとやろうぜ!」
シスター「そうですわ、うふふ」
みんなの笑顔を見ていたら僕も気が紛れた。
陰陽太極図が完成したことにより陰陽太極図の陽である王都の地価は莫大なものになり誰も買えなくなった。
僕は王様から直々に感謝された。
王都が陽だとすると陰の位置にあるのはキーブカ荒野だ。
キーブカ荒野には以前よりも魔物が発生するようになったので冒険者ギルドでしばしば討伐依頼が出された。
変わったのはそれくらい。
一抹の不安を抱えながらみんな魔王のことは徐々に忘れて行った。
魔王は夢を見ていた。
前世の夢を。
前世の魔王は札付きの悪だった。
母子家庭で育った魔王は案の定ぐれてほぼ家には帰らなかった。
チーム同士の抗争で前世の魔王は命を落としたのだった。
そんな前世の魔王が唯一心を開けたのは仲間との他愛のない時間だった。
ああ、あの頃はあれが救いだったなあ・・・
今はどうだ。
仲間?
俺は一人だ。
なぜこの世に生まれてきたのだ。
何のためにこの世に生まれてきたのだ。
わからない。
魔王は考えるのをやめた。
連日の宴から通常の街を徐々に取り戻していくある日、僕はシスターに呼び出された。
シスター「結界をさらに強化するのに山の神の力を借りるのはいかがかしら?」
「更に強化ですか?確かに次魔王に来られても逃げられると困りますが」
シスター「そうでしょう、私なりに文献を調べて山の神々について調べましたの」
「そうなんですね、心強いです」」
シスター「街道で山と街を繋げばきっと結界も強化されますわ」
「なるほどいいですね、定期会議の議題に上げましょう」
定期会議というのはおじさんたちとああでもないこうでもないと言い合う、要は飲み会だ。
僕はおじさんたちに山の神々について話した。
冒険者ギルド長「なるほどなあ、山と町を繋ぐのか」
警備隊長「それでどうなるんだ?」
「神々の力を街道を通じて街に運びます」
商工会議所長「結界がさらに強くなるってわけだ」
「はい」
建築ギルド長「すごい仕組みだな」
シスター「はい、それで誰が行くのかと」
冒険者ギルド長「お前ら二人で行って来いよ、によによ」
「えっ!?」
警備隊長「そうだそうだ」
商工会議所長「街は俺たちが守るからよ」
建築ギルド長「結界があるから大丈夫だろ?」
シスター「・・・」
シスターも顔を真っ赤にしてうつむいていた。
「ここここ困りますよ!」
冒険者ギルド長「何が困るってんだよ」
警備隊長「そうだそうだ」
「男女二人で旅なんて!」
商工会議所長「なんかあったら知らせるから高速移動で戻って来いよ」
建築ギルド長「によによ」
シスター「まあ神々に詳しいのは私なので私は構いませんが」
「・・・」
冒険者ギルド長「戦闘も二人がいれば安心だろ」
警備隊長「そうだそうだ」
商工会議所長「によによ」
建築ギルド長「によによ」
シスター「・・・(顔を真っ赤にしてうつむいている)」
「わかりました!二人で行ってきます!」
僕は最終的にむきになって怒ったように言い放った。
こうしてシスターとの二人旅が始まるのであった。




