汚名返上
翌朝、ホームレスたちが僕の目覚めを待って集まっていた。
ホームレスB「俺にも魔法の紙作ってくれよ!」
ホームレスC「俺も俺も!」
「しょうがないなあ」
ホームレス達のために紙くずを段ボールにする作業をしていた。
昨日よりも枚数をこなせた。
やはり、使い続けることで能力の限界が伸びているようだ。
5人目を超えたあたりで限界がきた。
「くそ、頭が割れそうだ……。でも、あと1枚……!」
パリィィィン!
『建築レベルが 2 に上昇しました』
『新規素材解放:木材』
『新規スキル解放:構造解析(簡易)』
『魔力が全回復しました(※初回レベルアップ報酬)』
「ん?なんだ?力がみなぎるぞ」
ホームレス達の要望を一通りかなえた後、さっきまでの頭痛が嘘のように消え、身体に力がみなぎっていた。
「木材?試してみよう」
僕は焼却場からもらった木くずをスキルで変化させようとした。
シュウウウウゥ
小さな木材になった!
なるほど、レベルが上がれば上がるほど加工できる素材が増えるようだ。
しかしまだ小さな木材作るだけでもひどく疲れるな。
「今日はもう休もう」
次の日、魔法の紙のことはすっかり町中の噂になってギルドの耳にも入っていた。
これは産業になるとギルド長や商工会議所長たちの間では話題になっていた。
受付「カエデさん?」
「はい」
段ボールハウスでのんきに炊き出しを食べていたらギルドの受付スタッフが呼びに来た。
受付「ギルド長がお呼びです」
「え」
僕は焦ってギルドへと向かった。
「こんにちは・・・」
ギルドの会議室に恐る恐る向かうと怖いおじさん達がこっちを見ていた。
冒険者ギルド長「君があの魔法の紙を作ったのか?」
「は、はい」
建築ギルド長「あんな構造の紙は初めて見た」
警備隊長「お前が魔法の紙の製作者か。おかげで冬の死人が減るのはありがたい」
商工会議所長「木箱より圧倒的に軽くてコストも安い!これを我が商会で量産すれば、馬車の積載量が倍になる!」
「あの、いっぺんに話されても・・・」
冒険者ギルド長「確かにな」
『構造解析(簡易)』
「右の主柱:負荷120%(限界突破)」「梁の歪み:3.5度」
なんだ、このスキル。
建築物の構造を解析するのか。
「あの・・・魔法の紙の話の前に、このままだとあと長くても数十分・・・いや、このまま負荷が増えればもっと早くこの部屋の天井、崩落しますよ」
建築ギルド長「なに?素人が知った風な口をきくな!」
警備隊長「おいおい、まさか素人がそんな鑑識眼あるわけがないだろう」
商工会議所長「そう言えばミシミシ言ってないか?オンボロだな、お前の建物は」
冒険者ギルド長「なんだと、やるかお前」
ガラの悪い会議に面食らってるうちに建物の傾きが増している気がする・・・
言ってもわかってもらえないからほっとくしかないのかもしれない。
ピシッ……ピキキキッ!
乾いた音が響き、天井からパラパラと漆喰の粉が落ちる。
冒険者ギルド長「な、なんだ!?」
右の主柱に巨大な亀裂が走り、部屋全体がみしりと傾く。
警備隊長「逃げろ!」
ガチャガチャ
商工会議所長「ド、ドアが開かない」
建築ギルド長「クソッ、閉じ込められた!天井が落ちてくるぞ!」
「しょうがない! 部屋の隅にあるその廃材(謎の木材)、全部こっちに集めてください!」
建築ギルド長「なんだと!?」
「早く!」
建築ギルド長「ちっ、わかった」
スキル【建築レベル2】
『素材再構築』発動!!
シュウウウウゥと小規模な光が走り、ただのゴミだった木くずが一瞬で完璧な強度計算で作られた、極太の仮設支柱へと組み上がる。
一同「おお」
建築ギルド長「一瞬で柱を作りやがった・・・」
慣れない木材という素材を扱ったことにより疲労が一気にきて僕は倒れこんだ。
警備隊長「おい、坊主、大丈夫か!?」
商工会議所長「誰か運べ!」
目を覚ますと僕はギルドの宿屋の一室のベッドにいた。
受付「あ、目を覚ましましたね」
「ここは?」
受付「倒れられたので宿屋に運ばれました」
「なるほど・・・ありがとうございます」
受付「カエデさんの能力の取り合いになってますよ」
「え、なんですって?」
僕の能力を見て偉いおじさんたちは僕の取り合いをしているらしい。
前世では誰からも必要とされている気がしなかった。
なのに今は、自分を必要としている人間がいる。
嬉しいやら照れ臭いやら・・・
警備隊長「おい、坊主、目覚めたか」
商工会議所長「大丈夫そうだな」
建築ギルド長「まだ慣れてないみたいだな」
冒険者ギルド長「おい、目を覚ましたばかりで悪いが隣町との抗争会議にお前も出席してもらうぞ」
え、抗争?
せっかく異世界でも生きていけると思っていたのに血の気が引いたのだった・・・




