スラム編
ひたすらに歩いてスラムのような場所までたどり着いた。
ここなら野宿しても大丈夫だろう。
幸い奪われるような金品も持っていない。
スラムの路地裏で夜を迎える。
どうやら野宿者は珍しくないようだったが、僕の作業着姿を一瞥すると周りの者は横になりだした。
夜は寒い。
冷え込む中スキル【風水レベル1】が発動する。
「スキル発動だって!?なんだこれ」
突然のスキル発動にびっくりするものの、なんとか冷静を取り戻す。
『地形察知』
「周囲のやつらは適当に寝ているが、あそこは湿気が溜まる『水はけの悪い窪地』だ。あっちの、少し風が抜けて地面が乾いている場所(微高地)のほうが冷え込まない。・・・風水で見れば一目瞭然だな」
寝床は確保したがかけるものもなく、空腹にも耐え切れず、全然寝付けないのであった。
仕方ない、ごみを漁って寝床を用意しないと。
紙くずを敷き詰めて寝ようとしていたら、
スキル【建築レベル1】発動
『素材再構築』
紙くずが段ボールに・・・!?
段ボールでちょっとした寝床を作った。
段ボールは二重になっている構造上暖を取りやすい。
これで耐えるのは空腹だけだ。
僕は空腹に耐えながら横になっていた。
翌朝。
おばちゃん「炊き出しだよー!」
炊き出し?
僕は安堵と嬉しさとともに炊き出しに頼るようになるほど落ちぶれてしまったことに少し落胆した。
屋台に長蛇の列ができる。
やっと食事ができる。
列が消化されてやっと僕の番だ。
おばちゃん「あら珍しいわね、新顔?」
「はい、昨日来ました」
異世界転生したなんて言えないから僕は事実だけを言った。
おばちゃん「珍しい格好してるわね、主人のおさがりでよければ着る?」
「はい、ありがとうございます」
おばちゃん「しかしあれね、あなたみたいな若い人だったら仕事したほうがいいわね」
「仕事ですか?」
おばちゃん「一度ギルドに行ってみなさいな、あなたに合った仕事が見つかるかもしれないから」
「ありがとうございます」
僕は炊き出しを食べてご主人のおさがりに着替えたらギルドに向かうことにした。
スラムのギルド。
その傾きかけた建物は建築業界にいる僕からしたら立て直したくてうずうずするような代物だった。
「こんにちはー」
扉を開けた瞬間屈強な男たちがギロリとこちらを見る。
「すみません、間違えました」
ガチャとドアを閉めてしばらくすると中から男性がドアを開ける。
受付「お仕事探しですか?」
「ええ、まあ」
受付「ちょうど掃除夫を探しておりまして、このような仕事は誰もやりたがらないのでお願いしたいのですが」
「わかりました」
とりあえず仕事にありつけたようなのでギルドの掃除をすることになった。
血が付いたずたずたの衣服。
もう使わない書類。
謎の木材。
これらのごみをまとめていた。
燃えるものは焼却場まで持っていく。
受付「ありがとうございました。こちら給料になります」
「ありがとうございます」
通貨の価値がわからないのでどのくらいの価値があるのかわからなかったが、とりあえず食事は出来るだろう。
僕はさっきの炊き出しのおばちゃんを探しに行った。
「食事おねがいします」
さっきは無料でもらったが、今回はお金を払った。
おばちゃん「あらもう仕事してきたの?ちゃんとお金を払うなんて偉いわね」
「いえいえ」
おばちゃん「スープ一杯サービスするわよ」
「ありがとうございます」
おばちゃん「でも泊まるところもないでしょう」
「ええ、段ボールでなんとか・・・あ、そう言えば、焼却場に木材があったので、それでなんとかします」
おばちゃん「あらそう、無理しないでね」
僕は木材を求めて焼却場に向かった。
焼却場主「え?木くず?こんなもの欲しいのかい?いくらでも持ってっていいよ」
異世界二日目は木くずを木材にリビルドしようとしていたが無理だった。
僕の建築レベルではまだ紙しか無理なのだろう。
僕の寝床に戻ると人が数人たかっていた。
ホームレス「なんだその、軽くて、丈夫で、折りたためて、しかもめちゃくちゃ温かい魔法の板は・・・!?」
「え、段ボールですけど、この世界にはないんですか?」
ホームレス「この世界?変なこと言うやつだな」
「物を運ぶときはどうやってるんですか?」
ホームレス「それは全部木箱でやってるよ」
なるほど、この世界では木材はあるけど段ボールを作る技術がまだないんだ。
寝床を作るだけの木材は貴重すぎてなかなか手に入らない。
ホームレス「俺たちにも作ってくれよ」
「わかりました」
僕は紙くずを集めてスキルを発動する。
【建築レベル1】
『素材再構築』
紙くずから段ボールを作る。
ホームレス「お、お前、魔法が使えるのか!?」
「魔法?」
ホームレス「俺たちは魔法も使えないし戦闘能力が低いからこうしてホームレスやってるんだよ、お前だったらもう少しましな生活できるかもな」
ましな生活。
前の世界では普通に働いて普通にマンションで生活していたな。
あの頃が嘘みたいだ。
感慨にふけっていたら強烈なめまいが襲ってきた。
「どうしたんだろう」
どうやら能力を使うと疲労が襲ってくるようだった。
「なるほど、そういうことか、しかし筋トレみたいに負荷をかけることで上達するものだろうか、回復したら試してみよう」
夜も更けてきたので段ボールハウスで床につくのであった。




