表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『憧れの、その先へ。』  作者: 夜凪ロア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/16

第15話 特別な一本

県予選二回戦。


 日紬高校女子バスケットボール部の相手は、昨年ベスト四の私立白峰学院高校。


 初戦よりも格上の相手だった。


 試合開始前。


 朝陽たち男子部員は昨日と同じ観客席へ集まっていた。


「今日は厳しい試合になるぞ」


 一ノ瀬がコートを見つめながら言う。


「でも、硯たちなら大丈夫だ」


「はい!」


 朝陽は自然と拳を握る。


 コートでは葵が円陣の真ん中に立ち、仲間へ言葉を掛けていた。


 その表情には、不安よりも覚悟が見えた。


     ◇


 試合開始。


 予想どおり、白峰学院は強かった。


 高さも速さも昨日とは違う。


 第一クォーターは、日紬高校がリードを許す展開になる。


「切り替えよう!」


 それでも、葵の声は途切れなかった。


 一本決められても、すぐに仲間を励ます。


 ミスを責めることはない。


 「次!」


 その一言だけで、チームの空気が変わる。


「やっぱり、すごい……」


 朝陽は目を離せなかった。


 プレーだけじゃない。


 キャプテンとしてチームを支える姿が、本当にかっこよかった。


     ◇


 第三クォーター。


 日紬高校が少しずつ点差を詰め始める。


 残り一分。


 同点。


 葵がボールを持つ。


 ディフェンスが二人寄る。


 パス。


 味方がシュート。


 リングに弾かれる。


 その瞬間。


 葵が飛び込んだ。


 リバウンドを奪い、そのままレイアップ。


 ネットが揺れる。


「よっしゃあ!」


 朝陽は立ち上がって叫んでいた。


 その一本で会場の流れが変わる。


 第四クォーターも勢いは止まらず――。


 試合終了。


 71対66。


 日紬高校、準々決勝進出。


 応援席は大きな拍手に包まれた。


     ◇


 試合後。


 体育館のロビー。


 自動販売機の前でスポーツドリンクを飲んでいると、葵が歩いてきた。


「朝陽くん」


「先輩! 勝ちましたね!」


「ありがとう」


 葵は少し疲れた表情をしていたが、笑顔は変わらない。


「あのリバウンド、本当にすごかったです」


「見てた?」


「もちろんです!」


 朝陽は興奮したまま話し続ける。


「あそこで飛び込めるの、本当にかっこよかったです!」


 葵は照れくさそうに笑った。


「そんなに褒められると恥ずかしいな」


「本当のことです」


 真っすぐな朝陽の言葉に、葵は少しだけ視線を逸らす。


 胸の奥が、くすぐったい。


「……ありがとう」


 その声は、いつもより少しだけ小さかった。


     ◇


 男子部の集合時間まで少し時間があった。


 二人は体育館の外にあるベンチへ腰を下ろす。


 風が心地よく吹き抜ける。


「疲れてませんか?」


「疲れてるよ」


 葵は笑う。


「でも勝てたから、全部吹き飛んだ」


「次もありますね」


「うん」


「絶対勝ってください」


 朝陽は迷いなく言った。


「決勝まで行ってください」


「ふふっ」


 葵は優しく笑う。


「そんなに期待されたら頑張らないと」


「期待してます」


 その一言に嘘はない。


 葵は少しだけ朝陽を見つめた。


 まっすぐな瞳。


 応援してくれる気持ちが、そのまま伝わってくる。


「朝陽くん」


「はい」


「勝ったらね」


「?」


「また、一番に感想を聞かせて」


 一瞬、言ってから自分でも驚いた。


 どうしてそんなことを言ったのだろう。


 でも、朝陽は満面の笑みでうなずく。


「もちろんです!」


 その笑顔を見た瞬間。


 葵の胸は、少しだけ高鳴った。



【葵 side】


 帰りのバス。


 窓の外を流れる景色を眺めながら、今日のことを思い返す。


 試合が終わると、自然と朝陽くんを探していた。


 「どんな顔で待ってるかな」


 そんなことを考えている自分がいた。


 勝ったことを伝えたい。


 感想を聞きたい。


 「かっこよかったです」


 その一言が、誰に褒められるよりうれしかった。


 ……おかしいな。


 朝陽くんは、ただのかわいい後輩のはずなのに。


 最近は、その笑顔を見るだけで心が落ち着く。


 試合の疲れまで、少し軽くなる気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ