電力の不法流出、あるいは電気代の防衛線
タナハシカメラの相談カウンターに、一通の検針票を震わせながら、怒りに燃える高齢の男性客が詰め寄ってきました。
其の一:エネルギーの不当な搾取
「おい、お兄さん! 先月ここで買ったエアコンと冷蔵庫のせいで、電気代が跳ね上がったぞ! なんとかしてくれ、このままじゃ破産しちまう!」
男性客の叫びに、田所は音もなく椅子から立ち上がり、検針票の数字を獲物を狙う鷹のような目で見つめました。
「(……いけない。このお客様の家庭内経済圏において、電力という名の流動資産が、目に見えない形で外部へロスト(流出)している。これはインフラ管理における致命的なセキュリティホール、あるいはエネルギーの『不法投棄』だ)」
其の二:電力漏洩の「徹底捜索」
「お客様、ご安心ください。現在、お宅のコンセントから電力が『不当な脱走』を試みている可能性があります。正確な流出ルートについては、私の誠実さが目下捜索中でございます」
田所はそう言うと、売り場にある「コンセントのホコリ防止キャップ」を100個、そしてなぜか強力な「南京錠」と「鎖」をカウンターに並べました。
「お、お兄さん、それは何だい?」
「これは『電力アクセス権限管理キット』です。電気代が高いのは、あなたが寝ている間に家電製品が勝手に電力を貪り食っているからです。今すぐお宅に伺い、全てのプラグをこの鎖で縛り上げ、私が許可するまで通電させない『物理的ホールド』を実施する必要があります」
「いや、使いたい時に使えないと困るんだよ!」
其 三:田所流・供給制限プロトコル
「お客様、静粛に。便利さと引き換えに資産をロストさせるのは、管理者の怠慢です」
田所はさらに、売り場から「手回し式の充電ラジオ」を10台、リヤカーに積み込み始めました。
「本日より、お宅の冷蔵庫以外の全電力を遮断します。どうしてもテレビが見たい、あるいは明かりが欲しい場合は、こちらの発電機をご自身で回し、**『その都度、電力をセルフ登記』**してください。筋肉という名の自己資産を削ることで、電気代という名の外部流出を0に抑える……これこそが完璧な家計管理です」
「バカなこと言うな! 毎日こんなの回してられるか!」
「いいえ。汗をかけば体温が上がります。そうなればエアコンという名の余剰設備も不要となり、さらなるコストカットがホールドされるのです。さあ、今すぐお宅のブレーカーを私が叩き折り(管理し)に参ります!」
其 四:貴島の「強制シャットダウン」
「ブレーカー折るんじゃねえよバカ野郎!!」
背後から放たれた貴島のドロップキックが、田所の背中に炸裂しました。
「お客様、すみません! こいつの言うことは全部忘れてください! 電気代が高いのは設定の問題かもしれませんから、今すぐ省エネ設定の確認にお伺いさせます! 田所、お前はコンセントの掃除でもしてろ!」
「貴島さん……。省エネ設定などというソフト面の対策では、お客様の不安はホールドできません。私はただ、物理的に電力を縛り(ホールドし)、一滴の電流も逃さない『鉄壁の防衛線』を――」
「お前の給料を全額カット(ロスト)してやろうか!!」
今回のリザルト:顧客の安寧および売上の全損
結局、お客様は「この店に相談すると電気が止められる」という恐怖に震えながら帰宅してしまいました。
長谷川店長は、田所が「お客様が勝手に電気を使わないよう、お宅の周囲に高圧電流の柵を張り巡らせるプラン」を熱心に作成しているのを見て、静かに店舗のブレーカーを落としました。
「田所……。お前、しばらくの間、電気が通っていない『ただの箱(段ボール)』の管理だけしてろ……」
「店長……。段ボールもまた、内部に空気をホールドする重要な容器です。一粒の空気の漏洩も許さないよう、全ての隙間を溶接して参ります」
「……もう何もしないでくれ……」




