表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目下捜索中でございます。〜家電販売員編  作者: ユタカ
目下捜索中でございます〜シーズン2~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/30

大気の保全、あるいは飽和する誠実さ

冬の乾燥がピークを迎えたタナハシカメラ。加湿器売り場では、田所が湿度計を睨みつけ、空間の「水分量」を厳格に管理していました。

其の一:湿度のロスト

「すみません、部屋が乾燥して喉が痛くて。よく潤う加湿器を教えてください」

喉を押さえた女性客がやってきました。田所は手持ちの湿度計を彼女に向け、驚愕に目を見開きました。

「(……いけない。このお客様の周囲だけ、湿度が35%までロストしている。これは人体という資産に対する、大気の不当な搾取だ。直ちに水分を補填し、現状復旧を行わなければならない)」

其の二:全戦力の投入

「お客様、ご安心ください。現在、この空間は『砂漠化』という名の不法行為が行われています。私が今、**『普通に売っている加湿器』**を使って、あなたの喉を湖畔のような静寂へと導きます」

田所はそう言うと、棚に並んでいるごく一般的なスチーム式加湿器、超音波式加湿器、ハイブリッド式加湿器計10台を、すべて床に下ろしてコンセントを差し込みました。

「ちょっとお兄さん、1台でいいのよ! なんでそんなに並べるの?」

「お客様、静粛に。1台の出力では、ロストした水分を回収するのに時間がかかりすぎます。現在、私は物量による大気の制圧を行っているのです」

其 三:霧のタナハシカメラ

田所は10台すべてのスイッチを「強」に入れました。

「さあ、潤いをホールドしてください。逃げようとする水分を、この10台の同時射出によって空中に固定(登記)いたします」

数分後、加湿器から噴き出す猛烈な蒸気によって、売り場は1メートル先も見えない濃霧に包まれました。

「キャー! 何も見えない! お兄さんどこ!?」

「お客様、落ち着いてください。現在、視界はロストしましたが、湿度は100%を突破し、完全なる保全(飽和状態)に成功しました。これでもう、喉の痛みという名のバグは発生しません」

其 四:長谷川店長の視界不良

「田所ぉぉぉ!! 火事か!? 火事なのか!?」

異変を察知した長谷川店長が、火災報知器が鳴る寸前で霧の中から飛び込んできました。しかし、足元の大量の加湿器に躓き、床の結露で派手に滑ります。

「店長、足元にご注意ください。現在、床面も『過剰な潤い』をホールドしております」

「潤いすぎて床が沼になってんだろうがぁぁ!!」

背後から現れた貴島が、霧の中から感覚だけで田所の尻を蹴り飛ばしました。

「客が溺れるわ! 今すぐ全部止めろ!! 売り場のチラシが全部ふやけて全損してんだよ!!」

今回のリザルト:店舗インフラおよび紙媒体の全損

結局、加湿器売り場は「霧の都」から「熱帯雨林」へと変貌し、周囲のパソコンやテレビの基盤が結露でショートするのを防ぐため、全館停電(強制ホールド)という最悪の事態を招きました。

長谷川店長は、ふやけてシワシワになった店のポスターを抱えて泣き崩れました。

「長谷川店長……。再発防止のために、お客様を巨大な水槽の中にホールドして接客する『完全防腐・完全加湿システム』を導入してよろしいでしょうか……?」

「お前のそのふやけた脳みそを今すぐ天日干しにしてやろうか!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ