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目下捜索中でございます。〜家電販売員編  作者: ユタカ
目下捜索中でございます〜シーズン2~

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19/30

鮮度の聖域、あるいは生鮮チルドの完全封印

タナハシカメラの高級冷蔵庫コーナー。最新の「真空チルド」機能を備えたモデルの前で、田所は一人の主婦のお客様と対峙していました。

其の一:個人情報(鮮度)の漏洩リスク

「この冷蔵庫、お魚が長持ちするって聞いたんだけど、本当かしら? 今日の夕飯の立派なタイを、一番いい状態で保存したいのよ」

お客様が買い物袋の中の鯛を誇らしげに見せました。しかし、田所はその鯛と目が合った瞬間、戦慄した表情で一歩退がりました。

「(……いけない。この『生魚』という名の極めて脆弱な生体資産が、外気に無防備に晒されている。これは鮮度という名の機密情報が、秒単位で外部へ**ロスト(漏洩)**している異常事態だ。直ちに、外部からのアクセスを遮断する『鉄壁のシェルター』を構築しなければならない)」

其の二:物理的ファイアウォールの構築

「お客様、ご安心ください。私は今、あなたの鯛の『プライバシー(鮮度)』を、この世のあらゆる腐敗から目下、完全防衛中でございます。……まずは、この個体をシステム内へホールドします」

田所は恭しく鯛を受け取ると、最新型冷蔵庫の真空チルド室へ投入。そこまでは普通でしたが、彼は次に、売り場の工具コーナーから「強力な南京錠」と「防犯用のチェーン」、さらには「溶接機」を持ってきました。

「ちょっと! お兄さん! 何してるの!? 冷蔵庫を鎖でぐるぐる巻きにして……火花まで飛ばして!」

「これは『生体情報保護プロトコル』です。外部の酸素という名の不法侵入者、そして『食べたい』という主観的な欲望による安易なアクセスを物理的に遮断します。今、この冷蔵庫の扉は、私の指紋、虹彩、そして**『誠実さ』**という3つのキーが同期しない限り、二度と開くことはありません」

其 三:開かずの聖域サンクチュアリ

「何言ってるのよ! 夕飯に焼くんだから、今すぐ開けてちょうだい!」

お客様が扉を引きますが、田所が施した溶接とチェーンにより、冷蔵庫はびくともしません。

「いいえ。一度『完全な鮮度』として登記された以上、それを取り出すことは『資産の劣化』を認める背信行為です。この鯛は、この中で永遠の鮮度をホールドし続ける『概念としての魚』となりました。食べるという行為で個体を全損させるより、永遠に腐らない状態で保管(登記)し続けることこそが、真の管理です」

「魚は食べるためにあるんでしょーが!!」

其 四:貴島の「物理的リストア」

「客の晩飯を永久欠番にするんじゃねえよバカ野郎!!」

背後から放たれた貴島の鋭いドロップキックが、溶接機を構えた田所の腰を直撃しました。

「お客様、すみません! すぐにサンダーで鎖を切りますから! 田所、お前は冷蔵庫を金庫か何かと勘違いしてんのか! 中の魚が窒息……あ、もう死んでるけど、とにかく出せ!!」

「貴島さん……。開ければ鮮度はロストします。私はただ、この鯛の『最高の瞬間』を永遠にホールドしようとしただけで……。お客様! あなたの晩御飯は現在、絶対安全な領域にて目下、永眠中であります!」

「叩き起こして焼くんだよぉぉ!!」

今回のリザルト:調理予定および冷蔵庫の製品価値の全損

結局、チェーンを無理やり切断したことで冷蔵庫の筐体は傷だらけになり、溶接の熱でパッキンも溶け、製品としての価値を完全にロスト。長谷川店長は、お客様に鯛の代金と、傷つけた冷蔵庫の損害、そして「心の平穏」を全損させたお詫びとして、店内の最高級肉を差し出す羽目になりました。

「長谷川店長……。再発防止のために、食材をすべてコンクリートで固めて保存し、必要な時にドリルで掘り出す『永久不滅保存システム』を登記して――」

「お前のそのふざけた口を今すぐ溶接してやろうか!!」

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