洗浄アセットの欠損、あるいは摩擦による真理の登記
タナハシカメラ特設ステージ。田所は最新型食洗機を前に、詰めかけた主婦層に向けて、カレーの跡がこびりついた皿を掲げていました。
其の一:洗浄剤のロスト(欠損)
「皆様、ご覧ください。この不当に残留した油脂を、今からこのユニットが完璧にデリート(消去)……」
田所が洗剤投入口を開けましたが、中は空っぽ。スタッフの手違いで補充用の洗剤も全て在庫切れという、実演販売における致命的なバグが発生しました。
「(……いけない。洗浄剤という名の『化学的解決アセット』が完全にロストしている。しかし、ここで実演を中断することは、私の管理能力の全損を意味する。直ちに代替アセットによる物理的な強制洗浄を登記しなければならない)」
其の二:代替摩擦材の「緊急ホールド」
「お客様、ご安心ください。私は今、化学薬品という名の『欺瞞』に頼らない、真実の洗浄プロトコルを目下、構築中でございます」
田所はステージを飛び降りると、インテリアコーナーから**「観賞用の白い小石」**を大量に掴んできました。そして、それを洗剤の代わりに食洗機の中へ、バラバラと豪快に投入したのです。
「ちょっとお兄さん! 石なんて入れて大丈夫なの!? 皿が割れちゃうわよ!」
「お客様、静粛に。これは『ソリッド・アブレーション(固体研磨)』です。洗剤の泡という軟弱な手段を捨て、石という強固な資産を高速回転する水流に乗せる。石が皿を叩き、汚れを物理的に粉砕・ホールドする。これこそが、自然界における『滝壺の浄化』の再現です」
其 三:粉砕される静寂
田所がスイッチを入れた瞬間、食洗機の中から**「ガシャガシャガシャ! ズガガガガ!!」**という、およそ家電量販店とは思えない破壊音が響き渡りました。
「ギャー! 皿が割れる音じゃないのこれ!?」
「いいえ、これは汚れが断末魔を上げている音です。現在、石と皿が互いの存在をぶつけ合い、究極の平滑度を登記している最中でございます。……さあ、完了しました」
ピーという終了音と共に田所が扉を開けると、そこには**「皿だったはずの粉々になった陶器の破片」と、「少し角が取れて丸くなった小石」**が、蒸気と共に姿を現しました。
「……お兄さん、これ、ただのゴミの山じゃない……」
「お客様、よく見てください。汚れは1ミリも残っていません。汚れが付着していた『面』そのものを粉砕し、ロストさせることで、完全なる清浄をホールドしたのです。これでもう、二度とこの皿が汚れるというバグは発生しません。なぜなら、皿という概念がデリートされたからです」
其 四:貴島の「強制シャットダウン」
「商品をデリートしてどうするんだバカ野郎!!」
背後から放たれた貴島のドロップキックが、誇らしげに砂利を掲げる田所の後頭部を捉えました。
「お客様、本当にすみません! こいつ、洗剤がないからって店の装飾用の石をブチ込みやがって! 食洗機のフィルターも全損だよ!!」
「貴島さん……。私はただ、化学的な残留物をロストさせ、物理的な純粋さを登記しようとしただけで……。お客様! 現在、あなたの皿は砂状の資産として目下、捜索中でございます!」
「砂を返されても困るわよ!!」
今回のリザルト:実演機および顧客資産の全損
結局、田所は「最新家電を粉砕機として使用した」罪で、長谷川店長から「お前は一週間、手洗いで皿を1000枚洗うまで帰ってくるな!」とバックヤードへホールドされました。
「長谷川店長……。手洗いの際、私の指紋が摩擦でロストする可能性がありますが、それは『個人情報の完全消去』として登記してよろしいでしょうか……?」
「お前の存在そのものを今すぐこの世からデリートしてやろうか!!」




