法的資産の防衛、あるいは紛争のラミネートホールド
タナハシカメラの応接スペース。ヒョウ柄メガネの老人が、黒いスーツに身を包んだ鋭い眼光の男――**「弁護士の佐藤」**を引き連れて現れました。
其の一:リーガル・デバッグの開始
「いい、お兄さん。今日こそは逃がさないわよ。私の『みーちゃん(人形)』を炭にし、挙句の果てに掃除機の『リンパ』で私のメガネを胃袋に収容した罪、この先生にきっちり登記(清算)してもらうから!」
弁護士の佐藤が、静かに分厚い訴状をテーブルに置きました。田所はそれを指先一つ触れずに凝視し、呟きました。
「(……いけない。このタナハシカメラという管理空間において、外部から『法律』という名の強固なOSが介入してきた。これは顧客満足度の全損、あるいは経営資産に対する強制的な**デフラグ(整理)**の要求だ)」
其の二:弁護士の「ハードウェア化」
「田所さん、ですね。クライアントの精神的苦痛および動産損害に対し、相応の慰謝料を――」
「佐藤先生、静粛に」
田所は弁護士の言葉を遮り、カバンから「非接触型温度計」と「メジャー」を取り出しました。そして、弁護士の頭からつま先までを素早く計測し始めました。
「……現在、先生という名の『法的処理ユニット』の熱量は安定していますが、そのネクタイの結び目に0.5ミリの歪み(バグ)があります。そんな不安定なシステム(身なり)で、我が店舗の完璧な管理体制をデバッグしようなど、論理の全損です」
「な、何を言っているんだ。私は法律の話を……!」
其 三:和解案の「永久登記」
「お客様、ご安心ください。私は今、先生が持ってきた『訴状』という名の不安定な紙媒体を、永続的な資産へとアップデートする作業を目下、執行中でございます」
田所はどこから取り出したのか、売り場の「業務用ラミネーター」を起動しました。そして、弁護士が提示した大事な証拠書類や訴状を、次々とプラスチックフィルムに挟み、熱々のラミネート加工を施し始めました。
「ちょっと! 何してるの!? それは大事な書類よ!」
「これは『リーガル・ホールド(法的固定)』です。紙という媒体は経年劣化し、インクがロストする恐れがあります。こうしてカチカチに固めることで、あなたの『恨み』という資産を100年先まで鮮明に登記(保存)することが可能です。さあ、先生もご一緒にラミネート(ホールド)いたしましょうか?」
「弁護士をラミネートする奴があるかぁ!!」
其 四:貴島の「物理的コンプライアンス」
「法的書類を工作の材料にするんじゃねえよバカ野郎!!」
背後から放たれた貴島のドロップキックが、ラミネーターを抱えた田所の背中に炸裂しました。
「先生、すみません! こいつ、脳内の回路がコンクリートで固まってるんです! すぐに書類を……あ、もうカチカチだこれ! 剥がせねえ!!」
「貴島さん……。ラミネートこそが、情報の全損を防ぐ唯一のファイアウォールです。お客様、これであなたの怒りは永遠に腐ることはありません。……先生、次はあなたの弁護士バッジを、防犯ブザーと同期させてよろしいでしょうか?」
「営業妨害でさらに訴えてやるわぁぁ!!」
今回のリザルト:和解交渉および社会的信用の全損
結局、弁護士の持ってきた書類はすべて「下敷き」のような硬度になり、法廷に提出不能な状態に。長谷川店長は、田所が「弁護士の口をガムテープでホールドし、音声入力によるバグの発生を未然に防ぐ『リーガル・サイレンサー』」を開発しようとしているのを見て、ついに白目を剥きました。
「田所……。お前、次は……次はもう『人間』と喋るな。……そうだ、**『棚卸し』**だ。地下の倉庫で、一生喋らないネジの在庫だけを数えていろ……」
「店長……。ネジの一本一本に個別のシリアルナンバーを刻印し、宇宙レベルのトレーサビリティを登記して参ります」
「……だから、勝手に仕事を増やすなと言ってるんだ!!」




