赤瀬
俺は全てを思い出した。
昨日までの俺は、ただの学生だった。
だが、あの雷轟のような音楽を聞いてすべて思い出した。
昔、山で雷浴びてた時の音のようだった。目が覚めた。山田をやっと殺せた。
山田は強すぎた。きっと、世界で一番強い。だから、隙が必要だった。俺は寝ている山田の背中から感電させ、左目から脳にかけて指を入れ、放電。心停止。
「そうかそうやって…」
意味は分からなかった。
だが、計画通りだ…
今行くよ、ボルト。
まずは電気を蓄える。
変電所を狙う——それが最優先事項だ。
ボルトの位置は周波数でわかる。
やや遠いな。 それに基地だな。軍に囲まれてる。
ここで俺は一つ問題に気づく。
身体に埋め込まれていたGPS——位置を追跡されるわけにはいかない。
俺は、自分の皮膚を裂き、埋め込まれた異物を手探りでえぐり取る。
「……いってぇなあ。」
手のひらには血のついた小さな金属片。
それを地面に叩きつけ、俺は息を整える。
ここからが本番だ。
電線に触れた瞬間、体の奥で微細な振動が走る。
高圧の電気が流れ込み、細胞の隅々まで駆け巡る。
じわりと充填される感覚——悪くない。
チャージしながら、インターネットにアクセスする。
まずはニュースの確認——。
「鏡が映らなくなる現象、各地で拡大」
「鏡の中の影と会話した者も……」
俺は眉をひそめる。
「……鏡か。あぁ、新聞部がやってたやつ。」
学校の新聞部が文化祭で書いていた内容に似ている。
あれはただの都市伝説だと思っていたが……今は、違う。
準備はできた。
次の目的地は変電所。
電気を蓄えるために、ここを確保する必要がある。 それに、インフラを混乱させることができる。
だが……ボルがいないから効率が悪い。
進入は慎重に。
変電所に到着し、俺は静かにケーブルへ手を伸ばした。
断線させた瞬間、電気が一気に流れ込む——体の芯まで響く、強い充電感覚。
長居はできない。
誰かに見られる前に離れなければならない。
俺は転々と場所を変えながら、充電を繰り返し、ボルのいる場所へ向かう。
周囲を見渡しながら、俺は息を整える。
「……近づけそうにないな。」
厳重な警備、監視システム、簡単には突破できない構造だ。
ボルがいない以上、できることは限られている。
正面突破は無理だ。
軍の警戒網は厳しく、力を温存しながら進むしかない。
だから——一人を感電させ、その姿に変装して潜り込む。
電気を雑に操ることはできる。
一瞬の痺れを作るのは容易い。
まずはターゲットを探す。
夜の闇に紛れながら、俺は監視の薄い場所を慎重に探った。
移動する兵士の足音。
無線の交信音。
その隙を突く—バチッ、電撃の一撃。
「っ……!」
影が崩れ落ちる。
息を整えながら、俺はその装備を外し、自分の体に馴染ませる。
これで、内部へ侵入できる。
ここからが本番だ。
通路に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
警戒態勢は厳しく、廊下には監視カメラと武装した兵士たち。
だが、俺は兵士の姿に変装している。
違和感を出さずに歩けば問題ない——理論上は。
部屋がいくつも並んでいる。
どれも厳重に管理され、電子ロックがかかっている。
俺の目的は一つ——ボルの部屋へ向かう。
周波数を頼りに位置を探る。
地下施設の奥——そこにボルはいる。
ここからどう侵入するか。
選択肢は限られていた。
俺は静かに息を整え、足を進める。
扉を開くと、冷気が肌を刺した。
ボルは冷蔵保存されていた。
このままでは動かせない——俺一人では背中に戻すことは不可能だ。
だから、研究者らしき男を探す。
白衣を着た数名の中から、一人を選ぶ。
子どもがいる研究者——それなら脅迫の余地がある。
俺は脳内でインターネットにアクセスし、情報を探る。
家族の写真、過去の発言——この男なら。
研究者がはぐれたところで部屋に連れ込んだ。
「ボルを戻せ。」
男は怯えた目で俺を見た。
「そんなことは……できない……」
俺は静かに言葉を続ける。
「戻せるなら命は助ける。戻せないなら——それはわかるな?」
沈黙が落ちる。
男は震えながら、冷蔵保存されたボルを見つめた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「……方法はある。」
俺は目を細める。
麻酔もなしに、冷たい器具が肌を裂いていく。
痛みが全身を駆け巡る——だが、俺は動かない。
ボルを、俺の背中へ埋め込む。
「変なことしたら殺すからな!」
研究者の手は震えながらも、確実に作業を進めていく。
皮膚が開き、筋組織がずらされ、ボルが慎重に埋め込まれる。
俺は息を整え、痛みに意識を集中させないようにする。
「……時間はどのくらいかかる?」
研究者が小さく答える。
「あと少し……動かないで……」
俺は静かに目を閉じる。
痛みがじわじわと広がる。
背中に埋め込まれたボル——その存在を俺の体が受け入れていく。
細胞が馴染み、神経と繋がり、完全に定着する。
確かにあったこの感覚。
背中から伝わる感覚——鼓動のような微細な振動。
静かに呼吸を整えながら、俺は手を握る。
——電気が集まり、指先に力が宿る。
ボルは、完全に定着した。
俺はゆっくりと立ち上がる。
研究者に言う。「すぐにこの町からできるだけ遠くに逃げろ。」
研究者は走り去った。




