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29.フィオルディリージとドラベッラ②

 ソウタたちが、フィオルディリージをパミーナの居室へ無理矢理押し込むと、部屋の片方のベッドには、猫人(ケット・シー)の少女が眠っていた。


「何やコイツ、ようこの騒ぎで寝てられんな」イワオが呆れて言うと、パミーナは困ったような顔で笑った。


「ジェミマちゃんは、マイペースだから……」


「そのレベル超えてるやろ」


 そうしている内に、観念したらしいフィオルディリージは断りもなくパミーナのベッドに座り、ため息を吐いた。


「はあ、マジ最悪。ていうか、あーし別にドラベッラとケンカするつもりないんだけど」


 イワオとソウタ、パミーナの頭の上に疑問符が浮かぶ。


「いや、ちょお待て、どっから突っ込んでええんか分からんねんけど、とりあえずお前、誰やねん」3人の疑問を代表して、ソウタが言った。


「はあ? どっから突っ込むとか、まじエロいんですけど。ウケる」


「いやいや、ウケへんウケへん。お前、キャラどこ行ってん。『高貴な妾に気安く触れるな』みたいな感じやったやん。実際自分、言うてたで」


「あーし『ワラワ』とか言ってないし! 超昔じゃん! ウケる!」


 ソウタは困惑しきって、助けを求めるようにイワオの顔を覗き込んだが、イワオも「いや、知らんし」としか答えなかった。


「ていうかぁ、なんか、あーしが悪いみたいな感じになってんじゃん。超ムカつくんですけど」


「いやお前、『高貴なエルフと卑賎なダークエルフが』とか言うたら相手怒るやろ」


「違うんだって! ちょっと聞いてよ。あーし、エルフの森で『エルフこそ至高の種族』って教わって生きてきたワケじゃん」


「知らんがな」


「いやマジだから。いいから聞けし。けど、エルフなんて、森の中で偉ぶってるだけじゃん。そういうのマジダサいと思ってぇ、木の実とか食ってるし。ウケる」


 手を叩いて笑うフィオルディリージに、ソウタは(何がオモロいねん)と喉元まで出かかっているのを懸命に堪えて話の続きを待った。


「だからぁ、都会の女になろうと思って、帝都行きたいって言ったらぁ、長老が『だったら学校に行け』とか言うし。マジ最悪。エルフの長老とか、顔若いのに頭ハゲてっからね。ウケるんですけど」


「いやお前、何回ウケんねん。悪いねんけど、そこ省略してもうてええ?」


「ええ、いいじゃん別に。ていうかさぁ、お前って言うなし。『フィオちゃん』って呼んで。ほら、言ってみ? フィ・オ・ちゃん!」


「こいつ、ホンマ……」ソウタは苛立ちや怒りを通り越して、なにか悲しみのようなものが湧いてくるのを堪えて話の先を促した。


「それでぇ、実際学校来たら、ダークエルフのマジ可愛い子いるじゃん。だから、仲良くなろうと思ってぇ……」と、そこにきて、フィオルディリージは俯いた。


「いや、仲良くなろうとして、何であないなんねん」とイワオも堪らず口を挟む。


「だってぇ……ドラベッラって、マジ可愛いっていうかぁ、カッコいいからぁ、仲良くなりたかったけど、なんか最初の日緊張して喋れなくてぇ、そしたら、次の日から訓練超キツいじゃん。どっちもめっちゃ疲れてるからぁ、なんかタイミング分かんなくなってぇ……」


「コイツ、いきなり可愛いやんけ」ソウタが困惑しながら呟くとイワオも首を縦に振った。


「ホンマ、急に差し込んできよんな」


「それで……今日初めて話した?」パミーナが聞くと、フィオルディリージは頷いた。


「何て言うたん?」とソウタも尋ねる。


「肌とか、髪が綺麗だねって」


「それで相手怒らんやろ」イワオが首を傾げる。


「実際は言い方ちゃうかったんやろ」


「その、『肌といい髪といい、ダークエルフに似つかわしい色だな』って……」


「いやせやから、なんでキャラが180°逆側に『ぐりぃん』いってまうねん。差別されたと思ったんやろ」ソウタは顔をしかめた。


「だってぇ、エルフの森じゃ喋り方とかちゃんとしないと、長老が超言ってくるし。だから、緊張したらああいう風になっちゃうんだって」


「そうはならんやろ。大体あれを『ちゃんと』とは言えへんからな。ほいで自分、なんで『卑賎』とか言うてまうねん」


「だってぇ、ドラベッラがめっちゃキレてくるからぁ、こっちも言い返さないと負けると思ってぇ……」


「あかん、こいつアホや。何で勝とうとすんねん」ソウタは呆れて天井を拝んだ。


「本当は、仲良くなりたいねんな?」とイワオが言うと、フィオルディリージは小さく頷いた。


 ソウタはため息を吐いて、少し考えてから言った。


「せやったら、俺が間に入ったるわ。けどお前、最後はちゃんと自分で謝んねんで」


「うん。分かった」


「ほんま、何やねんコイツ」





 廊下に出ると、ドラベッラとフィガロが居室の前で押し問答していた。「ソウタ! こいつマジで手に負えねえわ!」


「おっぱい触りよった罰やろ」とソウタはフィガロを一瞥すると、ドラベッラに向かって簡潔に言った。「ドラベッラ、本当は、フィオ、仲良くなりたいねんて。ちょお、こっち来てくれや」


 ドラベッラは怪訝そうに顔をしかめてから、渋々といったていでこちらの部屋に向かい、その途中でフィガロを突き飛ばした。「てめえ、後で、マジでブチのめすかんな」


「こっちはこっちで何でそない血の気多いねん」


 ドラベッラは部屋に入るなり、「で? 何?」と自分が不機嫌だと表現するように言った。


「いや、せやからな? ホンマは仲良くなりたいねんて。緊張して変な言い方なってもうただけらしいねん」


「こいつ、ウチを鼻で笑いやがったんだぞ」ドラベッラはフィオルディリージを指差して怒鳴るように言った。


「そうなん?」


「いや、それは鼻で笑ったのではない。緊張のために、呼吸が変な感じになったに過ぎぬ」フィオルディリージは偉そうに胸を張って見下すようにする。


「ほんま、にわかには信じられへんけど、コイツ緊張するとこういう感じになるらしいねん。俺らと喋ってる時は完璧ギャルやったからな」ソウタはつい先ほどのフィオルディリージの話を要約してドラベッラに伝えた。


「よく分かんないんだけど、じゃあ、ウチの肌とか髪のこと言ったのは何だったんだよ」とドラベッラが問い詰めると、フィオルディリージはいよいよ目を潤ませて、ついには大粒の涙を一筋こぼした。


「それは……ダークエルフの肌の色とかぁ、黒い髪とかぁ、ドラベッラに似合ってて可愛いって思ったからぁ、褒めてつかわそうと思ってぇ……」


「あかん、なんかキャラ混ざってもうて、余計変な感じなっとる……」


「じゃあ、ダークエルフのウチを侮辱したわけじゃねえんだな」とドラベッラは言った。


「うん。でもぉ、なんか変なふうになってぇ、『卑賤』とか言っちゃってぇ、本当は、そんなこと思ってないのにぃ……」


「まあ、ウチも、エルフはそういう嫌味を言うもんだって偏見があったからな。小突いたり、クソエルフなんて言ってごめんな」


「うん……ごめんなさい……マジでぇ……」フィオルディリージはそう言うと、ドラベッラの腰に抱きついた。


「もういいよ。じゃあ、部屋帰ろうぜ。お前の話、聞かせろよ」ドラベッラはフィオルディリージの頭を撫でると、顔を上げてソウタたちに言った。「お前らも、悪かったな。こんな下らねえことに巻き込んで。今度何かで埋め合わせするよ」


「ドラベッラ、めっちゃ大人やん」イワオは感心して唸った。


「だが、フィガロのクソだけはブッちめる!」


「そっちもついでに許したってくれへん?」とソウタもついでにフィガロの許しを乞うた。


「いや、アイツあの後また、胸触りやがったんだ」とドラベッラが言うと、その様子を廊下から眺めていたフィガロが頭の後ろに手を組んだまま悪びれもせず弁明した。


「いや、一回ちゃんと揉んどけば、かえって免疫がつくだろ」


 イワオが短く笑った。「フィガロ、後で回復したるわ」


 ソウタも頷く。「いてもうたれ」


 



 コテンパンにぶちのめされたフィガロにイワオが回復魔法をかけているのを覗き込みながら、ソウタは言った。


「いや、エルフってこんな感じなん?」


ここまでお読み頂きありがとうございます。


前話から、今回のお話は「エルフて、こんな感じなん?」という話にしようと考えていて、字数的に2話跨ぐなと判断した時点で、「フィオルディリージは緊張したら高飛車な態度になる」というのを間に噛ませて1話引っ張りました。


エルフのギャルは最初から考えていたのですが、ダークエルフの方は当初ヒップホッパーにする予定でした。ただ、少し書いた時点でノリがサム過ぎるのと、2正面で同じようなギャップネタをやる意味が無いという判断があり、ドラベッラにはツッコミに回ってもらい、ヤンキーギャルVSフィガロのセクハラという構図にしました。


ラップのリリックの書き方みたいなのも調べたり、ダサい韻の踏み方とカッコいい韻の踏み方の違いみたいなのも少し勉強したので、披露出来ず残念です。私生活に活かそうと思います。


宜しければ、ご意見ご感想などお聞かせ下さい。


今後とも宜しくお願いいたします。

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