11.お化けVS宇宙人
「イワオ、見てみ、コレ」ソウタが指したのは、ギルドの掲示板に貼り出された討伐任務だった。
──求ム! 格闘系白魔道士!──
「ほとんど名指しやん。ある?『格闘系白魔道士』て言葉」
「ホンマやな。直接呼ばれてるとしか思われへんわ」イワオは頷いて詳細を読む。「何?『リッチの討伐』……なんやコレ。アカンやん」
「どないしたん?」
「金持ちてだけで討伐したらあかんやん。俺な、『金持ちはどうせ、みんな悪いことしよんねやろ』て言うヤツ嫌いやねん。ただの僻みやろ。童貞の女叩きに匹敵するみっともなさやわ。
俺も全然金持ちちゃうし、その金持ちが悪いことしよったか知らんけど、『お前が貧乏なんは、悪いことする以外に金稼ぐ手段が無いと思っとる、その想像力の乏しさが原因じゃ』言いたなるわ」
「うぅん……分かるで。分かるけどな、リッチって、金持ちのことちゃうねん。魔物やねん」
「嘘やん。俺、間違えてもうたん? ごっつ恥ずい。ソウタこれ、言わんとってな」
「ええよ。言わん」
「ほんで、どんなヤツなん?」
「魔法使いのアンデッドやな」
「お化けってこと?」
「せや。お化けの魔物は、白魔法でダメージ受けんねん。せやから、前線で戦える白魔道士探しとんちゃうか」
「ああ、なるほど。ほだら、やるわ」
「嘘やん。そない即決する? 怖ない?」
「俺、お化けより宇宙人の方が怖いわ」
「ええ? お化けの方が怖いやろ。何しよるか分からへんやん」
「その点、宇宙人は確実に実験しようとしてくるねん。めっちゃ怖ない? キャトルミューティレーションしてきよんねんで」イワオはそう言いながら、貼り紙を剥がして受付へ持って行き、受注の手続きを済ませた。
「キャトルミューティレーションが何か分かれへん」
「血とか抜かれんねん」
「せやったら献血かて怖いやん」
「献血は死なん程度やん。死ぬまで抜きよんねんて。内臓とかも取りよんねん」
「せやけど、この世界の人らにしてみれば、俺らも宇宙人みたいなもんなんちゃう?」
「……嘘やん。俺らの方が宇宙人なん?」
「そらせやろ。俺ら地球やない別の星に来てもうたっちゅうことやん。せやったら、この星に元々住んでた人らからしたら、宇宙人やんけ」
「怖っ! めっちゃ怖い。実は俺らの方がそうなん? 何やねんお前。なんで怖い話すんねん」
「いや、逆ちゃう? 宇宙人ちゅうても、みんながみんな人間捕まえて実験しよるわけちゃうっちゅうことやん。俺らみたいに優しい宇宙人もいてるねん」
「アカン、自分が実は宇宙人やったショックがデカ過ぎて、話が頭に入って来えへん」
「大丈夫やてイワオ。お前は優しい宇宙人やから。それに、自分の方が宇宙人やったら、逆に宇宙人怖がる必要ないやん。お前がそうやねんから」
「せやったらお前、自分が実は幽霊やったら怖ないんか」
「それはお前、自分が実は死んでもうてるいう怖さやん。また種類がちゃうわ」
「いや、同じや。自分が思うてたんと違ういうことやん。『自分が何者かということさえ、実はよく分かってへん』いう怖さやねん」
「分かってるやん。地球という天体の、日本という国から、不思議な力でこの異世界に迷い込んでもうた普通の高校生やていうことまでわかってんねんから。それを、『まあ、見方によっては宇宙人やな』ってカテゴライズしただけや」
「……ほんま?」
「ホンマや。宇宙も地球もあれへん。要は自分やねん。なんも怖いことあれへんわ」
「そうか? いや、せやな。怖いことあれへんわ。お前、やめろや。ビビってもうたやんけ」
「ほな、お化けの魔物やっつけに行こうや」
「おお……イヤ、ちょお待って。宇宙人が怖ないと思ったら、逆にお化け怖なってきてんけど」
「どないやねん」
「冷静に考えてみたら、お化けはお化けで怖いやんけ。宇宙人が怖ないからって、お化けが怖ないのとは別にイコールちゃうわ」
「今更お化けなんか怖ないわ。お前宇宙人やねんぞ。エイリアンVSプレデターみたいなことやん」
「それどっちも宇宙人やんけ」
「ちゃうねん。よう聞きや。お化けの映画とかあるやん。お化け出て、キャア言うて。ほいで、まあ、1人や2人、いかれてまうかもせえへんわ。けどな、そんなもんや」
「まあ、確かに、2桁いったら相当健闘した方やな」
「せやで。けどお前、宇宙人どやねん。米軍の特殊部隊とかでもごっそりいかれてまうねんで。地球全体の危機や。要するに、宇宙人の方がお化けより強いねん。ほいでお前は宇宙人や。一撃やっちゅうねん。お化けごとき。相手になれへんわ」
「そうか……。せやな。ほだら、行こか」
「いや、俺は行かへんけど」
「あ? なんで? お前さっき、『お化けやっつけ行こうや』言うてたやん」
「チアガールかて『レッツ・ゴー!』言うけど自分はどこも行かへんやん。応援のヤツや」
「いや、お前の応援いらんわ。なんで行かへんねん」
「お化けの魔物やで。剣とか弓矢とか効かへんやん。『すーん』すり抜けてまうねん。ようやらんわ」
「骨のヤツとかいてるやん。あんなんゴチン殴ったったらええやんけ」
「お前、お化けの魔物舐め過ぎや」
「お前が『俺ら宇宙人やから、お化けごとき一撃や』言うたんちゃうんか」
「……嫌やねん」
「あ?」
「お化けいるて分かってるとこ行くの嫌やねん」
「アカン、なんか混乱してきてんけど。今までの力説はなんやってん。どういうことやねん」
「よう肝試しみたいなんで、呪いのトンネルみたいなところ行く奴おるやん。俺ああいうの絶対行かへんねん。なんでお化けおるて分かってるとこわざわざ行くねん。あんなん、呪われたって文句言われへんやん。自分で行ってんねんから」
「いや、いきなり根本的なところ戻って来なや。しゃあないやんけ。困ってる人おんねんから。そのための冒険者ちゃうんかい。俺らが行かへんかったら誰が行くねん」
「お前、何使命感に目覚めてもうてんねん。俺は絶対行かへんからな」
「ええわ。言うとくけどお前、お化けにビビって討伐行かれへん冒険者なんて、絶対モテへんからな」
「……マジなん?」
「そらせやろ。なんぼ強かったかて、『お化け、あきませんわ』言うてる奴に、誰が『キャー素敵!』てなるねん」
「……行くやん」
「あ?」
「せやったら、行くやん!」
「何にキレとんねん」
彼らはこの後、魔術師の亡霊リッチと死闘の末、これを討ち果たすが、それはこの物語の主題ではない。
ここまでお読み頂き有難う御座います。
今回は特にそうですが、基本こんな感じの中身の無い会話を書くのがこのお話のテーマです。
是非感想などお寄せ下さい。
今後とも宜しくお願い致します。




