第七十四話 列車と稲妻
電車に揺られながら少しだけ考え事をしていた。
目的の地域の工業の発展は自分なりにかつて調べていた。
この路線の終点は分かっている。でも確か線路はその先に続いていたんだった。東海特区が開発される時に大量の輸送列車を一時的に収納する倉庫及び車両基地が新たに建造された。開発終了後はその空間がどうなったかわからないが少なくともこの旧式の列車などは間違いなく格納されていたのだろう。
その場所は地上ではなく地下だったはず。当時中部地方で経済の中心地になっていた都市の地下鉄インフラとつながり、そのまま地下鉄を特区まで伸ばしていった。つまり、本来はこの線路の先が地下、そして特区につながっているわけだが少し前からの路線図を見る限り地上の線路と地下鉄はすでに分けられてしまったようだ。だから現時点の終点は特区までは続いてはいない。
それでも歩きではなくこうやって乗り物によって移動できるのは非常に助かることには変わりはない。
そんなことを思っていたら……
「あ、見えてきたよ。あの辺だよね」
水面ちゃんが窓越しに指さす場所。様々なビルが乱立するそこがこの路線の終点。そこから他の場所に行くためにはまた別の移動方法を探すがようやく目的地が見えてきた。
「ここから見るとそんなに変わった様子には見えないけどねぇ、でもよく見ると向こうの空になんかいるわ」
「ああいったモンスターももう見慣れちゃったもんだよなぁ」
「あ! 光りましたよ」
地上から光が見えたと思ったら翼竜なのか怪鳥なのかはたまた竜のタイプなのかわからないが何かしらのモンスター地面に撃ち落とされたように見えた。
ここからでも見える光ということで向こうにも手練れのプレイヤーがいる予感がする。
「わあっ!!」
突如、後ろの方から大きな悲鳴が聞こえた。彼らも窓の外を見ているようだが俺達が見ていたのとは逆方向。列車と並走、と言っても飛びながら追いかけていた怪鳥型のモンスターがいた。
「運転手さん! 運転手さん!」
「ここからじゃ聞こえないって! それに列車の中なら大丈夫だろ、まずは落ち着いて……」
その瞬間、車両が少しだけ横方向に揺れる。
でも今までの揺れとは違う、そのモンスターが体をぶつけてきたのだ。
「な、ヤバいって! あれ攻撃してくるよ」
「とりあえず前に行こう! あんた達も逃げたほうがいいぜ!」
そう言い残し元々少なかった車両の中は俺達だけになった。もう今更違和感もクソも無いがARのはずなのにゲームによる物理的な影響を体が感じることにも慣れた。ただ一つ言えることはそのモンスターが攻撃をしようとしてくることだ。
確かにこの速度で追いつこうとするモンスターはレベルが高いはず。しかも車体の外から攻撃なんて想定外だった。
だからと言って何もしないわけにはいかないから……
「倒すしかないわね。でもこの窓、うっ、ダメやっぱり開かないわ。これじゃあライフルも剣も無理そう、いや、ライフルなら透過できるかもしれないから試してみる価値はあるけど……」
「ちょっと怖いですね、窓や壁が障害物とみなされる可能性もありますし。かといって天井の上に出るわけにもいかないですからね……」
「竜を外に出現させればなんとかなるか、いやでもこの列車のスピードじゃあ……」
アークアナイラレーターのサブ武器形態の召喚獣ならある程度は出現場所の融通は利く。ただ、自分と倒したいモンスターが高速で移動している時に外に出現させたらどうなるか。
出した瞬間、列車に置いていかれてコントロール不能になるって場合も最悪あり得る。そんなことを思っていたら……
「私がやるね、ちょっと後ろに下がって!」
「水面さん……、あっ! そうか、魔法ですね」
「そうだよ、でも場所が場所だからちょっと調整しなければいけないけどそれも大丈夫そう」
戦闘を補足する測定装置を動かしながら行けると踏んだようだ。そして、列車の外側に‟雷の種”が無数も出現し、
「いっけぇぇッッ!!」
直後に雷撃となってその怪鳥を貫き、そのまま飛行能力を失って列車に置いていかれそうになったように見えたら、
「あ! 倒せたみたい」
見せてくれた討伐履歴の中にはしっかりとさっきのモンスターが記録されていた。
「あんな正確に撃ち抜けるもんなんだね」
「まあね、物は試しだと思ってやってみたけどうまくいったみたい。それにもうすぐ前に住んでいたところに着くと思うとね、やっぱり楽しみなの。だからやる気も出るってものよ」
そう言いながらニッと笑う。
本当に楽しみってことが伝わってくるテンションと笑顔だった。
そして終点。
遠くからはビルが目立っていたが駅についてみるとそれだけではないことが分かる。
構内は大きいし路線がいくつもある。
何より人が多い。
プレイヤーが集まれば集まるほどそこは一応安全となりより人が集まる。中心街からはそれなりに外れているはずだが行きかう人をよく見る。
昔からずっと人口が多い都市だったが今でもその様子は変わらないようだった。
でもなんだろう。ただ単に人が多いからってだけではなく妙に騒がしい気もした。
「~注意をお願いしまーす、最近~」
少し離れた場所から街宣が聞こえる。
「何かモンスターが出たのかしらね」
「まあこれだけ人がいたら倒せるでしょ」
その時はそんな感じで軽く流していたがその注意はモンスターに対してではなかった。それを知るのは少し後になる。




