TIPS19 作戦会議?
国内有数の規模を誇るギルド『中部総合』。
以前は多くのプロゲーマーを輩出し、賞金の額や人脈の広さを以て様々な施設をギルド活動のために借りていた。
ROAD暴走後も変わらずギルド所属の人達が実際に会い、話す場所として利用されている。
さらにはそういった施設の周辺は安全性が高いということで人の往来及び居住も日に日に増えていった。
そのような場所の一つに中部総合のとある班員の影があった。
「失礼します」
「おう、ご苦労さん。大変だったみたいだな」
「その件に関してはなんと言っていいものか、本当に済まない」
「ああ、勘違いすんなって。別に咎めたりしようなんて思っているのなんざ誰一人としていない。むしろ、よく無事だった。と言ってもお前さん達なら大丈夫だと思っていたよ。それで状況は?」
「例の双子はやはりAI搭載のNPCだったよ」
「そうか、感染の方は?」
「二人を見つけた後は嫌がっていたが何とか互いに感染しない距離まで離して効果が切れるのを待った」
「なるほど。離したってことは武器とかを使ったのか」
「いや、ダメもとで話したら説得に応じてくれたよ。まさか、あそこまでコミュニケーションを取れるなんて……」
「ははは、それは結構。説得できるとなるとかなりの高度なAIを搭載しているっぽいな」
「そうなのか?」
「ああ、AI搭載のNPCっつても幾分か段階があるようだからな。ちょっと難しい質問をすると会話が成り立たなくなるのもいるらしいが今回はそうじゃなかったようだ。それで、感染消滅までの時間は?」
「計測だと52分だった」
「そりゃまた…… バロウの中でも大物だな」
「しかも未だにあのあたりに潜伏しているはずだ。ただ、それよりも、」
「感染が広がってしまったんだろ?」
「……あぁ。あの二人と接近した人達の人数は他のNPC含め未確認だがかなりの数に上るらしい。それに、愉快犯まで現れた始末だ」
「愉快犯ってことは自分から動いて感染を拡大させるとかか」
「いかにも。その通りだ」
「ったくやってくれるなぁ、次から次へと厄介ごとが舞い込んでくるってもんだ。スリップダメージが300ちょっとだっけ? 俺達なら仮に罹ってもリジェネで相殺できるが暴走後に始めたプレイヤーとかだと危険なレベルだな」
「一応感染者のために回復アイテムを一部開放するがそれもどこまで持つかだ。対症療法にもなっていない」
「まさにパンデミックだな……」
「あらぁ、面白い話をしているわねぇ」
間延びした話し方をしながら一人の女性が現れた。
「あ、暁さん」
「暁嬢か、面白いなんてもんじゃないぜ」
「そう? 何か昔読んだ話に似ていてねぇ」
「なんだそりゃ」
「古典よ、古典。インターネットゲーム黎明期のね。ROADの祖先の祖先、下手したらそれ以前って言っても差し支えないわぁ。仮想世界で起きたパンデミックってことで論文にもなったそうよぉ」
「その状況と似ていると?」
「んーーー。まあ詳しくは覚えていないけどぉ……まあそれなりに似ているかしらぁ」
「ま、仮に考察や対処法が書かれていたとしてもやることはもう決まっているがな」
「あらぁ、頼もしい。さすが神楽坂君」
「とりあえず感染拡大は阻止、愉快犯は多少強引でも止めること。そして、もっと根本的な解決をする」
「バロウ退治か」
「ああ、そもそも呪術系の状態異常だからな。元凶を倒せば自動的に消える」
「あれぇ、でも今って人員はぁ……」
「そこなんだ。こっちはこっちで手が離せないからな」
「一応特殊予防が可能なメンバーもいるからしばらくは探索中心でいく。時間を必要以上にかけるつもりはないがな」
「無理はすんなよ。あくまで倒すことができる体制ができてからだ」
「分かっている、それにどうやら探索自体も一筋縄ではいかないようだから手伝うことができる人手を探すよ」
「そうか、潜伏しているのか。そりゃますます厄介ってわけだ」
「私も加勢したいところだけどねぇ、神楽坂君と同じく向こうに注力中」
「そういえば戦艦の方は?」
「3隻建造の予定ね、でもこんなにいるぅ?」
「不穏な動きがあるみたいだからな」
「そうなのか、あそこは戦争跡地なんじゃ……」
「何かとお宝も多いからな。それに各ギルドの残党もいるさ」
「神楽坂君は船員、ってわけじゃないわよねぇ、やっぱり」
「ああ、先日のアップデートで搭乗機も強化されたようだからそれに乗る」
「ってことは母艦クラスも……、それほどの場所とは」
「ま、そのあたりは用心に越したことはないってことで。んじゃ俺は強化可能時間になったからチューンして、それから練習してくるわ」
「私も戦艦の調整をしなきゃねぇ、というわけでそっちはよろしくぅ」
「了解。また何かあれば報告する」
*
「いつ見てもかっけぇなぁ」
VRモードで遊ぶための装置を付けると目の前には腕や足に該当する部分を持つ12、3メートルのロボットが現れた。
‟現れた”というよりもそれがある空間に入り込んだだけだが。
ゲームではあるが実際にそのような機械が存在しているように思えるほど各部の情報は細かく、調整・改良・改造もやろうと思えばどこまででもできてしまう気さえもする。
自分なりに納得のいく整備をした後は搭乗し、VR宇宙の練習用コースを他のプレイヤーが驚愕するような速さで駆け巡り、これまた練習用ターゲットを次々に破壊した。
一通り乗りこなした後は何か不満があったのかまた調整をし、練習を何度か繰り返していった。




