第六十話 旅は道連れ?
昨日、出現したブレイクザウラーはちょっとした噂になっているようだ、なんてことを朝食を食べながら感じ取った。ただ、討伐対象でもないイレギュラーな存在だったので豪華な特典をもらえるってわけではなかったしゆっくりするつもりもなかったので誰が倒したかってことが知られる前にすでに俺達は出発していた。
それよりも妙に気になったのはあの巫女の一行だった。Gフェネクス狙いならあそこはちょっと出現ポイントから離れる。幅が狭くなり、木々もより多くなるような道に入っていく意味とは何だったんだろうなんてことを少し考えた。ただ、それも水面ちゃんの言葉でひとまず頭の隅に追いやられる。
「うわー…… 昨日よりも並んでる?」
「どうやら私達と同じように考えていた人が多かったみたいね」
「朝もそれなりに早いってのに……」
「ねえ、リョーマちょっと地図を見ていい?」
「ああ、うん」
地図を取り出し4人が囲って見る。
「あー、モノレールは中央道にもつながっていますね」
「道理で人が多いわけだわ」
「あれ、こっちにも道があるよ」
「一応唐峯沢町には到着することができるわね」
「しばらく乗り物は無いけどこっちのルートも……」
「そうね、急がば回れって言うし」
しばらく考えて結論を出す。
「じゃあこっちから行くか」
そうして、当初の予定とは違うが別のルートから次の宿泊施設が固まっている場所を目指すことにした。
「地図で見ると不安でしたが結構整備されていますね」
「うん、下山みたいな感じになると思ったけどそうでもないね」
ダムの下の方を流れる川が木々の間から見え隠れする。そんな自然豊かな道を歩いていた途中、
「おりゃああーーー!!!」
雄たけびが聞こえた。
「何だろう?」
「戦闘かしら」
「近いですね、というかこの先?」
俺達が進んでいる方向少し前から聞こえたその声。どちらにせよ通ることになるであろう場所の近くのようなので小走りになって声のした方に行く。
すると高校生くらいの男子が両手に剣を持って戦っていた。彼と俺達の間には大きな車、というかバスだろうか、それがあったので全体像はなかなか見えなかったがどうやら戦っていた相手は……
「あれって!」
「ブラッドワイバーンか」
レッドワイバーンの上位種ブラッドワイバーン。カテゴリー3の中でもそれなりに強く、一人で相手をするのはきついがどうやらあの男子は優勢のようだ。
介入しようかどうか迷ったが一人で倒しきりたい場合もあるかもしれない、これが余計なおせっかいになるかもしれない、なんて一瞬迷っていたら、
「あ! 待て! じいちゃん、逃げてっ!!!」
突如、ブラッドワイバーンが目標を変え、車の方をめがけて進んできた。ドアが開き、中からおじいさんが出てくるが飛行可能モンスターの速度は人間の足よりもずっと速い。
「まずい!」
だから、思わず体が動いた。
走りながら斬撃を飛ばし、続けざまに地面すれすれのレッドワイバーンを斬りつけとどめを刺した。
「あ、倒したんだ」
遅れて後ろから3人がやってきた。
「うん、もうすでにかなりダメージを負っていたみたいだし」
さらに奥からあの少年が走ってきて、
「はあ……はあ……、あの……」
「あ、ごめん。思わず出ちゃったけどドロップアイテムとかが山分けになるのはまずかったかな?」
「はあ……、いえ、助かりました。でも……」
黒い髪が眉毛辺りまで伸びたなんというかまさに高校生らしい風貌の彼が祖父と思われる人物に目をやる。腕を抱えていた。どうやら運転中にあのモンスターに出くわしたんだろう。思いっきり方向転換か急ブレーキをしたことで変なところを打ってしまったのかもしれない、とかつてのギルドのトラックの思い出が蘇る。とりあえず持っている回復薬をおじいさんに使うと一応は元気になった。だが、運転するのはちょっと危ないかもしれない。
(あれ、でも待てよ。この道は一本道。だから向かう場所って……)
「ねえ、君ってこれからどこに向かうの?」
「僕達はあそこのホテルに荷物を届けてその帰りにあいつに出会ったんです。これから僕達の住んでいる唐峯沢町、あ、唐峯沢町はこの辺りの宿泊施設への中継点も兼ねている場所なんですがそこに戻る予定でした」
思わず花耶、水面ちゃん、アキラちゃんと目を見合わせた。
「私からもどうもありがとうございました。じゃあ炎山戻るか」
「いや、でもじいちゃん、腕は……」
「痛みも引いたしな。それにこの人達も先を急ぐだろうし」
「あのー、よろしければ僕が運転を手伝いましょうか。実は次の目的地が唐澤峯町なので」
「なんと!」
少しだけ操作を復習し、おじいさんが助手席に乗り、あの時習ったことを思い出しながら運転をした。どうやらこの車はマイクロバスというものらしく荷物を置く場所を座席に変えることもできてそこに三人も乗せてもらうことになった。
*
「いやーそれにしてもお兄ちゃん、こんな特技を持っていたんだね」
「あ、ごめん。今あまり話せないかも」
「ちぇーー」
あの時運転したトラックよりも小さいがここは普通の道、それに助手席にベテランらしき人が乗っているとはいえ同乗者が他にもいる。だから細心の注意を払い、運転に集中していた。なので自然と後ろの方で会話が始まり、俺はそれにせいぜい耳を傾ける程度の事しかできなかった。
「そういえばえっと……」
「ああ、僕の名前は琴吹炎山。呼び方は好きにしてね」
「じゃあ炎山さんって呼ばせてもらいますね。炎山さんはギルド内で結構強い方なんですか、あのブラッドワイバーンを一人でかなり押していましたし」
「いや、違うよ」
「でも琴吹君の持っていたあの剣って両刃系の上級武器、えーと、そうだアロンダイトよね。それで強くないって……」
「いえ、そういう意味じゃなくて、ギルドが無いんです」
「ん? ギルドが無い? じゃあ組合とか他の呼び名で呼ばれていたりするの?」
「そうでもないです。実はそういった組織そのものが無いんです」
(!?)
聞きながら思わず驚いてしまった。だって何かしらそういった自警団要素を持つ組織が全国的にできているものだと勝手に思い込んでいたから。なら住んでいるところにモンスターが現れたりしたらそうするんだ、などと思っていたら、
「じゃあ、町にモンスターが出たらどうするのよ? 一人が強くてもいずれ限界が来るでしょ?」
代わりに花耶が聞いてくれた。
「僕達の街にはギルドのようなものがありません、その代わり……」
少しだけ言葉に詰まったような気がした。
「スンダマ様がいるんです」




