第五十九話 vsブレイクザウラー
「こんなのがここにいるのか!?」
全身に棘が生えたような獣脚類型のモンスター。10数mはあろうかという巨体を持ち特定属性の魔法を吐き接近戦も得意とする、それがブレイクザウラー。今回出現したのは炎主体の攻撃を使うようだ。
そいつから逃げるように走ってきたのがさっき見たパーティーで時折攻撃をしているがあまり効いていないようだ。
(もうほとんど距離もない、戦いは必至か。それにどっちみち逃げたとしても安全ではないかもしれない。ならば……)
「ここで戦うしかないわね」
「うん、そうみたい」
あの一行が俺達に気が付いたみたいで、
「あなた達逃げて!!」
そう叫んだがもう決心はついていた。狭い道が好都合、あの巨体の動きが制限される。最初に花耶がライフルで脳天をめがけて数発放った。
「やっぱり固い!」
「いや、でも効いている」
「じゃあ私も!」
ここ最近強化されたことで使うことができるようになった水面ちゃんの雷弓。今までの雷撃よりも貫通力と速度が増している、それを首元狙って撃ち込んだ。
「よし、そろそろ水の準備をしておくね」
「うん、お願い。二人は下がっていて」
メイン武器には大水霊の腕輪、そしてサブには双頭の機械竜AA。
「そんな……、もう一体……」
「ああ、こっちは大丈夫ですよ」
足止めされたブレイクザウラーの隙を見て全速力で走った巫女さん達が俺達のそばに来たのはいいが突如現れた竜におびえてしまったのですぐにフォローする。
ロックオン。標的は1。
そして、AAから光が放たれる。さっきまでの暗がりが嘘のように明るくなる。それと同時にブレイクザウラーのダメージが効いているときの轟音が聞こえた。
「今ね」
隙ができたと同時に花耶が近づいて持ち替えたテンペストで斬りつける。
ただ、カテゴリー5となると行動ができない時間はほんのわずか、すぐに攻撃に切り替えて花耶めがけて炎を吐きだした。これを喰らったら一撃でアウトも十分あり得る、だが
(させるか!!)
AAの両翼から発生する特殊な防御空間が彼女を守った。
「はああああ!!」
アキラちゃんの強化で動きやすくなった花耶がテンペストで何度も斬りつけ、スキルを使い、水面ちゃんが後ろから援護をする。
(ここだ!!)
そして、俺も至近距離から圧縮され、レーザーのようになった水魔法を放った。
ゴギャァァア!!!と声を出し、まるで地団太を踏むようなブレイクザウラー。怒りに任せてかみ砕こうと顎を近づけたが、
ドンッッッ!!ガシッ!!
その顔をAAが両手で受け、さらに押し返す。向こうもなかなかの力だがこっちの機械竜の各ブースターの音が静かに大きくなり、さらに前進する。
AAとの戦いで精一杯なブレイクザウラーめがけてさらに攻撃を加える。巫女さんのパーティーも攻撃の余裕ができたようでさっきまでは見かけなかったスキルが飛び出した。
「あと少しね!!」
「ああ!」
もうちょっとで倒せる、そう思った瞬間に獣脚類型に似つかわしくないマッシブな腕が俺に襲い掛かろうとした。
ガシンッ!!
だが、その攻撃もAAが尾で迎え撃った。このまま押し切れると思った矢先、ブレイクザウラーが立て続けに攻撃をした。狙いは俺と花耶、ではなくAA。コンボ攻撃のようにすかさず大あごで噛みつこうとしたが、
……
その巨大な歯は空を切る。
隙ができた巨体めがけて双剣で一気に斬りかかり、トドメを刺した。
《カテゴリー5 ブレイクザウラーを討伐しました》
「ハア……ハア…… 終わった」
「おい、なんかヤバいのが出たって」
「そこだって、そこ」
「あれ、いないじゃん」
どうやら騒ぎを聞きつけて人が集まり始めたようだ。巫女さんが「あのっ……」って何か言いかけたが小走りになりながら俺と花耶は軽く会釈をし、アキラちゃんは「あはは……」って声が聞こえてきそうな絶妙なスマイルを向け、水面ちゃんは小さく「バイバーイ」と言い、一本道に集まってきた人を器用にかいくぐって宿に戻った。
「いやーまさかあんなのが出るなんて思ってもみなかったです」
「あれってレイド限定じゃなかったっけ?」
「なんかPLが高いと普通に出現することもあるって話をギルドで聞いたわ」
「そんな仕様になっていたの? ってことは……」
「んーーー」
「あれ、水面ちゃん? どうしたの?」
部屋に戻った水面ちゃんが胡坐をかき、腕を組んで何やら考えているようだ。
「いや、あの巫女さんね、PLかなり高かったの」
「また勝手に人のステータス見て……」
「へへへ、まあ一緒に戦うことになったんだからさ、知っておいた方がいいじゃん」
「PLが高いのがどうかしたんですか?」
「うん、それ自体は良いんだけどなんて言うかさぁ、武器、あっあの人が使っていたのは弓なんだけど。それも強いのに武器の強さに見合った戦い方じゃないんだよねぇ」
確かに俺もよく確認したわけでも無いが撃ち方・戦い方とかはお世辞を言ったとしても良くて中級者って感だった。ただ、LOADのPLは単純にプレイしていれば上がるってわけでも無いから調子が悪かったんだろうか。
「それに……」
「ん?」
「いや、なんか他にもしようとしていたことがあったみたいだけど何もしなかった」
「えー、何それ。あの状況で出し惜しみ?」
「まあ初めての敵の場合はそういうこともあるかもしれませんし」
「それもそうね。っていうか、リョーマが見たデカいのってあのブレイクザウラーじゃない?」
落ち着いてすぐに脳裏に浮かんだのはやはりあの雨の日に見た‟何か”だった。それがブレイクザウラーか、と思いもしたが今の話からブレイクザウラーはついさっきあそこに突如現れた可能性が高い。それに、
「え? 何それ!?」
「あー、そういえば寝ていましたもんね」
「いや、一瞬そうだと思ったんだけど、」
「だけど?」
「小さかった」
「あの夜見たのが?」
自分の記憶が正しければ、周りの木々と比較した際の目測が正しければ、それらをしっかりと覚えていればの話になる。でも、もしもそれらが全てある程度正確だとしたら、
「いや、ブレイクザウラーの方が」




