TIPS15 暗がりの帰路
「ったくとんだ大回りだったな」
「仕方がないさ、道路の復旧を待つよりはこのルートの方が早い」
飛騨山脈付近、連なる山々を下るための道を歩き二人の冒険者が北に向かって進んでいた。
「それにしても、まさか俺達が帰る時に限って崩落や橋の崩壊が起こっているなんて、ツいていないな」
「その事故なんだが妙なんだ」
「というと?」
「確かに局地的に降った大雨による地すべりとその二次災害が原因らしいんだがどうやらそれだけでは説明がつかない崩れ方をしていたとか。特に老朽化しているし規模は小さめとはいえ、橋の支承って言っていたっけかな、その部分に不可思議な圧力がかかっていたとか」
「それってどういう崩れ方だよ?」
「いや、まあ俺もそんな知識は持っていないしあくまで噂程度だから詳しくは分からないよ、ただ……」
「ただ?」
「あの通路が機能しなくなる前日に大きなモンスターを見たって情報があるみたいだ」
「ははは、そのモンスターが何かしたって? 俺達に傷をつけることはできても流石に自然には……、いや、待てよ……」
「ああ、どういう訳か最近になってROAD関連の現象が思い込みではなくなっている気がする。ほら、昨日泊った民宿、あそこも屋根が怪鳥にやられたって言っていたよな」
「ああ、てっきり演出かと思ったらどうやらそうでもないみたいだし」
「どっちにしろ今の俺達だけだと情報に限りがある。だからとりあえずギルドに戻って何かしら見聞きしたことを早く共有したほうが良さそうだ」
さらに進む。先ほどまでは人とすれ違うことも珍しくなかったが夕暮れが近いからかそういった人影も気づけばほとんど見えなくなってきた。だんだんと寂しさ、というよりは恐怖心を二人が襲うので示し合わせたかのようにまた会話をし始める。
「あーあ、こりゃ思ったよりも暗くなるの早いな。時期的に大丈夫かと思ったら……」
「まあ大分下ったとはいえまだ標高はそれなりにあるからな」
「今のペースで進むと……、危ない!」
「分かっている!!」
二人が同時に武器を構えた。視線の先にはモンスターがいた。これまで幾度となく同じような場面を経験していた。だが、今回は何かがおかしい……
「おい、あいつは……」
「下半分は何の種類か判別つかないが暴熊系だろう、だが」
「上半身はシルバーウルフだぞ」
「もう特に驚きはしないが新種だよな?」
「……だと思う。ただ、新種というよりこれは……」
そんな話し合いを許さんとばかりにそのモンスターは向ってくる。
「来るぞ!」
「おう!」
突進してくるそれを左右に跳んで避ける。
「なんだ?」
かなりのスピードで迫られても問題ないようにある程度余裕を持ったしたつもりだったが拍子抜けだった。ずいぶん走りにくそうに体幹はブレブレで四肢をバタバタさせて勢いを感じない突進をあっさりと避ける。
「まあとりあえず、」
シュンッ!! ザッ!!
一人が太刀を振るい後ろから斬りつける。
ガガウッという鳴き声を発しているところからダメージは普通に通っているようだ。
ガチャ ダダダダダダダダン
さらに続けてもう一人が2種類の片手機関銃で追撃をした。中距離攻撃と近距離攻撃のコンビネーションによってあっさりと見慣れないモンスターは討伐することができた。
「なんだ、見た目は驚きだが別にシルバーウルフと対して強さは変わらないな。いや、むしろ動きがしょぼくなかったか?」
「ああ、走りはもちろん、飛び掛かりもかなり無理があるモーションだった」
《ドロップアイテムを確認しました》
「お、ドロップか。貰えるものはありがたくっと、お?」
「おかしいな、銀狼の牙と暴熊の毛皮(小)。両方ともシルバーウルフとどの種類のレイジベアからもドロップするアイテムだぞ」
「じゃあこいつは新種じゃないってことか?」
「いや、それは分からん。獲得アイテムが共通しているモンスターもいることだし」
「ま、これもギルドに戻って聞くか」
そして、再び歩き出す。
「それにしても大分暗くなっちまったな、急ぐか」
「ああ」
そう言って走り出そうとしたところ、向こうから二つの人影が見えた。
「あら、お二人さんも冒険者? でも、こんな時間に危なくない?」
近くで確認すると色気が漂う二人の女性。人と出会ってホッとする気持ち以外の感情も思わず芽生えてしまう。
「ああ、そうなんです。ちょっと計画が狂っちゃいましてね。参ってしまいますよ」
急に紳士風の喋りになる相方を横目に見つつももう一人もその気持ちが痛いほどわかってしまう。
「大変ねぇ、近頃はモンスターもどういう訳か強いですし」
「ええ、全く!」
すると、さらに彼女らは接近してきて顔を近づけてきた。
「ねえ、ここの近くに冒険者用の宿があって私達は今日そこで泊りなの。でも客は私達しかいなくて寂しくて……」
もう一人の女性も会話に入る。
「良かったらそこの宿に泊まりませんか? もう辺りも暗い事ですし」
「ああ、確かにそれもいいですね」
「お、おい! 走れば宿場場には着くことができるって! それに京極寺さん達には明日の夕方か明後日の朝には着くって連絡を……」
「まあでもリーダーなら心が広いじゃないか? 時間が気になるなら明日急げばいいさ。それに彼女達は本当に寂しがっているし俺には不安もあるように見える」
「そうなんです! 実は私達だけだとちょっと怖くて……」
そう言いながら腕に抱き着いてきた。こうなってしまうとさっきまでの冷静さは失ってしまったようだ。それによくよく彼女の顔を見てみると最初に見えた時よりなんだかタイプのように思えてしまった。
「……、ま、まあ、そういうことなら」
「お! さすが話が分かる男だな!」
そして、4人は宿を目指し歩き始めた。
*
「リョーマお兄ちゃん起きて!!」
「……ん」
「もう駅だよ! バ・ス・駅!! 起きないとのしかかるよ~」
「カーヤさんも起きてくださーい」
「うぅ……」
「もう二人ともぉ」
「まあお二人さん昨日の討伐でかなり疲れてしまったようですからね」
「全く、これから次の駅まで歩きだっていうのに」




