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第四十二・五話 another side

 敵のシンボルを目指し、平地を脱してしばらく走っていたとき、地面が揺れるような音が上の方から聞こえた。


「間違いない、あれの攻撃だ」


「方向はあっちね。完全に京極寺さん達の跡を辿っている」


「え? それって間に合わなくない?」


「うん、このままだと俺達が追い付く前に決着がついてどっちかが倒れるかもしれない」


「彼女達が勝つならそれで全てが終わるんだけど……」


「今残っている人達は大抵の相手なら十分応戦できると思うけどあれはちょっと特殊過ぎる」


「何が起こるかわかりませんからね……」


 正直こんなボロボロの状況でもしも京極寺さん達に追いついても戦力として貢献できるかは微妙だし、そもそも追いつくことができないかもしれない。ただ、この戦いが間違いなく対抗戦の結末に直接左右するからどうしても見届けたい気持ちもある。だから、せめてあの場所に行くことができればいいんだがもう竜でひとっ飛びなんてこともできないしどうしたものかと思っていたら……


「あ、このマップの地形的にあそこからなら行けるかもしれません」


「え? これって……」


 思いっきり急な斜面。というかほぼ崖だった。たしかにここを駆け上がればそのままさっき爆発音がしたさらに先のルートに到着することができるが、


「アキラちゃん、崖の上までの浮遊ってできる?」


「いえ、最大上昇の高さは超えてしまっています」


 だよなぁ。


「なので足場を2か所作りましょう! まだこれのスキルは残っていますし」


 そう言って取り出したのは攻撃用のグローブ、ではなく杖。【森羅万象の杖】だった。なるほど、崖に足場を作って一旦そこに着地、また浮遊するってわけか。どうなるかわからないが、


「じゃあそれで行くか、っていうかもうそれ以外に京極寺さん達のところに行ける方法が無い気がしてきた」


「そうね、普通に行ったら迂回するしかないことだし」


「私も賛成! あっ、でも3人までだから……、っっと!!」


 水面ちゃんが何かに反応して攻撃した。まだ敵が潜んでいた。こんなところにいないと思っていたがどうやら持ち場からはぐれたのかどこかに行く途中だったのかわからないが水面ちゃんを狙って攻撃してきた。


「あっぶない! みんなは先に上に行って! ここが私が何とかするから!」


「でもあなた……」


「どっちみち一回で浮遊できるのは3人までだからね、後で合流しよ」


「……分かった、また上で。アキラちゃんお願い!」


「はい、でもいいんですか?」


「今はあの子を信じよう」


 本来なら一緒に戦うべきだが残念ながらその時間も迷っている時間もない。だから、今すべきことはすぐに俺達が上に行ってまた、アキラちゃんに彼女を迎えに行ってもらうこと、それだけだった。


    *


「お前ひとりで大丈夫なのか?」


「別にぃ~、さっきの攻撃も避けたじゃん」


「あれは驚いたな、一番弱そうな奴を狙ったつもりだったんだが」


ちょっと言い方にカチンときた。


「じゃあさ、今からその一番弱そうな奴にどう負けるか楽しみにしていてね」


    *


 崖に足場ができるのを見ながらそこの上に乗る、そしてもう一回浮遊。敵の位置が分かった。平面表示されるだけだから互いがどれくらいの高さにいるのかはわからないがこのまま上に上がったらすぐ近くに出ることになる。そうなるとちょっと不安だったから、


「ねえ、アキラちゃん、確か蹴り技もできたよね?」


「はい、できますけど……」


「じゃあさ、……」


「えっ? ちょっと危ないですよ?」


「まあなんとかするよ、このまま上に出て攻撃する前に攻撃されて出オチなんてことになったら嫌だし」


「じゃあリョーマのあとに私もお願いできる?」


 上の方からさらに音が聞こえる。いよいよ危ないかもしれないってことが伝わってきたのか、


「分かりました。それでいきましょう。そのあと水面ちゃんを迎えに行きますね」


「ありがとう、何から何まで頼んでごめんね」


「いえ、ではいきますよ!」


「うん、お願い!」


 いよいよ、超急斜面の景色が終わりをつげ、崖の上にある道が目の前に見える。するとすぐ近くにあいつがいた。京極寺さんと戦っている。そしてまだ俺達に気が付いていない。このタイミングしかなかった。


 宙に浮きながらアキラちゃんの足の甲、と言っても格闘用の特別な靴の表側に乗り、そのままサッカーボールを蹴るように彼女が目いっぱい脚を振った。加減してくれたとはいえ物理攻撃の一種、俺もダメージを喰らうが今は攻撃が最優先だ。


 目標はあのでかい奴。敵のリーダーだ。初速も方向も完璧だった。


「はあ!!!」


 そのまま斬りかかり、すぐに逸れる。続けて花耶も同じように急接近して斬撃を当て、炎が吹き上がった。


「てめぇら……、どこから……」


 さてと、両陣営残りわずか。例え倒れようともなりふり構わずやるしかないな。



 *



「あ、来た来た」


「あれ、もう倒したんですか?」


「うん、相手も一人しかいなかったし、1対1なら問題ないよ。それよりも私達も急ごう! さっき凄い音がしたよね?」


「はい、もうすでに二人は攻撃を仕掛けています」


「リーダー達の班ってどれくらい残っていたか分かる?」


「ちょっと見ただけなので正確なことは分からないですがリョーマさん達合わせて今上にいるのは3人でしょうか」


「えっ!? それってほぼ全員やられたってこと!?」


「いえ、もしかしたらやられた人もいるかもしれませんが他の人を逃して相手をしていたって場合も」


「あのでかい人相手に!? さっき同じようなことしたけど相手が……、うん、わかった、じゃあなおさら私達も加勢しないとだね」


「そうですね、この足場が最後です、あ、それと……」


「ん?」


「蹴って接近とかってしますか?」


「……」「……」


(なんのことかわからないけれど)


「ん、いや、遠慮しておく」

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