第三十六話 樹海を抜け出せ
「そっちにいったよ!」
「わかった!」
後続への連絡を終えてさらに樹海の先に進む。
最初に入った時のように辺りをスキルの続く限り焼き払うようにして進んでいった。
そんなことをしていると隠れている敵が急に出てきたり対抗して攻撃をしてくる。
不意打ちで多少ダメージは喰らってしまうが基本的に死角を補うように互いに守り、反撃するようにしている。
焼き払うと言ってもあたりかまわず炎に包むのではなくてあえて攻撃を抑えている箇所も作りながら進んでいる。
そういったところを穴だと思って通ろうとする敵に特に注意すれば問題は無かった。
「リーダー、到着しました。」
すると後続班のメンバーの一人が俺達に追いついた。
かなり早い。おそらくスピード特化かつ連絡担当の人なんだろう。
連絡用の弾を上げてすぐに来たと思われる。
「あら、早いわね。さすが。敵はいた?」
「いいえ。おそらくここまでの敵はリーダー達が全て倒したのだと思われます。」
「わかりました。せっかく来てくれたばかりで申し訳ないんだけれども伝言を頼んでいいかしら。」
「はい。」
「私達は今樹海の中央を進んでいるんだけれども倒し漏らした敵がいるかもしれないわ。もしも、それらが樹海の端、つまり私達の両側に沿って逆方向に進まれて挟み撃ちにされたら危険なの。だからあなた達はこれから二手に分かれて進行方向の左右から殲滅をお願いします。」
「分かりました、では!」
言伝を聞き、またすぐに後ろ方向に向かって器用に木々を足場にして地面を進むよりも早く駆け抜けていった。
「じゃあそろそろ俺達がまた先行する。」
「ええ、お願い。」
ただ、いつ遠くから狙撃されるかはわからない。
木があるからって射線が全く無くなるわけではない。
おまけにこんな派手に攻撃しながら進んでいるんだから敵には位置がバレバレだろう。
そこを狙撃されたらまずい。
逆にそっちに注意を向けさえすれば他の味方の攻撃には対処しにくくなる。
だから魔法・射撃ではなく近接戦闘向けの人員はここから再び離れてそういった遠くから狙ってくるかもしれない敵をしらみつぶしに見つけていく。
樹海の中央突破という一見無茶な作戦をしているが敵の勝ち筋、逆転の可能性をなるべく減らしながら進もうとするのは班全員が賛成だった。
それにさっきから一人、また一人と倒していることを考えると潜伏している敵を倒せば人数的にも有利になる。
なので3人で一つのグループ、それを3つ作って先行した。
その一つは俺と花耶とアキラちゃんの三人組だ。
水面ちゃんは今回も別行動、というかリーダー達と一緒にいてもらわないと困る。
彼女の探知武器は相手の攻撃・動き予測がメインの使い道だが他にもプレイヤーがデフォで持っている索敵機能よりも1.5倍の半径範囲で索敵も可能だ。おまけにズーム機能も一般的な物より高倍率に設定できる。
要するに高度なレーダーなんだ。さらに魔法も優れている。
新生一班の大部分の人数が進行する際には攻守ともに要となるプレイヤーの一人なので水面ちゃんには少し寂しそうな顔をさせてしまったが納得してくれた。
「じゃあ私達は右斜め前ね。」
それぞれのグループが進む方向を決め、散っていく。
障害物の影に隠れながらでもさっきよりも素早く移動する。
ピシンッ!
「あっぶなっ!!」
案の定、狙撃を喰らいそうになった。やっぱり潜んでいた。
ギリギリ木の幹に当たったから良かったものの迂闊に進んでいたら頭を撃たれていた。
「あっちの方向だな!」
「ええ。」
位置がばれた敵が再び射出してくるが来る方向が分かっていれば問題ない。
「花耶、頼む!」
「分かった。」
ここから先は双剣しか使わないから再び水の腕輪を付けていた。
俺が発生させた水を彼女が瞬時に爆炎に包み込む。
湿度が異様に高い熱風を感じたところであたりを冷却。
目くらましには十分な霧だった。
(そこか!)
「うっ!!」
位置を確認している余裕なんて与えない。
アキラちゃんの浮遊で思いっきり投げてもらってそのまま敵の背後を取って斬り払う。浮遊はこの空間ではまさに空を飛ぶ感じがした。
続けて花耶も斬りつける。
俺が一人だ戦っていた時よりもずっと早く敵を離脱させることができた。
「まだいるわ!!」
「任せろ!」
スナイパーの近くには必ず他の敵がいると思っていい。
大抵二人一組で行動するものだから。
だからもう一人が俺達の後ろにいるアキラちゃんを狙おうとしたがすでに斬撃を飛ばしていた。
少し足止めできれば十分。
そして、
「はあ!!」
斬った個所が炎に包まれる。
トドメは花耶が刺した。
影に隠れながらさらに奥に進む。今回の対抗戦が始まってから一番地味だが繊細さが必要になる行動だった。
あれから狙撃してくる相手はいないが他の近接戦闘の敵は出てきた。
だが、敵陣地に近づくほど単独行動で待ち伏せしているようで3人がかりなら問題はない。
ほぼ無傷で確実に倒す。
「ちょっと待った!」
(?)
「え・・・?」
「シッ・・・」
花耶が聞き耳を立てる。
ガヤガヤした音が大きくなる。
多いな。
京極寺さん達じゃない。彼女達の方向は別だ。
俺達が進んだ向きも予定通り。
じゃあまだこれだけ敵が・・・
3人でアイコンタクトを取る。
さっきと同じように濃霧を発生させ、3人で距離を縮め、索敵範囲に入ったと思ったらアキラちゃんに飛ばしてもらう。
ってあれ??
このマークは・・・
「なんだ!?」
「嘘!?」
「敵?どこから?」
「落ち着け、シールド・・・」
まだ霧の中にいる時に叫ぶ。
「すみません!ストップ、ストォォップ!」
声を上げて浮遊が中断された。
直前に確認した索敵情報に映っていたのは相手のギルドマークじゃない、味方だった。
霧が薄くなるところまで出て花耶の姿も確認できた。
剣には多少の焔がともっているが彼女もどういうことか理解していた。
「えーっと、すみません、僕達は一班のメンバーです。」
「あっ!なんだ!脅かさないでよ~」
「ごめんなさい、さっきまで潜伏していた敵とずっと戦っていて・・・」
「まあなんだ、味方に合流できてよかったよ。というか君達だけ?リーダーは・・・」
「リーダーならあっちです。僕達は3人組の斥候として先行していました。」
どうやら右端から進んでいた後続班が追い付いたらしい。
「僕達も前から来た敵を倒していたからちょっとびっくりしたよ。でも君達と合流したということは・・・」
「ええ。もう後ろに回った敵はいないでしょう。」
「じゃあとりあえずリーダーに報告だな。リーダーの班のメンバーと合流したことを伝えてくれ。綾瀬君、頼んだ。」
「はい!」
さっきの凄いスピードで連絡してくれた人だ。
再びリーダーの下へ駆けていった。
「私達も2人やられてしまっての。良かったら彼が戻ってくるまで一緒に進みませんか?ね、副班長?」
「そうだな?とりあえず綾瀬君が戻ってくるまでは一緒に行動したほうが心強いんだが、それでいいかな。」
二人と顔を合わせる。
特に拒否する様子も理由も無かったので一緒に同行することにした。
すると、
(敵!?しかも二人!)
両方ともランチャー武器を構えている。
まだそんな物を持ち出してくる敵がいたのか・・・
ちょうど障害物となるものが無かった。
狙われるとまずい。
すぐに回避の体勢に入る。
(え??)
避ける素振りを見せない。
これは直接当たらなくても爆風でダメージを喰らってしまう。
だから急いで狙われた地点を離れなくてはならないんだが一緒にいる味方は避けるのではない。
シールドを展開していた。
樹海に入る前に見せた武器由来のシールドだ。
この人達も持っていたのか。
そのシールドをすでに放たれた弾頭に当てるように綺麗に操作した。
爆風はこっちまで届いても威力は無い。
そして、すかさず射撃、そしてもうすでに敵に向かって接近している味方がいた。
あっという間にランチャーを持っていた敵を倒した。
アキラちゃんがあっけにとらわれていた。
花耶も驚いているようだ。
こっちはこっちで10人以上でチームワークが取れている。
京極寺さんが後続を任せた理由が分かった気がする。
「凄い連携ですね。」
「ああ、なんてことはないさ。それより怪我は無かった?」
「はい、おかげさまで。」
「副班長戻りました!!」
「おう!どうだった?」
「左側から進んだ四班も一班の斥候グループと合流したみたいです。なのでとりあえず左右に進んだ一班は戻ってくるようにとのことでした。」
「じゃあ俺達も戻るか。」
「そうね。」
「あの、短い間ですがお世話になりました。」
「いや、こちらこそ。じゃあまたその内リーダー達とは合流すると思うからよろしく。」
「はい!よろしくお願いします!!」
京極寺さんが進んでいる方向めがけて俺達は進路を変える。
「あ、危ない!!」
後ろから声がした。
ああ、わかっている。
すぐ横から敵が迫っていた。
ナイフ持ちの敵だった。
状態異常効果付きのナイフだな・・・
体を横にひねって剣で攻撃を受ける。
体勢を崩して転びそうになったがアキラちゃんが絶妙なタイミングで浮かせてくれた。
そして、そのまま一旦距離を取ろうとする敵を双剣から出た衝撃が襲う。
花耶が続けて斬る。
間髪入れずに再び斬撃を飛ばして離脱させた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだ、向こうの連携も大したものじゃないか。」
射撃で援護しかけたが彼らの動きを見て取りやめたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、京極寺さん達と再び合流した。
魔法のスキルを温存しておくためにもう焼き払いは終わっていた。
楕円状に広がっている樹海もゴールに近づくにつれて幅が狭まるので敵を見つけたら普通に倒すだけで良かった。
先ほど行動をわずかに共にした人達が目視できるようになった。
反対方向からもメンバーが合流しつつある。
「皆さん、これから樹海を抜けます。接敵する可能性があるのでこれからはまた十分注意してください。」
ここを抜けたら敵陣にかなり近い場所までくる。
というか今すぐにでも敵がこの木々の中に入り込んでいてもおかしくはない、そう当初の俺達のように。
そんなことを思っていたら、
「放てぇ!!」
「シールド展開!!影に隠れて!!」
咄嗟に指示が出される。
樹海の外から様々な砲撃・射撃が飛んできた。
下手に何かよからぬ事を思うんじゃないな。
京極寺さんの指示とともにすぐに起伏となっている場所、地面が壁になる位置に隠れた。
一部の人は一斉射撃でダメージを負ってしまうのを横目に見た。
離脱者がいるかどうかは今は確認できない。
ただ、射撃が終わってからが本番だ。
おそらく白兵戦目的の敵が流れ込んでくる。
ツンツン
(?)
班全員に無言の合図が伝播される。
どうやら隙を見て右後ろ側に走って樹海を出ろとのことだ。
射撃の向きからして正面に敵が大勢配備されているのは予想できる。
だから予定とは違う位置から樹海を切り抜ける。
これを読まれて待ち構えられている可能性もあるがその時はその時だ。
念のため少しだけ細工をしておこう。
目の前に薄く、広く水を出現させ、凍らせておく。
もともと地面は湿りがちだったので氷の膜はかなり広い範囲に張ることができた。
段々と攻撃の音が静まってきた。
そして、沈黙。
(今だ!!)
走り出した。
それと同時に敵が樹海に流れ込んでくるのが分かった。




