第三十一話 強大なるファランクス
「全弾着弾しました!」
「次弾装填します!・・・放て!!」
爆音や金属の軽い反発音が鳴り響く。
「多少はダメージを受けているみたいだけどこれじゃあいつまでかかるかわからないわね。」
「となるとやっぱり接近戦かな。」
「そうみたいね。」
様子見をしてみた結果、結論に至る。
「早く動ける接近タイプのメンバー及び4班、5班の射撃メンバー以外は退避!本陣で京極寺徹獅・須加聖慈に合流後、作戦内容を聴くように!」
「リーダーは?」
「事前に大まかな作戦はお兄さん達に伝えてあるわ。だから大丈夫。私はここに残るわ。‟アレ”を止めないとどっちみち負けちゃうでしょ。」
そう、アレを止めなければならないのだ。
四足歩行の長めの節足動物のような脚を持ち、上部分は人型、重火器を背中や腹部に携え、一般的なプレイヤーが持つ剣タイプの武器の三倍はあろうかという長さのブレードが人間の手に当たる部分と一体化されている。
高さは10mほどの機械、いや、ロボットだ。
それが3体もいる。
これによって俺達がここに到着した時には有利になっていた戦況が一気に変わった。
突然のことに多くの味方がやられていった。相手のギルドのメンバーも一部巻き込みながら。
ーーーーーーー少し前、敵のギルド幹部の会話ーーーーーーー
「マル2も敗北、おまけにAB地点はどんどん押し返されている・・・」
「ボス、このままじゃ・・・」
「【ファランクス】を使う。」
「えっ!?アレをですか、でもまだ味方は撤退していなくて・・・」
「どっちみちこのままじゃぁやられちまう。それにあいつらをうちに引き入れた理由の一つがこれだ。今使わなくてどこで使う?」
確かにそうだ。
でもできることならあまり使いたくなかった。
強力な力を持っているが途中で作戦を変更して使うにはあまりにもリスクが大きい。
それほどまでに自分達は追いつめられているのか。
「っ、わかりました。‟部品武器”を持っている者は集合、そしてAB地点の同じく部品部気持ちと合流し、ファランクスを可能な限り組み立てよ!!」
敵の通達がなされた。
ーーーーー同時刻、池の周辺に辿り着いた一班含めた合同班ーーーーー
俺達が加勢する前からこっちは均衡どころかやや有利な状況だった。
相手と自分達のギルドの平均的な練度と戦闘力は向こうの方が上だがどうやら人員を京極寺さんを倒すために割いていたらしい。
一方で彼女のギルドは戦闘力が高めの人達を池の周辺に配置していた。
そっちで戦闘を激化させて、その間に彼女達が敵の本陣を目指す。
それを止めるために敵が彼女達の方に集まってきて、戦力が薄くなった池周辺のメンバーも敵を突破する挟撃作戦が本来の戦略だった。
まあその作戦も失敗だったが結果的にギルド間の戦力を覆す状況になりつつあった。
池で戦っていたメンバーは最初は敵のコンビネーションにやられはしたがどうやらその後に盛り返していたようだった。
一班と他の残った班が合流・到着してさらに有利になった。
敵の増援も出てきたが問題は無かった。
互いに離脱者はいるがその人数は敵の方が上だった。
このままここも制圧できる。
そうすれば逆方向から進軍しているメンバーや本陣付近に残って指揮を執っている徹獅さんも動きやすくなるだろう。
俺達はまずは後方にいる敵を倒しながら徐々に前に進もうとしていた。
と、その時・・・
バァァァァァン
ダダダダ
ドンドンドン
ギーーーーン
爆炎と轟音、ブレードが振り回されるような、でもそれにしては大きすぎる音が鳴る。
奥に見えるのは巨大な・・・モンスター!?
それが3体も!?
アークアナイラレーターと同じような奴か・・・
いや、でも複数なんて。
それになんでいるなら最初から使わないんだ?
混乱はするが一方で思考は駆け巡る。
「まさか・・・あれって、【合体兵器】じゃない!!」
「え?それって大砲とかと同じような奴?」
「ええ、そうよ。複数の武器を組み立てるように合体させて一つの大きな戦力にする武器、というか兵器ね。」
「でもあんなの知らない、確か最大ので戦車・自走砲のはずだが・・・」
「おそらく・・・」
「【独自武器】が関わってるね。」
「水面ちゃん?」
「あら、あなた知っているの?」
「何となく、予想ですけど。接合部にあるあの装甲がキモみたいです。」
ズームにしながら確認している。
京極寺さんに向かって言っているからかいつもとは違った言い方だった。
「合体数は20くらいでしょうか。土台は戦車の改良、上半身らしきのは機動鎧かな、それを複数、あとは重火器や刀を付け合わせまくったまさに武器のキメラみたい。」
合体数が20!?
ってことは20人分の武器で出来上がっているのか・・・
「彼女、佐伯さんの言った通りよ。あれはオリジナルの装甲武器を結合部、媒介にして複数の武器を一つの破壊兵器として運用した結果のもの。」
「なんで知っているの?」
「私達のギルドにもいるの、いや、いたの。そういったメンバーが。技術班のトップの人達よ。本当ならここの地点にいるはずだけど見当たらない。やられたかと思ったけど離脱一覧にはいなかった。」
「ってことは・・・」
「えぇ、その人も裏切ったってこと。」
続けて、
「あの装甲武器はこれから私達のギルドにとって大きな力になるから期待していたんだけどね、どうやら彼らの欲求を叶えるだけの武器素材や財力が無かったみたい・・・、それに一朝一夕であの土壇場であの組み立ては不可能でしょう。だから前々から繋がっていたんだわ。」
「そんなことって・・・」
ここにきての裏切りの発覚は痛手だ、それに京極寺さんの精神が少し心配だが、
「でも過ぎたことはしょうがないわ。私が彼らの求める事に応えることができなかったのは事実だから。今はアレを倒すことが先決よ。」
どうやら杞憂だったらしい。
「撤退信号をお願い。」
「はい!!」
近くで信号弾が放たれた。
前方で交戦している味方を後退させるようだ。
バシィィィィン、パシッ
花耶がスナイパーライフルを放つがはじかれる。
「はあ、どうやら魔法攻撃にはかなりの耐性があるみたい。」
「じゃあ魔法は不可能か。竜を出すか・・・」
「待って、それは危険よ。」
花耶が制止する。
「あの竜って確かに向こうのよりも大きいけれども流石に3体相手だときついわ。今までの人間相手みたいに尻尾でなぎ倒せる重さじゃないと思うし。」
確かにそうだな。精密な操作ができれば爪とかで有効打を与えることができると思うがまだそんなことはできない。
「・・・となると生身で戦うか遠くからの射撃?」
「多分。」
あまり自身が無さげに返事をした。
無理もない。こんなのと戦うことなんて想定していなかったからだ。
「あの、お兄ちゃん?」
「ん?」
「おそらくね、あのロボットの弱点って結合装甲の部分だよ。」
「その通りよ。あくまで組み立てただけ、でも結合装甲、というよりは高度なジョイントね。それによって動きが複雑に伝わるようになっているの。」
「じゃあ、それを破壊していけば、バラバラになるってこと?」
「そうね。それに弱点はそれだけじゃない。組み立てに関わっている人達のメインの武器は合成武器の元で固定されているの。だからそういった人達を狙うのもいいんだけど、それらしき人はさらに奥ね。」
「そうか、じゃあ叩くのはアレ自体か。」
「ええ、ロボを壊せばその武器を提供・操作していた人も戦力が大幅ダウンするわ。それが向こうにとってのリスクよ。それに今回の投入は敵にとっても緊急の事だったみたい。その証拠に私達のメンバーも離脱者は出ているけれども相手も被害を被っているわ。」
「撤退開始しました!!」
「分かったわ。援護射撃、用意!!放て!!」
後方にいた射撃部隊が3体のロボットをめがけて攻撃する。
「全弾着弾しました!」
魔法弾は相変わらずはじかれるが遠くまで届く爆裂弾や大砲系は有効打になっているようだ。
「次弾装填します!・・・放て!!」
まあそれも正確に例の装甲に当たっているわけではないから敵の攻撃を遅らせる程度の威力だった。
でも撤退支援くらいにはなる。味方はどんどん撤退する。
向こうは追いかけようとしてくる敵もいるがそれも最初だけ。
味方のあのでかいのに巻き込まれたり射撃の餌食になることが分かってからは迂闊に撤退する人を追跡できない。
「多少はダメージを受けているみたいだけどこれじゃあいつまでかかるかわからないわね。」
「じゃあやっぱり接近戦かな。」
「そうみたいね。」
「あれが近づいてきたら接近戦に持ち込みます。素早く動けて物理攻撃が可能なメンバー、射撃班以外は撤退と伝えて。」
「分かりました。」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、アキラちゃん、私も相性が悪いみたいだから撤退するね。どうか無事でね。」
「ああ分かった。気を付けてね。また後で会おう。」
「うん!」
なるほど。
なんてことはない。
やることは単純だ。
あのロボットを倒す。そして、近くにいる敵も離脱させる。ただ、それだけだった。
そろそろ向こうの射撃もこっちに届くくらいだな。
味方の前衛部隊は俺達を合わせて30人ほど、10人であのロボットを1体か。
「攻撃を避けて近づいて弱点を破壊、戦い方はシンプルでいいじゃない?」
花耶がすでにテンペストに武器を持ち換えていた。
「だな、ゴツイ兵器だらけだけど大型モンスター相手と変わらない。」
正直人間相手よりもこういった敵の方がやりやすい。
「そろそろね、では行きます!!」
京極寺さんの号令とともに俺達は駆け出した。




