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第三十・五話 次の作戦は・・・

頭の奥とこめかみがジンジンする。

高スピードでの姿勢制御、射撃の足場の為のホバリング飛行はかなりの神経を費やした。


思わぬ襲撃もあったし、そもそもこの戦いが始まってから落ち着く暇が無かった。


だからこうして普通に飛行して座っている時間がちょっとした安らぎになっていた。


戦争なんて大げさだと思っていたがそんなことはなかった。

勝つためにはあらゆる手段を講じる相手のやり方に疑問を感じたがそれもまた受け入れて、いや、受け入れるんじゃない、そういうこともあるのだと想定しておかなければならない。

じゃないとさっきみたいに・・・


そんなことを考えていると水面ちゃんが背中にもたれかかってきた。

「ちょっと離れなさいよ!」


「いいじゃん。今はVRモードなんだし。それかお姉ちゃんもやってみる?」


「わっ、私はいいわよ・・・」



「それにしても「ド外道だ!!!」だって~。あんな感じで叫ぶこともあるんだねぇ。」

顔は見えていないがニマニマしている表情が容易に目に浮かぶ。


「うっ・・・」


そうなんだ。

あれはもうすでに自分でもちょっとした黒歴史になりつつある。

どうしてもあの時にそう言い返したかったが一歩下がって振り返ると謎の恥ずかしさに包まれてしまう。

敵だけならまだしもあの時は花耶も水面ちゃんもいたのに。


羞恥以外にもああいった場面で感情をコントロールできないと、特にこういった戦闘では敗北につながってしまうと思う。

怒りを持つことはしょうがない。

ただ、どんなことをされてもカチンと来ることを言われても根本的に冷静さは保たなければならない。

あの時は勝てたがそうしないと肝心な時に判断が鈍る。


「まあ私も同じようなことを思っていたからリョーマが代わりに声に出してくれたようでスッキリしたわ。」


「あ、ああ。そうか、それは良かったわ。はは・・・」

彼女のフォローがありがたいような逆に気を遣わせてしまって申し訳ないような複雑な気分になってしまう。

あー、かなり参ってるわ。

今回の対戦は体力よりも精神的に来るなぁ。初めてだからしょうがないかもしれないが本当に慣れないし多分これからも慣れることはないのだろう。


モンスター相手なら湧き上がらない感情が人間相手なら出てきてしまう、これがチーム対抗戦か。


「今までのどんなモンスターよりもはるかに苦手だな。」

思わず弱音と本音が出る。


「それは私も同じ。この戦いもできるだけ早く終わらせたい。」


「でも負けて終わるのは嫌。」

水面ちゃんもさっきとは別人のように真面目なテンションでそう言った。


「本当にそうだね。」


俺達はこの後、再び味方防衛線付近で一班と合流することになっていた。



下の方、岩場の間の道をかいくぐりながら進軍する味方の班が見えた。

一部の人はこっちに向かって手を振っていた。

向こうから見えるかわからないが手を振り返す。


防衛線を制圧したことが伝わったんだろう。

再度向こうの守りを固められる前に進んで攻め入るつもりみたいだ。

あそこを攻めの拠点にすれば大分戦いが有利になる。


ただ、全体の状況は分からないからどちらにせよ京極寺さんに直接形勢とこれからの作戦を訊きたい。




「あっ!戻ってきましたよ。」

「本当に竜に乗っているんですね、信じられない・・・」

「あの人達が敵の防衛線を制覇したのか。」




出迎えの人が何人かいた。

その中には京極寺さんも。


着陸は慣れたのか大分しやすくなった。


「皆さんお帰りなさい!」

アキラちゃんも無事戻って来れたようだった。


「ただいま。良かった、無事だったんだね。」


「3人ともお疲れ様。おかげで序盤の不利が帳消し、いえ、実質逆転よ。本当にどうお礼を言っていいかわからないくらい。」


「いやぁお礼なんて。そもそも俺が言い出したことだし、それに京極寺さん達の砲撃がないと成功しなかったわけだし。」


「あら、そう。そう言ってくれると私もうれしいわ。」


今までの緊張感が少し消えたのかようやくフフフッって笑うような表情をした。



「ところであなた達。休憩とかは大丈夫?」


「ん?別に問題ないよ。今こうしているのも休憩みたいなもんだし。」

「それに別に体は疲れていないわ。」


「ああ、そういうことじゃなくて、実際の体の方の話よ。食事とかそういった部分。」


なるほど。そういえば忘れかけていたが現実の体の方はまだ一度も起き上がっていないんだった。この戦いが始まってから4時間近く経つな。

でもお腹も特に減っていないし、尿意とかもない。


※現時点でのVRモードではかつてとは違ってナノマシンが作用して体の代謝性能を生命活動に影響が無い範囲で低下させています。身体は覚醒状態よりも休眠中に近い状態です。


「そっちも問題ないよ。」

「私も。」

「私も大丈夫かなぁ。お腹も減っていないし。」


「そう、なら大丈夫そうね。でもまた何かあったら遠慮なく言ってね。さてと…」


雰囲気が少し変わる。


「じゃあこれから私達がやることを説明するわ。次の移動場所はここよ。」


え!?

てっきり先ほど進んだ人達と後を追っていくのかと思った。

だからこの作戦内容は驚きだった。

彼女が指さしたのは池の周辺。

※TIPS9参照


「状況が有利になったとはいえ、残り人数は相手の方がまだ上。もしもこっちが防御に回って相手もそれを理解して守りに入られたら持久戦になる。そうしたらTODで負けね。だから本来ならこの機会に相手の陣地に攻め入るべきだわ。」


その通りだ。

今は攻めるのにまたとないタイミングだった。


「ただ、この池周辺にはかなりの人数が動員されているの。ここを仮に突破したからと言ってもその先にはまた別の防衛線がある。だからここを早々に撤退する手伝いをしたいの。」


そういうことか。

確かにここの戦場は拮抗している。

だが言い方を変えれば今のままだとやみくもに消耗戦をしていると言ってもいい。

仮に均衡が崩れてこっちが有利になったところで防衛線を突破できる保証はないし逆にこっちがやられてしまったらこちらの守りに迫ってくる。


だから、援軍に向かって撤退の助けをしつつ、あわよくば敵の数を減らしたいようだ。

先ほど進軍した人達とは別にすでに池に向かっている班もいるらしい。


今回もまとめて吹き飛ばすことができたら楽なんだがもう使用回数が底をついた。

そのことは先の作戦の時に伝えたから彼女も知っている。


一応‟切り札”もあるが白兵戦で済むならその方がいい。


「ということで私達がこれからやることはまずは池周辺に移動すること、そして味方の撤退の援護と追ってくる敵がいたら倒すこと、以上よ!」

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