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第三十話 撤退前の強襲

(一人逃がしたか・・・)


最初に辛酸を舐めさせられた元凶、敵の防衛線は壊滅した。

逃げた敵もいたがもうここは機能しないだろう。


あとはこのルートに向かって自分達の主力の攻撃班が攻めれば大丈夫だ。


自分でも少しやつれた顔をしているのは分かっているがとりあえず、


「じゃあ一旦戻ろうか。」


そう、俺達の電撃作戦はここで終了だ。

この後は他の班に合流する。

流石にこのまま敵の本丸に乗り込むぞー!!なんて発想はないし、元々その予定で作戦を組んだ。


「そうだね。うっぷ・・・私も正直きついし・・・」

かなり無理な飛行をしたから乗っていた側の負担を戦闘終了と同時に思い出したようになる。


そうやって帰ろうとしたとき、

「危ない!!!」

花耶が叫んだ。


その声が無かったら危なかっただろう。

咄嗟に迫りくるその体、いや‟物体”から避けることが出来た。


「ああん?おかしいなぁ。お前達だけか?せっかく俺の本領発揮だと思っていたんだが。」


ーーーーーーー敵ギルドの中枢にてーーーーーーーーー

「一体どういうわけだ!!敵の守りを崩せないどころかこっちの防衛線が突破だぁ?」

近くにある岩を握った拳で叩きながらそう言うのは向こうのボス。


「いえ、でもまだ人数的には俺達の方がずっと有利です。」


「あんたねぇ、こうなったら人数どうこうの問題じゃないのよ。敵の守りに対して攻め入るのにどれだけの人員が必要だと思っているの?それをこっちは失敗、向こうは成功させたのよ。

それで向こうは何人で攻めてきたの?」


対抗戦では通信機能が制限される。

なので戦況の情報伝達は移動力と速度に優れた人物が担う場合が多い。

先の防衛線で取り逃がした人物もその一人だった。


「あの、よく見えなかったんですがおそらく・・・5人より少ないかと・・・」


「はあ?」

「おいおいおいどうなってんだ?」

「だってあそこに配置されているのは確か43人だろ?それをそんな少人数で突破できるわけ・・・」


「あの・・・煙幕が晴れた瞬間、出てきたんです。竜が・・・」


この情報から察する人が出てくる。


「噂は本当だったらしいな。」

「どういうわけか敵には相当な隠し玉があったようだ。」



「んなことはどうだっていい!!」

会話の流れを断ち切る一声。


「問題はそれを無力化できるかどうかだ。噂によると規格外の攻撃を使ってくるようじゃねぇか。」


「はい。それもまとめて大勢がやられるほどの。」


「だが、そんなにすげぇ攻撃ができて飛行ができるのならなんでマップ中を飛び回って片っ端から俺達を攻撃しねぇんだ。」


「それは・・・」


「そんな凄い竜だ。しかも事前に情報は無かった。なにかしらの制限があるに違いねぇ。」


そうだ、狼狽えることない、そんな空気になりかけた時、


「だが、被害が尋常じゃねぇことも事実だ。早く対処する必要があることには変わりねぇ。」


「あの、それについてですがどうやらマル2が先の防衛線に向かっているようです。」


「あいつらが?」

マル2=第二機動部隊。

どの隊に組み込むよりも自由に行動させた方が戦果が期待できる相手のギルドのチーム。

戦闘時は作戦外から行動して敵を撃破していく役割を与えられている。


「なるほどなぁ。あいつらは確かに使いにくい所があるが今回のような敵にはもってこいかもしれないな。」


ニヤッっと不敵な笑みがこぼれる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


大柄な男。

だがそれ以上に注目せざるを得ないのはグローブだった。

グローブと言ってもアキラちゃんが装備しているみたいなものじゃない。

肘の先から装着している巨大なゴツイ筒だ。まるで太い土管をはめ込んでいるような。


それが俺達の前に現れた。


「全く、デカブツがいるって聞いて飛んで来たら普通の人間が3人じゃねぇか。おまけに一人は中学生ぐらいかぁ?だが・・・」


構えに入った。


「お前らがどうやらここをこんな状況にしたのは分かる。どんなからくりがあるかわからねぇが俺がやることは一つだ。」


そういった瞬間に猛スピードでこっちに迫って拳を打ち付けてくる。


回避するのが精いっぱいだ。外れた拳は地面を砕き、抉った。


(おいおい、なんつー馬鹿力だよ!?いや、それよりもスピードがおかしい)


「なかなかすばしっこいな。だがいつまで続くかな?」


あの装備をしてこんなに早く動けるわけがない。

どういうことだ!?


避けながらふとあたりを確認したらもう一人いた。

敵だ。

だがどういうことか攻撃をしてこない。


(そうか!!)


双剣を構えてその人物を狙う。

飛ぶ斬撃。

3発だ。


1発目が当たる。

だが、その後の攻撃は防がれた。

瞬時にこっちの攻撃を読んだあの大柄の男のグローブによって。


キラン


(光!?まずい!!)


遠くから光を見た。

瞬間、シールドを展開する。


ガチーン


シールドに何かが当たった。

だがまずい!!

軌道をずらしたが・・・


バキン!


「ッ!!」


割れてしまった。

軌道は少しズレたが俺の太ももを霞める。


アンチマテリアルタイプのライフルかよ!?



「おいおいおい!!テメェ!!後ろにいるやつを狙うなんざずいぶん卑怯だなぁ?ここの防衛線もそうやってやったのかぁ!?」


「はあ!!」

花耶が斬りかかるがその岩石よりもずっと固いグローブに防がれてそのまま押し返される。


(卑怯?)

(こちらの主力を買収し裏切り者を作り、事前に情報を筒抜けにさせて、奇襲し、執拗にリーダーを狙い、挙句は遠くからの狙撃をしているお前らがか?)


「ーーぃわれたくねえよ・・・」


今まで溜まっていたものが溢れかえってくるようだった。

つい冷静さを失ってしまいそうになる。


「あん?」


「てめえらだけには言われたくないっつってんだよ!!ド外道が!!!」


「知ったこっちゃねぇなあ!!」


また襲い掛かってくる。

この速さ、どうやら後ろにいるあいつがバフをかけているらしい。おそらく速度と身体強化。他にも何かしらの強化。

じゃなければあの攻撃とスピードの両立はできない。


後ろを攻撃したいがこいつが防ぐ。

だから、


(お望み通りそっちから倒してやるよ)



すると後ろから雷撃が飛んできた。

俺には当たらず、向こうに確実に当てるような起動で。


「痛って!!てめえか!!」


後ろから水面ちゃんが攻撃してくれた。

それに激怒したのかすぐに攻撃目標を切り替える。


(させるかよ!!)


追いかけながらそう剣を振るい斬撃を食らわす。

攻撃態勢に入ったから防御している暇はない。

無理矢理避けようとするが2発当たる。

水面ちゃんもどうやら動きを読んだらしくうまいこと躱す。


だが、ここで安心して足を止めてはいけない。


バシンッ


近くの地面に着弾音。

狙撃されてしまうからだ。


竜を出すか?

いや、こいつはおそらく最悪な相手だ。

大きいモンスターに対して重い一撃を与えて無理矢理倒すのを得意とするのだろう。

的がでかいとそれだけで不利になる。

そもそもこのチームは後ろの奴がバフ、このでかいのが主力となって狙撃手が遠くから弱点を射ぬく三人組のチームだということが分かった。

こういう相手は大型のモンスター戦でかなり強い。


再び攻撃目標を俺に切り替えた。突進してくる。

横に避けるがラリアットのような構えで攻撃を当てようとする。

双剣で何とか防ぎつつもそのままかなり吹っ飛ばされてしまった。


着地はうまくできた。でも狙撃を回避するためにすぐに移動する。

「はあはあ・・・」


双剣は無事か。

頑丈だな。


相手はモンスターにも強いはずだがプレイヤーに対しても十分戦える戦闘力だ。


だが何とかなりそうだ。

さっきの水面ちゃんの攻撃と今までの様子からだんだんと特徴が分かってきた。

確かに素早い動きだが真っ直ぐに移動しがちなこと、あとはそのグローブを最大限生かすための攻撃方法だ。


「花耶、二人で行くよ。水面ちゃん、フォローお願い。」


「分かったわ!!」「うん!!」


花耶もおそらくこの弱点を何となくわかっているはずだ。

彼女と隣り合わせのような位置につく。


(来たか!)


再度こっちに突っ込んできた。

どうやら本当に大型のモンスターと戦うことが多いらしい。

確かにモンスター戦では火力とスピードがあれば一方的に倒すことができる。

対人でも一発当てれば問題ない火力だろう。



だが、動きがワンパターンだ。

二人で左右に飛んで避ける。

またあのラリアットのような構えに入ったが二人でしゃがむ。

もちろん、攻撃を見てからでは間に合わない。

でも事前に察知できる。

だから横に飛びながらすぐにしゃがむ体勢に入っていた。


そのスピードと姿勢じゃあ足は使えない、腕を急に下げるのも無理がある。


そして、横を通り抜けるところを狙って斬撃を入れる。

直接刃があたりさらに斬撃を飛ばす。

1回の攻撃で2度喰らっとけ。


花耶はここに到着する時にはすでにテンペストに変えていた。

だから、スキルを容赦なく叩き込む。


「てめえら!!」


覆いかぶさるように地面ごと俺達を殴ろうと連打してくる。

が、その瞬間に水面ちゃんの雷撃が飛ぶ。

腕が降りあがる時に体が空き、そこを縫うように魔法が当たる。

どうやら4属性の中で雷が一番この戦闘では扱いやすいようだ。


グローブを破壊してやろうと思ったが何発入れても破壊できる気がしない。

だから本体を狙う。

防御も多少上がっているようだが問題はない。


攻撃するためにこっちに接近した時に逆に攻撃をくらわす、さらに水面ちゃんが俺達には当たらず、でも確実に向こうに当たるように雷撃攻撃のフォローしてくれる。


「おおおい!!!!狙撃ぃぃぃぃ!!」

無茶苦茶な大声をあげた。


ーーーーーーーーーーーーーー

その声は遠くからマテリアルライフルを構えている味方にまで届くほどに。


「んなこと言ったって!お前の影に隠れているんだよ!」


ーーーーーーーーーーーーーーー


無理矢理狙撃しているようだが当然俺達には当たらない。


水面ちゃんは俺達の動きに合わせて常に動きながら杖を使う。

それに狙撃の位置は大体分かったから当たりにくい場所を選んでいた。


俺達はこのデカいのになるべく接近しながら戦っている。

さらに言うとこいつを盾にするような位置取りをして。



そして、俺一人に狙いを定めたようで両手をハンマーのように振り上げながらこっちに向かってくる。

横に逸れるような初動を見せると・・・


「そっちかあ!!」


その方向に腕の向きを変えて振ってくる。


だが回避は俺の狙っていた動きではない。

横に逸れると見せかけて一気に相手に近づき懐に飛び込んだ。


腹めがけて至近距離で連撃を喰らわす。

その武器だと自分の腰らへんに来た相手には攻撃しにくいのは分かっていた。

この機会をずっと狙っていた。


向こうは咄嗟に防御する構えに入ることができない。


さらに花耶が相手の背中に斬りかかった。

彼女も一回近づいただけで何回も攻撃を入れる。


そして、反撃される前に距離を取ってスキルを使う。


彼女を狙うために片腕が開いた。

こっちも続けて攻撃を叩き込む。


どうやら、こういった戦い方は慣れていないようだ。

どっちを攻撃すればいいのかわからなくなっていた。


そして、二人の交互の連撃の果てについには・・・


「うぉぉぉ!!お前らぁぁ!!クソォォォ!!」


倒れて消えていった。



(さてと、)


律義にも最後の最後までバフをかけようとしていた後ろの奴に間髪入れずに近づいて攻撃。

サポート専門のようだ。

こちらは速攻で離脱させた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「嘘だろ!?あいつら倒れちまったよ。俺は逃げるか・・・」

武器を抱えそそくさと逃げるために走り出したが、


バシューーン!!


「え!?」


自分を貫通する炎の魔法弾丸。


それで終わりではない。

倒れるまで射撃は繰り返される。


空を飛ぶ竜の上に乗った女性のライフルによって敵の狙撃手は射貫かれ続けた。

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