第二十七話 反撃
「っと、これで全員か。」
ここにいる最後の相手を倒す。
最初のあの光線でほとんど倒れていたから制圧はすんなり終わる。
第一班と別れてからさらに何人か離脱してしまったらしい。
ただ、京極寺兄妹と聖慈さんは無事だったようだ。
「また助けられちゃったわね。・・・ありがとう。」
(助けられた、なんて水臭いよ。)
なんてことを言いたいけれどどうもそんな雰囲気ではない。
だから、
「うん・・・なんていうか、とりあえずどこか一旦安全なところに行こう。」
まずは落ち着いて少しばかり彼女には休んでもらいたい。
別れてから今まで何があったのか想像できないがただでここまで来れたとは思えにくい。
ツンツン
「気を遣ってくれてありがとうね、ああ見えて相当無理をしていたんだ。」
徹獅さんが小声で教えてくれた。
やはりか。
「いえ。それに最初の奇襲はひと段落したでしょうし休んだほうがいいかなって思って。あと・・・」
一班ではない人達がいる。
「あの人達は・・・位置的に十二班の人達ですか。」
「そうだった。君にも教えておかないとね。」
何の事だろう。
「ここにとどまっては何だから移動しながら説明するよ。慧香、十二班の子達もうち(一班)と合流ってことでいいかな?」
「ええ。そのつもりよ。」
彼女が彼らに向かって振り返る。
「あなた達、本当に本当によく耐えてくれたわ。ありがとう。あとできればこれから一緒に行動してくださらないかしら。」
「はい!ぜひお願いします!」
「僕達、班長が急に攻撃してきてそれで敵が押し寄せて、その班長はどこかに行ってしまってもうダメかと思っていたらリーダーが駆けつけてくれて・・・」
声色からどれほど絶望的な状況だったの何となくわかる。
でも待てよ、班長って?
そのような疑問が湧いたがさらに彼は続けた。
「それにあの攻撃は・・・ リーダー達ですか?」
「いいえ、おそらくこの人の武器よ。」
俺に視線を移した。
「ええ!?」
「あれが一人の武器の攻撃なんですか?」
「うーん、俺もよくわからないけれどそうみたい。」
実際、あの竜及びこの双剣の所有者ではあるが俺もに未だに武器という実感はない。
あまりにもいろんな部分が異質だったのだ。
そもそもシークレット枠からの契約武器が元だったこと。
契約する際にガイアを最大値まで使ってコストのアイテムもランク6の【神域の花瓶】他、今まで見たことが無かったレアなものも幾つか消費したこと。
そして契約武器の結果にはランダム要素があること。
色んな偶然が重なったのは事実だろう。
それに暴走後にこのゲームはどういう訳か常に様々な部分がアップデートしている。
時にはモンスターに当てはまりプレイヤーが境地に立たされるが、一方でこういった恩恵もあるようだ。
「ところで、徹獅さんさっき言いかけたことって・・・」
「ああ、あれね。慧香、説明してもいいかな。」
「ええ、お願いするわ。」
周りを少し見回して安全を確認して、こう切り出した。
「君達にも知っておいてほしいんだけど、」
花耶、水面ちゃん、アキラちゃんも聞き入る。
「前に言っていた内偵者はいる、それも上層部にだ。」
上層部!?班長ってそういう意味か?
じゃあ普通のメンバーが知らない情報も知っている可能性がある。
それって相当まずいんじゃ・・・
「一応、今の人数の減り方を見る限り最初の脅威は去った。要するに序盤の情報による奇襲とかは終わったと見てもいい。ただ、こちらの主要メンバーの武器や戦い方もある程度流れているはずだ。」
何も言えなかった。
それがどれだけまずいってことなのかってことは十分分かる。
今もこうしてみんなと一緒に行動できていることが嘘のように思えるほどに。
「だから私達はこれから防衛線を担当する班に向かうわ。当初の予定とはかなりズレてしまうけれどももしも班長クラスの内偵者がいるのなら次に狙われるのはそこよ。」
チーム対抗戦は正方形条のマップの角付近、互いの対角線上に拠点というシンボルが設置されている。
これが壊されるとチームの残り人数に関係なく負けてしまう。
なので白兵戦を仕掛ける作戦もあるが基本的には拠点を破壊する人達、逆にこちらの拠点が破壊されないように守る人達のように役割は大きく分けられる。
俺達は前者だったが最初の奇襲でその作戦はいきなり狂った。
なのでこちらの攻撃の手が緩まった隙に逆に進行してやろう、というのが相手の魂胆だと京極寺さんは踏んだようだ。
これから向かう防衛線はその守りの最前線。
そこが突破されるとかなりの進行を許してしまう。
「それにしても厄介なのは敵の防衛線だ。」
聖慈さんが険しい顔でそう言った。
「そうね、あの位置と戦力は痛いところを突かれたわ。」
どうやら遠距離攻撃する人員が相当強いようだ。
スナイパーのような長距離攻撃可能な戦闘員も多いが迫撃砲/大砲タイプの武器が複数ある。
このことが先の攻撃で分かった。
「迫撃砲か・・・そんなマニアックな武器を持ち出してくるなんて。」
モンスターとの戦闘じゃまず使わないネタみたいな武器だと思っていたがこれを脅威に思う日が来るなんて。
「こういった広範囲のチーム戦ではそれがかなり有効なのよ、残念なことにね。あのギルドはチーム対抗戦をするための戦力もどんどん充実させているって噂があったけれどまさかこれほどとは。」
まあ冒険者同士のドンパチってのがこの対抗戦の通例というか一般的なイメージだ。
だが、向こうがやっていることはまるで軍隊みたいだった。いかに効率的に大規模対戦を攻略するかという点に重きを置いた戦法だ。
先ほどの対戦で一人一人の力は大体わかった。
中には相当の手練れもいたがそこまで多くはない。
ただ、役割分担と咄嗟のコンビネーションに優れていことは戦闘中に嫌でも実感した。
「それに例の射撃部隊はこちらの奇襲だけじゃなくて防衛線の役割も果たしているの。」
マップを表示する。
「この高台に射撃部隊がいて、攻撃圏内はここまで。平原から進んだらハチの巣だし岩場は開いた部分がちょうど射撃の集中攻撃を喰らうようになっている。さっき私達がやられたように。」
「岩場の近く、マップの端は切り立った崖になっていてそこから射撃をするのもありなんだけれど位置がばれたらこれまた集中攻撃。逃げ場はないわ。」
マップで確認すると様々な進行に対して迎撃できる位置を取って武器を用意していることが分かる。
「でも先に私達の防衛線を確認するのが大事。ここを突破されたらそもそもこの戦い自体が終わってしまうことだってありえるもの。」
「あの、リョーマさん?」
「ん?」
「さっきの防衛線ってあのドラゴンの光でまとめて吹き飛ばすことってできないんですか?」
「あぁ、それも一瞬考えたけど多分難しいよ。ロックオンをする時は一旦止まるか慣性飛行にしないと安定しない感じがしたし、あのマップでの攻撃範囲を見る限りこっちの射程よりも向こうの射程の方が長いからね。よっぽど近づくことができれば問題ないんだけど・・・」
「そうなんですか・・・」
「それに、実はもうあの攻撃はあと1回しか使えないんだ。」
「ということは使用回数は3回?」
「うん。普通の戦闘だと使用回数なんて気にしないんだけれどもこう長い戦いだとどこで使うかが重要になってくるからね。使用回数が少ないスキルは大規模対抗戦だとちょっと不利かな。」
「あ!!それなら、えっと、これどうぞ!」
「え!?これって・・・」
「さっきドロップしたんです。多分リョーマさんが使った方がいいと思うのであげます。」
「いや、もちろん凄くうれしいけれどいいの?これ結構貴重だと思うけど。」
「いいんです。私のは使用回数とかあまり気にしませんから。それに何となくあのドラゴンが今回の対戦のカギを握っていると思うので。」
「・・・じゃあありがたく貰うね。これがあるのとないのとでは戦略がかなり変わってくるよ。本当にありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。」
ドォォォォン!!
大砲の音?こっちの移動が気づかれた!?
「みんな止まって!!大丈夫、私達が狙われたんじゃないわ。この音がする方向・・・防衛線!!」
「おそらく防衛線の攻撃よ。私達のギルドも多少だけれども迫撃砲はあるの。それを高台から使っているんだわ。」
「でも、これが使われているということは・・・」
「ええ、敵が進行したんだわ。」
「これはチャンスただ。」
聖慈さんがそういった。
「俺達のいる位置からなら挟み撃ちができる。本来はここから一番近い班は十二班だが相手はまだ来ないと思っているはずだしそもそも倒れたことになっているだろう。」
「だから、ここで一気に返り討ちにするって事か。そうだね、聖慈。」
「ああ、今度はこっちが奇襲する。後ろから一気に近づいて。」
そして互いの索敵圏内に入らないように隠れながら近づいていく。
人の声も戦闘音も大きくなってくる。
敵全体が見えた。
物陰に隠れながら様子を伺う。でもモタモタしていてはダメだ。
「人数が多いな。」
「いくら後ろを取れているとはいえ、反撃されてしまうかもしれないわ。」
「じゃあ俺が先に行くよ。」
「八雲君!?」
「リョーマ、本気?」
「うん、あの光線はまだ使わないけれど、敵陣に乗り込んで攪乱する。」
「その後に続いて皆も来てほしい。」
すこし京極寺さんが考え込んだが、
「分かったわ、あなたを信じる。」
「さっきから危険な役ばかりさせてすまない、俺達もすぐに出る。」
「えぇ、お願いします。」
「あっ、アキラちゃん、俺に身体強化バフをかけてくれないかな。」
「はい、わかりました!」
体全身が動きやすくなるのが分かる。
それに加えて速度バフを自らにかける。
「じゃあ行くね。」
そう言い残し走り出す。
敵は気づいていない。
正面の進行と戦闘に集中しっぱなしだ。
今だ!!
そして、巨大な白銀の双竜が出現する。
「おい!後ろ!!」
「うわ!?」
「何だアレ??」
「ちょっと待て?これって連絡があった・・・」
もう遅い。
一瞬の事態に動けなくなった敵。
これならまだ操作に不慣れだとしても問題ない。
そうして、大きな尾を思いっきり振って目に見える敵を薙ぎ払う。これだけでも5、6人は離脱した。
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「今よ!!!」
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それと同時に後ろで構えていた味方も動き出し、攻撃に移った。
さっきまでは後手に回っていいようにやられていたが本番はここからだ。
現在の戦況
味方:633人 相手:841人
八雲龍馬の倒した人数:86人




