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第二十六話 どうやら間に合った

大勢の守るべきメンバーを失った。

入ったばかりの八雲君達が逃げ道を作ってくれた。


走りながら味方と敵の形勢を確認する。

向こうはまだ900人近く残っているがこっちは700人を切りそうだ。

開始してまだ1時間も経っていないのに目に見えて不利になってしまった。

八雲君、水鳥川さん、佐伯さん、春夏秋冬さんはまだ残ってくれている。

でもそれもいつまで持つかもわからない。

第一班は私を含めて14人。

残った4人を合わせれば18人。

最初の半分以下ね。


自分の軽率さをどうしても実感してしまい、もっとこうすればよかったなどという後悔が次から次へと湧いてくる。

今私がやることは他の班、一番近くの十二班と合流し、少しでも戦局を立て直すこと。

他も襲撃されているだろうけれどもそれでもまだ700人はいる。

だから進まなくてはならない。

それなのに足取りが重くなってしまう。


「彼らを信じるんだ。君は託された。」

「聖慈さん・・・」


「それにさ、あの子達の強さは慧香が身をもって知っているんだろう?」

「お兄さん、でも・・・」

「そんな顔していると昔みたいに水鳥川さんにきつく言われるよ。」


『あなたがそんなんで他の人は付いてくると思う?シャキッとしなさい!』


言われたことが無いのに彼女にそう言われているような幻聴が聞こえる。


『まあまあ、俺達は大丈夫だから。心配しないで。逆に俺達を心配させないでよ。』


どうして八雲君も出てくるんだろう。



でもそうね、確かに今は・・・


「慧香、前!」


兄の声にハッと現実に戻る。

敵!?


いや、あれは・・・


「あなた大丈夫?」

再び障害物が多い地形に入った。

すると向こうから同じギルドのボロボロのメンバーがやってきた。


「リーダー、ごめんなさい私達・・・」


「あなた十二班よね。どうなったの!?他の人は?」


「慧香、そんなに急いで聞いたら・・・」


「他の人はほぼ、全員撤退です。それよりも、班長が裏切って・・・」


一瞬、頭が真っ白になった。

今回の戦闘で内偵者がいることは明らかだ。

でもそれは末端、最悪な場合は中堅のメンバーだと思っていたからだ。

だから信じられなかった。

実力者や古株で形成されているはずの班長、つまりはギルドの上層部が裏切りに加担していたなんて。


「ねえ、本当?本当なの!?」


否定が欲しくて何回も訊いてしまう。

それを兄は制止しようとする。

でもどうしてもその言葉が嘘だって思いたかった。


「本当です。それにまだ裏切った人は・・・」

「ああっ!!!」

ダダダダダダン


その人が逃げてきた方向。

後ろからの攻撃をもろに喰らってしまった。


「しまった!」


到底最初に喰らった射撃距離ほどではないがそれなりに遠くからの、互いの感知射程距離(30m)外からの攻撃。

逃げ伸びてはいなかったのだ。その人には、十二班の生き残りには追手がいた。


「まだいるぞ!かかれ!」


敵は3人。


「俺が出る!君達も加勢してくれ。リーダーはその人を頼む。」


須加聖慈が追手を始末するために前に出た。

向こうはこっちの全体人数を把握していなかった。

それに彼の実力も。


「ごめんなさい、リーダー。私も一足先に離脱します。でも気を付けてください。そして、どうか勝ってください。」


そう言い残し、京極寺慧香に体を支えられたその人は離脱してしまった。


敵を倒すのはすぐだった。

須加聖慈が戻り、状況を確認した。

また一人、目の前で倒れてしまったことを。


でも彼女の雰囲気は少し変わる。


「みなさん、行きましょう。」

「ここで終わるわけにはいかないわ。最後の最後まで戦う。」

「それが唯一私にできること。皆から託されたもの。」


「そう来なくちゃね。」

(ようやくいつもの調子に戻りつつあるな)



再び駆け出した。

そして十二班の出現位置に到着する。

一班の出現場所ほどではないがここも入り組んだ岩があり、近くには急な崖のある丘、そして平原も接している多様な地形だ。


でも誰もいない。

十二班のメンバーはまだ残っている。あのリーダー含め。

それなのに誰一人として姿が見当たらない。


あの人のように一時的に逃げることができたのか、それとも・・・


嫌な予感が胸をよぎるがその瞬間、


ガキン!!

ドンッ!ドンッ!


「戦闘音!?向こうからか?」


すぐ近くから聞こえる戦いの音がする場所に急いで向かう。


そこには十二班の人達が4、5人?


対して敵はざっと30人。


このままでは時間の問題どころの話ではない。

そう思ったら考える前に駆け出していた。


「慧香!クソッ!」


自分達が行っても人数差は埋められない。

でも走り出した彼女についていかざるを得ない。


「まだいたのか?」

「いや、多いぞ!」

「こいつらと同じ隊じゃないようだな。」

「あいつ敵のトップじゃねーか!倒せば手柄だ!!」


「来てはいけません!」


「そういうわけには、ッ、いかないのっ!!」


私達も交戦する。

でも戦力差は歴然だった。

誰かの攻撃を防いでいると他から攻撃を喰らってしまう。

せっかく来たのにさらに味方が減っていく。


ああ、やっぱり無茶だったかしら・・・



ーーーービィィィィィィン


そう思った瞬間に相対していた敵が光の中に消えていった。

それだけじゃない。

ここに居る他の敵全員が。

光が当てられるというよりは光に飲み込まれると言った方が近い。

この光景はつい先ほど見たばかりだった。



そして、誰かが降ってきた。


「待たせたわね。」


「水鳥川さん・・・?」


空から彼女含め、三人が下りてきたのだ。

と、同時に敵に攻撃の狙いを定める。


そして、あの竜が地面めがけて迫ってくる。

でも着地するのではない。

巨大な影が光となってその人の両手に集まっていく。


「あの攻撃でもまだ数人残っているなぁ。」


「あぁ、八雲君・・・」


「良かった。じゃあここから形勢逆転といこうか。」


彼は双剣を構え、他の人も後に続き残った敵を蹴散らしていった。



ーーーーーー少し時は遡るーーーーーーー


凄い。

この双剣は通常攻撃しかできないが火力が双剣とは思えない。

それなのに重くもない。


しかも、


バシュッ

「うわあああぁ!」


これだ。

この感覚。

掌のこの部分に力を入れて斬撃が飛ぶイメージを脳内で作る。

最初は敵を突き放したかったから無意識にそれらしいイメージが湧いたのだろう。


この距離なら双剣の切先が届かないと踏んだ相手に容赦なく双剣から出る衝撃が襲い掛かる。



そして、ついにここにいた敵がいなくなった。

「はぁぁーー、疲れた!まあ実際の体が疲れたわけじゃないんだけどね。」


「いや、これは相当しんどいよ。お疲れ様。それに皆、残ってくれて本当にありがとう。」


「私から頼んだようなもんだから。それにまだ終わりじゃないわ。むしろこれからよ。」


「リーダー達は確か十二班の出現位置に戻るって言っていました。」


花耶がマップを展開する。

「この位置ね。そこに向かいましょう。どっちみちここで立ち止まっていると他の敵に狙われるわ。」


「そうだな。急いで向かうか。」


「リョーマお兄ちゃん!」


「ん?」


「あのドラゴンって出せる?」


「多分出せるけどどうしたの?」


「あれで飛んで行かない?ビューンって。その方が早いと思う。」


「確かにそうかもしれないけど・・・」


「飛ぶ操作って出来るもんなの?」


「そこなんだよね。」


「じゃあとりあえずやってみます?それでダメなら走ればいいだけですし。」


それもそうだな。

ダメ元でやってみるか。


サブ武器に変更。


すると双剣が光となって一つに集まり巨大になっていく。


「うわー!改めて見ると本当に大きいね。」

「まさか、このドラゴンが本当に武器なんてね。」

「いや、俺も未だに実感できない。」

「こんな武器があるんですね・・・」


1回飛ぶイメージを頭の中で作った。

よし!なんとか飛んだ。

でもちょっとフラフラだが・・・


じゃあ次はとりあえずかがむイメージ。

こう、いや、その動きじゃない。

モタモタしていると目立つ。

敵が寄ってきてしまう。


そう、そうだそのポーズ!


竜が膝を折りさらに二つの頭を地面に近づけた。


「じゃあみんなも乗ろうか。」


「えっ!?いきなり乗るの?」


「うーん、練習している暇ないし。」


「ちゃんと動せるのーーー?」


「いや、ごめん、それは保証できない。」


「あはは、いざとなれば浮遊を使いますね。ただ・・・」


「まあ・・・俺以外の三人に使ってあげて。」



そして、4人が乗り、飛び立つ。

思ったよりも難しい。

いや、そうでもない、ってことはない左右に揺れる。

頭の奥の方、特に前方と上の方が変な圧迫感というか集中せざるを得ない感じになる。


でも少しずつだが安定してきた。


「あっちよ!」


花耶が目的地を指さした。

その方向へ向かう。


徐々に速度を速める。


「あっ一班の人達がまた減り始めたよ!」

水面ちゃんが互いのギルドのステータス状況を確認した。さっきまで一緒に戦っていた人のリストが離脱扱いになっていた。


「敵が多ければさっきのあの攻撃を使う。」


メイン武器の時にかなりのSPを回復したようでブレーザーレイを再び撃つことができる。

なるほど、サブとメインで切り替えながら戦う武器のようだ。

多少ピーキーな戦い方になるがこれは面白い。


「分かったわ。ねえアキラちゃん。」


「?」


「リョーマがその攻撃を使ったのと同時に私達三人を浮遊で下におろすことってできる?」


「はい、大丈夫ですけど・・・戦地のど真ん中に降りるってことですか?」


「そうよ。」


「へー、ちょっと面白そう。」



「そういう感じで奇襲したいんだけれども、それで大丈夫?」


花耶が問いかけた。


「ああ、そうしよう。多分、向こうの状況はかなり悪い。その後すぐに俺も降りるよ。」


そんな会話をしていると・・・


「あっあそこ!」


見えた、京極寺さん達だ!


あの服の色は・・・

敵がかなり多いぞ。

だが、


攻撃射程圏内に入った。


「じゃあ皆、スキルの準備をするね。」


「ええ。」「うん!」「分かりました!」


マルチロックオン。

数、[36]。


そして、放つ。

一瞬目の前が光に覆われる。

背中から見るとこんな光景なのか。

放たれた太い光は分かれ、白く輝く流星群のように標的に向けられた。


「飛ぶわ!」

「きゃーー!!むっちゃ怖い!!」

「任せてください!!」


3人が降りた。


俺も降下する。

地面まで100、50、30、20、・・・今だ!!


サブ武器をメインに切り替える。


すでに降り立った花耶達、そして逆境の中で戦う一班のメンバーの下に向かう。


「あの攻撃でもまだ数人残っているなぁ。」

でも大分数は減った。ここでの勝敗はもう明らかだ。


「あぁ、八雲君・・・」


無事だったようだ。

京極寺慧香をその目で確認してホッとする。


「良かった。じゃあここから形勢逆転といこうか。」

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