第二十三話 いざ、チーム対抗戦
まもなく定刻だ。
気になってあたりをどうしても見回してしまう。
ざっと700人くらいかもしれない。いや、ひょっとしたらもっと・・・
全員がギルド所属というわけではなく他の関係者も一部いるとのことだがやはり思ったよりもはるかに多い。ステージの正面中央には来賓席らしき場所がある。
おそらく花耶のお父さんもそこにいるのだろう。
ただ、政治家がどうして?
するとあたりは暗くなり、それを合図の如くさっきまで聞こえていた雑音は一気に静まる。
壇上にライトが当てられそこに京極寺さんが立った。
「ギルド並びに関係者の皆様、本日は大変お忙しい中、私達の会議のためにお越しいただきまして誠にありがとうございます。」
形式的な挨拶から始まった。
それからは京極寺さんのギルドの現状、隣の市とどういうことがあったのかなどが説明されたがこれは以前に聞いた内容とほぼ同じだった。
ただ、ここから先はまだ聞いていないことだった。
まずは壇上にいる京極寺さん以外の人。
大体40人はいるな。
彼ら彼女らはそれぞれの班のリーダー格らしい。
そして、さらに話を続けると、
「私達と例のギルドは3日後にチーム対抗戦を致します。人数形式は1000対1000。本日は巡回などもあって全員をこの場に招くことはできませんでしたが・・・」
おいおい、嘘だろ!?
話の途中だがあまりにも形式のインパクトが強くてそれに気を取られてしまった。
それってチーム対抗戦の最大人数じゃないか。
その後も説明を聞いた。
戦力差的には相手側の方がずっと有利だということ、この戦いに負けた場合は不利益を被ることが予想される同盟関係を結ぶことになることなど。
要するに今回の戦いは京極寺さん、そしてこのギルドにとっては厳しい戦いになる。
それでも負けられないということだ。
「これより各班に分かれて作戦の説明をします。本日は多目的室もいくつか使わせていただくことになりましたので一部の班についてはそこに移動するように。」
この文化センターに多目的室なんてものがあったのは初耳だった。
そして、壇上での話がいったん終わりギルド以外の関係者は先に帰宅した。
「第一班の皆さん、私達は202多目的室に移動します。」
京極寺さんが俺達の座っている場所近くに来てそう言った。
すると周りの人達が一斉に立ち出す。
この人たちが全員一班だったのか。
後に続く様に俺も立ち上がり、その人達についていく。
花耶も水面ちゃんもアキラちゃんも同じように歩き出すが誰一人として多目的室に着くまで口を開くことはなかった。
もちろん俺もだ。
なんというかそんな雰囲気ではないしそれぞれ自分の中で考えを整理したかったようだ。
第一班は30人ほど。
本当は50人いるようだが日々のギルドの活動もあるのでそういった人達には改めて今回の作戦を別の日に伝えるようだ。
そして、作戦内容の説明が始まった。
会議と言っても実際は各班のリーダー達が事前に話し合って決めたことを伝える場だ。
その上で気になることがあれば質問する。
俺達は簡単に言うと機動攻撃部隊だ。
ギルドの長の京極寺兄妹がいわば前線に立つのは意外だったが先陣を切ることで士気を高めることと敵の意表を突くのが目的らしい。
まあ、結局のところ最終的にどちらが多く倒すか拠点を破壊するかなどで決まる戦いだから誰が倒れようがあまり関係ない。
自分達が安全な場所でくすぶるよりも皆を勇気づける方を優先したいとのことだ。
また、プレイヤーの出現場所は制限があるとは言え、対抗戦直前に設定できる。
対戦する場所の地形はあらかじめ公表されている。
今回のマップはかなり広くて3㎞×3㎞の中に岩場や森、平原や湖畔まである。
第一班は岩場の近く。
ここに出現して最初は影に隠れながら奇襲、そして拠点破壊をしていくのだ。
ある一定範囲内に近づけば互いに敵がどこにいるのかが認識できる。
向こうもそれを察知し、こっちも察知したらとりあえず攻撃、そして進軍していく。
かなりのごり押し戦法だが結局は向こうもやることは同じだろう。
「ではどなたか質問はありますか。」
何人かが質問をする。
「もしも戦闘の途中でバラバラになった場合はどうしますか。」
「私達は班で分かれていますが戦闘が始まれば実質個人戦になってしまうことも十分考えられます。なのでできる範囲で互いをサポートしつつも各個撃破、そして拠点攻撃をそれぞれが目指します。」
「では・・・」
その後も質問は続くがこれも結局は臨機応変に戦うってことに集約されるかチーム対抗戦のルールを改めて確認することである程度は予想できるものだった。
「それではもう質問は無いようなので解散いたします。本日はお越しいただいてありがとうございました。各自最終調整をしっかりとやるようにお願いいたします。」
はあ終わったか。
結局、ずっと聞きっぱなしだった。
とりあえず帰ってからルールを確認するか。
「じゃあいこうか。」
「ええ。」「うん!」「はい。」
「ねえねえ、あなた達が八雲さんや水鳥川さんですか?」
同じ班の人が話しかけてきた。すると、その人を皮切りに他の人も。
「へー水面ちゃんってこんな子だったんだ、可愛いー!」
「えっ!ちょっと、あの、ありがとうございます・・・」
水面ちゃんもタジタジだ。
どうやら、新人って事の興味と先の試験の噂が流れたらしい。
第一班の人達が押し迫ってきた。
とりあえず端的に互いに自己紹介だけ済ませながら話をしようとするがなにせこっちに対して向こうの人数も多い。
俺達が次第に切羽詰まってくると・・・
「すまない、その辺にしておいてくれないかな。」
「皆の気持ちもわかるけれどまだその人達はここに慣れていないのよ。」
京極寺兄妹が間に入ってくれた。後ろに聖慈さんも。
「この続きは後々ってことでね、今日はここで解散。」
「えー・・・まあリーダー達がそう言うなら。」
「じゃあ対抗戦の時はよろしくね!」
「水面ちゃん、アキラちゃんもばいばーい。」
皆が各々帰宅しだした。
「さてと、じゃあちょっと君たち来てくれないから。」
「あっ、ちょっと待ってください。」
花耶が何か気になることがあったようだ。
「さっきは質問する場所が違うと思って黙っていたんですがその・・・どうして私達なんですか?」
どういうことだろう。
「京極寺さんはギルドの長よね。たとえ同級生とはいえ、いきなりギルドのトップの班に私たち全員が入るのはどういうことかと思って。」
「そのことについて今から話すのよ。もちろん、あなた達を一緒の班にしたほうが連携取れるということと試験結果を判断したのも事実。でもそれだけではないのよ。」
「内偵者さ。」
「ちょっと聖慈さん、私のセリフ。まあいいわ。今言った通り内偵者がいるかもしれないのよ。」
「スパイみたいなもの?」
花耶が何か察したらしい。
俺もなんだか少し嫌な予感がするし、でもそう考えると新人を第一班に入れる理由も・・・
「ええ。その通りよ。まだあくまで可能性の範囲だけど。
でももしも、そういった人がいた場合はこちらの作戦や主要メンバーの戦闘情報は筒抜け。」
「だから、事前に怪しい人はリストアップして今日無理矢理、ギルドの仕事に割り振ってここに来てはいないけれども・・・」
いないけれども、なんだろう。
「断定はできないのよ。今日来ていない人が全員シロってこともあり得るし、逆にスパイも今日混じっていたってことも十分考えられる。」
「だからあなた達を第一班に入れたの。昨日は急にギルドに入っていただくことになったけれども逆にその時の反応で少なくともあなた達がスパイって線は無いわ。」
そういうことか。
それにしてもスパイまでいるなんて。
いや、まだあくまで可能性の範囲だが。
「なんだか本当に戦争みたいだね。」
率直な感想を述べた。
「事実そうよ。他の人はどう思うかわからないけれども私はそう思っている。今日来た来賓の方々の一部に政治家もいた。このゲームの行方が今後自治体にどのような影響をもたらすか気になっているようなの。」
そうか、だから花耶のお父さんも。
「あなた達の試験の結果はどうやら流れてしまったようだけれども戦闘内容はほとんど知られていないから安心して。」
「もしかすると君たちのようなダークホースに救われることもあるかもしれない。」
「残った時間はわずかだがそれぞれ調整してくれると俺も助かるな。あ、ただ、できるだけ自分達の情報は君達の中で共有しておくようにしたほうがいいかもしれない。」
「ではこれが当日の日程と集合場所よ。対抗戦のパスキーはこれね。」
「えっ!?これドームじゃ・・・」
「そうよ、まあドームって言っても小規模だけど。なんとか二つのギルドと所属している自治体が掛け合って取ることができたの。」
「流石に1000対1000は大規模だしね。それにこんな世の中だ。勝負の行方が気になる人も多い。当日は興行も兼ねて観客も動員されるってことでドームも気前よく貸してくれたんだ。」
「といっても全員が全員来れるわけではないわ。一班はなるべく全員来てもらうようにするけれども、当日は250人を予定していますわ。後の人は自宅や人が集まりやすい施設から参戦するの。」
対抗戦はARモードではなくてVRモードで行われる。
なので別にどの場所から対抗戦に出場しようと問題ないが一部の人は直接相手と会うことでこれがちゃんとした戦いだってことを部外者にもアピールするようだった。
「まあ当日どうしても体調不良とかになってしまったら無理は言わないけれどもできれば自宅から参戦して欲しいわ。」
俺たち全員は頷く。
「じゃあよろしくね。」
そういって、3人は去っていった。
「あの、皆さん。提案があるんですけど・・・」
(?)
「この後、練習というか仕様を確認するためにチーム対抗戦をしてみませんか?2対2の。それに私ちょっと試したいことがあるので。」
「そうね。それがいいと思うわ。じゃあ今からやる?」
「あーそれいいアイディア!」
「あっ、いったん家・・・というかリョーマさんの家に帰ってからでいいでしょうか。」
「今VR接続器を持っていないので。」
「そうか、じゃあ各自家に戻ろうか。」
「うん!」「わかったわ。」
そして帰宅。
アキラちゃんには直接、あとの2人には連絡を取って2対2のパスキーを入力して対抗戦の場に現れる。
VR空間についたら今回も花耶が先にいた。
そして、アキラちゃんと水面ちゃんがほぼ同時に登場。
それから各自チームを組んで仕様を確認しがてら練習試合をこなしていった。
ーーーー当日
あれからあっという間だった。
曲がりなりにも一員なのでギルドの貢献の為に俺達はできることをやっていった。
幸い、ここのギルドは様々な仕事も討伐依頼も斡旋している。
なのでそういったことをこなしつつ、また練習試合、そして実際に4人で会ったりしながらこの日を迎えた。
ただ、残念なことに今日になってアキラちゃんが体調不良を起こしてしまった。
なので俺の家から参戦することになる。
料理や食材はある程度あるし、日用品も足りない物は買い込んだから大丈夫だと思うがやはり心配だった。
でもここに来てから連絡にもちゃんと出てくれたのでちょっとは良くなったのだろうか。
そのことを京極寺さんに伝えるとまあしょうがないわ、無理はしないでねって言ってくれた。
「では本日はよろしくお願いしますわ。」
京極寺さんが向こうに話しかける。
「まったくお宅のギルドは頑固で困るな~。どうせ結果は見えているんだ。こんなことをする必要もない。」
どうやら向こうのリーダーのようだ。
その後ろには取り巻きがいる。
勝つのが当たり前という表情を浮かべる者もいればニヤニヤしている者、威圧してくるような者まで。
なるほど、これがかなり強引に勢力を拡大してきた富川市のナンバー2ギルドか。
「まあ遅かれ早かれお宅はうちの軍門に下ることになっているんだ。これからこの一帯を支配する俺達のギルドにな。その配下になるんだ、光栄に思うがいい。」
「それは全てが終わってから分かる事よ。」
「その時を楽しみにしているんだな。じゃあお前ら、行くぞ!!!」
俺達も対戦席にある接続器でVR空間に移動する。
ドームのスクリーンに映し出される映像やそれぞれが持つ機器の観戦モードで戦場、そして二つのギルドの勝負の行方を大勢の観客が見ていた。
とりあえず、さっきのやり取りで事情は何となく分かった。
(少なくとも・・・)
俺も作戦通り指定された場所に出現する。
そして、開始時間が来た。
〈チームA・チームB、対抗戦を開始します〉
(この戦いは一分も気を抜いてはいけないようだ)




