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第二十二話 ちょっとした戦争なんだ

朝目が覚めて少しだけ妙な新鮮味を覚えた


昨日は1階にアキラちゃんがいたが俺は自分の部屋で一人で寝た。

ここ数日必ず誰かが一緒にいたからかな。

これも悪くないんだがどうしてもソワソワしてしまう。だからすでに身支度を終えたアキラちゃんの顔を見たら少しだけホッとした。


それからは朝食を済ませて慌てて着替えや持ち物の準備をする俺を律義に待っていてくれた彼女と一緒に文化センターに向かったのだ。


「リョーマさん、文化センターってどんな場所なんですか?」


「うーん、どんな、か。なんて言ったらいいんだろう。とりあえず観客席があって、大抵はそこで招待された演劇や演奏、あとは地元の学校の発表会を見るんだ。まあ簡単に言うとステージかな。たまに演説も行われたりする。」


「なんかイメージと違いますね。京極寺さんの話を聞いた時はてっきり会議室みたいな場所だと思ったんですが。」


「ん?そういえばそうだな。作戦とかなんとか言っていたし、机を取り囲んで説明を受けるのが普通かもしれない。なんで文化センターなんだ・・・」


質問されたのに俺が疑問を持ってしまった。彼女と違って文化センターのイメージがすでにこべりついていた自分は感じなかったが改めて考えると変だぞ。


「それに、ちょっと規模が大きいな。」


「と、言いますと?」


「あ、ああ。観客席の事なんだけど最大で確か1000人近く収容できる規模なんだ。」


「え!そんなにですか!?」


「うん、俺も昔は規模なんて気にしていなかったけど今にして思うと大きい場所だよ。」


確か、税金がドカって入った年と国からの支援、市の記念とかもろもろのタイミングが上手く合わさって計画・建造されたこの市には少し不釣り合いな施設だ。

そんな場所の予約をよくもちゃんと取れたと感心するとともに軽い気持ちで向かっている足取りが少し重くなった。

一体、彼女はどういう会議をするつもりなんだ。


「まあ、こればっかりは着いてみないとわからないね。」


「そうですね。ちょっと不安になってきましたが皆さんもいることですし!」


うやむやに濁してまとめたがアキラちゃんは幸いにも納得してくれた。


その後は雑談しながらも話題が尽きたらちょっと沈黙、でもどちらかが話題を切り出して珍しい二人だけの時間を過ごした。

自転車くらいはあったほうがいいかもしれない。市内でも移動はちょっと面倒だぞ、なんてことを考えてもどうせ買うことなく移動は今後も歩きになるんだろうなぁって思いつつもようやく文化センターにたどり着いた。


「少し早く着いちゃったね。」


「会議開始までゆっくりできる分お得ですよ。」


でもそこにはすでに俺達よりも早く到着した人物がいた。


「おはよう、二人とも。」


「あ、おはよう。」

なんだかずいぶんと懐かしく感じるな。


「カーヤさん、おはようございます!・・・と後ろにいるのは・・・」


「ああ、アキラちゃんは初めてね。紹介するわ私のお姉ちゃんとお母さんよ。」


「あなたがアキラちゃん?はじめまして。花耶の姉の水鳥川 瞳よ。龍馬君も久しぶり。」


「お久しぶりです。」

「始めまして、春夏秋冬全です。」


花耶とは顔立ちは似ているが雰囲気がおっとりしているこの女性は彼女の姉。俺も昔、と言っても小学校までだが、彼女達の家に行ったときはよく遊んでもらった。


「龍馬君、ちっとも顔見せないんだから心配したのよ~。でも元気そうでよかったわ。」


「あはは、涼音さんも元気そうで何よりです。」


「あっ、私は水鳥川 涼音すずね。花耶と瞳の母ね。よろしく。」


「こちらこそはじめまして。花耶さんにはいつもお世話になっています。」


竹を割ったような性格という表現が似合う彼女達の母親の涼音さん。

この人も昔と変わりないようだ。


「それとさっきまでお父さんもいたんだけど・・・」


(マジで!?)


「もう先に行っちゃったわ。」


「?・・・先って?」


「ああ、お父さんもこの会議を聞くみたいなの。それで準備とか打ち合わせのために早めに中に入っていったわ。」


どういうことだ!?

だって、彼女のお父さんって確か県議会議員のはずだぞ。

なんで、こんなところって言っては何だが、でもゲームのギルドの会議だろ。


「なんていうか、詳しくは教えてくれないしまだ言っちゃいけないみたいだったんだけどこのギルドとチーム対抗戦って思ったよりも大掛かりなものみたいなの。」


「ああ・・・そうなんだ。そういえば人もだんだん増えてきたし・・・」


なんだか急に不安というか自分が何に首を突っ込んだのか早く知りたくなってきた。


すると、


「おーい!おはよーー!」


駆け寄ってくる音と声。

その方向に目を向けると・・・


「ああ、水面ちゃん!おはよう。・・・とさゆりさんもおはようございます。」


「おはよう。あ、初めまして、この子の母の佐伯さゆりです。」


「ああ!あの佐伯さん!はじめまして。花耶の母の水鳥川涼音です。」


「あら、いつもお世話になっています。」


この二人は初対面だったようだ。


「ごめんなさいね。せっかく会えたのにちょっと私、昨日付けで例の宿泊施設の職員にさせていただいたからまた戻らなくてはならないの。本当にいつも申し訳ないんだけれども水面の事、またお願いしても大丈夫かしら。」


「ええ、もちろん。水面ちゃんも同じギルドのメンバーですから。」


「いつも本当にありがとうね。じゃあよろしくね。水面ちゃん、無理言っちゃあダメよ。」


「私そんなこと言わないじゃん。」


さっきまでの不安が彼女の登場で少しだけ和らいだ。


さゆりさんが来た道をまた戻る。

あの宿泊施設は文化センターにも近いから水面ちゃん一人でも来れたはずだがどうしても見送りに来たかったようだ。



「じゃあみんな揃ったことだし、私達も行きましょう。」


「ああ、うん。そうだね。」


「ほら、龍馬君、緊張しないの!って言っても正直私もこの人の多さと規模に驚いているんだけどね。」


「えーと、涼音さんと瞳さんもギルドに所属しているんですか?」


「私達はしていないの。以前からのプレイヤーじゃなかったしもう少しレベルを上げてからにしようって瞳と話し合って。だから私達も花耶とお父さんの見送りね。」


この先はギルドのメンバーと一部の関係者しか入れないようだった。


「近頃、私達でもわかる緊張感がこの辺りに漂っていたからどうしても気になっちゃってね。花耶がギルドに所属したなんて言うから。でも、いつの間にか一緒にいる人も増えたようで安心したわ。」

「じゃあ私達はそろそろ行くわね。頑張って。」


「龍馬君、花耶をお願いね。」


「ちょっと、お姉ちゃん!よろしくって!」


「花耶お姉ちゃん何顔染めてんの~」


「染めてない!」



「・・・っと、じゃあ行こうか。」


「ええ、早く行きましょう!」


花耶も瞳さんと涼音さんに別れを告げて文化センターのステージに向かっていった。

入り口に向かうにつれて人の多さがより目立っていく。

それに雰囲気も少しだけ重苦しい。


ステージの入り口付近に受付の人がいた。


「おはようございます。ギルドの方でしょうか。」


「はい、4人とも全員、京極寺さんのギルドです。」


「お名前とユーザー名を確認してよろしいでしょうか。」


それぞれが自分の名前とゲーム内で使っている名前を言う。


「ああ、あなた達が例の。」


「あら、ごめんなさい。えーと、八雲さん達はこの位置ですね。全員第一班となっています。」


ってなんだろう?まあ席が分かればいいか。

とりあえず指定された席に行こう。


あまりステージの正面近くだと嫌だなぁって思っていたが大丈夫だ。

ちょうどいい距離だし端の方でありつつ、よく前が見える絶好の場所だ。


そして、いざステージ部屋に入ると驚く。

人の多さに。


「多いですね~。」

アキラちゃんの感想はもっともだ。


この観客席の収容人数は確か1000ちょっと。

まだ受け付けは終わっていないのにもうすぐ、過半数はあろうかというくらいの人が座りつつある。


席に向かって歩いていると、

「やあ、君達。待っていたよ。」

聖慈さんだ。


「君達も第一班だね。俺もだ。よろしく。」


「・・・っとよろしくお願いします。あの、第一班って?」

とりあえず場の雰囲気にのまれそうになりつつも疑問を一つ解消したい。


「ああ、簡単に言うと京極寺慧香君と徹獅の直属の班だ。俺達はね、20班に分かれているんだよ。」


「20班!?」


「ふふふ。驚いているね。無理もないか。今回のチーム対抗戦はね・・・」




「ちょっとした戦争なんだ。」

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