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第二十一話 試験結果発表、でも待って・・・

「聖慈さんに勝った……!?」


「まさかこれほどとは……」



 対戦が終わり俺のいた空間が周囲の景色と同化する。

 目の前にいる悔しいというよりはもっと複雑な表情をしている須加聖慈さんが起き上がり、乱れた服を少し整えた。


「聖慈さん、ここに到着するまで、その……何をやっていたんですか。」


 戦いの最中、気になっていたことを思わず口にしてしまった。昨日は京極寺兄妹と彼の3人で家の門の前にやってきた。でも今日彼は途中までいなかった。単に遅れてきたとは思えない。


「なに、ちょっとしたモンスター退治さ。気になるのかい?」


「ええ、だって昨日は京極寺さん達と一緒に来て、今日は途中から来ていたので。その前に何があったのかと思いまして」


「今、こういう世の中になってしまってからね、モンスターは俺達の都合を無視して現れてしまうんだ。だから、出現を察知すれば退治しに行くのもギルドの務めさ」


「討伐ログを見させていただいてもいいですか?」


 我ながら遠慮もないことを言っているがこれも気になってしまう。向こうは少し考えたようだが、


「参ったね。いいよ。その代わり君のも見させてもらえないかな。互いに1ページ目だけね」


「ええ、どうぞ」



 そして互いのログを見る。


 やはり。

 なんとなく分かっていたが、というか予想以上だ。昨日俺達と別れてからギルドのメンバーと一緒に討伐したにせよ4体のカテゴリー3を討伐している。こいつに至っては俺達が寝た後だ。


 凄いエネルギッシュな生活を送っているようだが、こんなことを続けていては持たない。


「なるほどね。通りで強いわけだ。それに妙なモンスターを倒しているな」


 向こうも見終わったようだ。


「ずっと、このような討伐をしているんですか」


「今はまだマシになった方さ。この地域にいるプレイヤーはずいぶんな勢いでレベル上げを頑張ってくれている。おかげで俺の負担は減っている」


 負担が減っていてもなおあれか。


「まあ昨日はたまたまモンスターが多かったんだ。それにその疲労を今回の対戦で言い訳にするつもりはないよ」


 続けて、


「君もそうだろう?さっきまでオーガと戦っていた。それにそのハルバードはまだ使って日が浅いと見た。だからハンデはお互い様だ」


 なるほど、これが須加聖慈って人なのか。




「おーい、二人ともお疲れ!!」

 徹獅さんがこっちにやってきた。

 

「いやーまさか、聖慈に勝つとは思わなかったよ。聖慈も無理させてしまって悪かった」


「気にするな。俺が自分から試験をしたいと申し出たんだ。それよりもまだ1組残っているだろ。そっちを見に行こう。さあ君も」


 対戦中は分からなかったがすでに終わっているのは花耶と水面ちゃん。でもアキラちゃんはまだ終わっていなかった。


「そろそろ決着かね」


 アキラちゃんと相手の試験官は互いに一進一退の攻防を繰り広げている。


 アキラちゃんは体術、対する向こうは薙刀型の武器か。うーん、これは微妙にアキラちゃんが不利か?いや、インファイトに持ち込めば問題ないがあの子はそれができるのだろうか。技術的な問題ではなくメンタル的な問題として。


 彼女の試験官が動き出した。

 これは斬り払い、いや、突きか。


 すると少し相手が浮いた。アキラちゃんの浮遊か。浮遊は自分が使う場合は跳躍の発展だと思っていい。ARモードで人間相手だと浮遊感を脳が錯覚するのと勝手に浮かぶように跳躍する筋肉が働いてしまう(場合によっては筋力強化)だけなんだがこれは思わぬ事態らしい。焦って体勢が崩れた。


 攻撃のために突き出した薙刀、それを持つ腕をつかんで背負い投げた。

 そして、対戦終了。


 対戦時間ギリギリだった。


 対戦が終わった二人がこっちに戻ってくる。

「はあ……負けちゃいました。」


「お疲れ様! 最後は変な体勢になっちゃったけどどうしたのかな?」


「なんか、こう、体がグイって浮いたような感じになって……」


「浮遊か。珍しいな」


「聖慈は知っているのかい?」


「ああ、マイナーな上に習得難度が高いスキルだからあまり知られていないがそういうものがあるってのは知っている。ARモードだと最大限力は発揮できないがそれも使い方次第ってわけか」




「ゴホン」


 神宮寺慧香がわざとらしく咳払いした。


「では各人終わったようね。結果は全員が試験官に勝ち。正直驚きだわ」

「試験は皆合格。それでいいわね。お兄さん、聖慈さん」


「まあこう戦いを見せられちゃねぇ」


「異論ないよ」




「あっ、ちょっと待って」

 俺が声を出そうとする前に花耶が言いかけた。思っていることはおそらく……


「あの、凄く空気を読んでいないようで申し訳ないんだけどまだ今日は話を聞くだけだって……」

 花耶も気まずいようでいつもの調子でしゃべることはできていない。

 

 神宮寺慧香達が一斉に顔を見合わせた。

「あ、そういえばそうでしたわね」

「オーガが現れたりしてうやむやになっちゃったけど確かにいきなり試験の流れに……」

「そうなのか、俺はてっきりもう試験受ける気満々だと思って」


 3人がうーんと悩んでいるような表情を見せ、他のメンバーはどうしていいか困惑している。


 やばい、なんかこの空気は耐えられない。しょうがない。


「あの、神宮司さん、俺達は全員ギルドに所属していないんだ」


「あら、そうなの?じゃあうちに来れば別にいいじゃない」


「うん、でも、こう守ってもらってばかりの中、申し訳ないんだけれども俺はちょっと見て回りたい場所がある」

「所謂放浪型の冒険者なんだ。今回地元に寄ったのもその一環で、それでギルドに所属したら放浪と両立できなくなる」


「ああ、そんなことか。なら大丈夫だよ」


 徹獅さんのさっきまでの悩み顔が一気に吹っ切れた。


「確かにこの市に滞在している冒険者もいるがうちのギルドの所属の仕方は人それぞれだ。なあ、聖慈」


「ああ、俺の知り合いも時々戻ってきては顔を出す奴もいれば出たっきりの奴もいる。今の世の中そういうもんだろ?」


 ああ、どうやら神宮司組はかなり自由度が高いギルドのようだ。


「ただ、聞いておきたいんだけれども、」

「ん?」

「あなた達はここにもしも滞在するとしてどれくらいの期間滞在可能なの?」


「んー、一応今のところは長居できて半月くらいかなぁ。それ以降はまた旅に出るよ」


「そう、なら問題ないわね」


 なんのことだろう?


「あなた達三人は?」


「私は未定。とりあえず実家が無事なことを確認するのが最優先だったから」

「ちょっと訳あってしばらくリョーマさんについていきます」

「私もまだわかんない」


「それぞれ事情はあるようね」


 少し、だけ間があって、

「じゃあ改めてお願いするわ。いいえ、お願いします。私たちのギルドに入ってください」


「実は4日後、先ほど話した富川市のナンバー2ギルドと大規模チーム対抗戦をすることになっているの。あなた達の力を貸してください」


 なるほど。そうだったのか。それはまた急な話だ。ただ、今までの話とこのギルドの様子を聞いちゃあ……


「断る理由はないな。じゃ京極寺さんのギルドに入るよ」


「本当!?」


「私も入るわ。」

「んー、じゃあ私も!」


「あの……私……」

 そうか、アキラちゃんはこの市とは縁がないんだったな。無理に入るわけにも……


「私も入ります!」


「アキラちゃん、無理に合わせる必要はないんだよ」

 場の流れに飲み込まれてしまったのかもしれないと心配したが、


「私が入ると嫌なんですか……?」


 ちょっと寂しそうにでも悪戯心有りでこちらを見る。

 水面ちゃんの影響か……

 これをされるとどうも弱くなってしまう。

 

「いや、そんなつもりで言ったわけじゃないよ。」

 慌てて自分でフォローする。


「私だってここに居る時間は短いですが昨日の夜は凄く安心して過ごせました。それが理由じゃだめでしょうか」


 なるほどな。それも立派な理由か。


「ううん、なんていうかアキラちゃんらしいよ」


「決まりのようね。八雲龍馬さん、水鳥川花耶さん、春夏秋冬全さん、佐伯水面さん、あなた達を神宮司組は歓迎しますわ」



 こうしてギルド所属が決まった。それぞれが質問したり雑談しながらまた俺の家の前まで戻っていった。そして別れ際に、


「ああ、そういえば明日ギルドのちょっとした会議があるの。文化センターを借りることができたから10時から来てくださらない? チーム戦の説明とかをしたいの」


「うん、わかった。明日文化センターね。皆は都合つく?」

「大丈夫よ」

「私も行けます」

「私も!」


 花耶は一旦実家に帰り、水面ちゃんはお母さんが迎えに来るまで俺の家で待機することになった。


 そして、神宮司さん達を見送ろうとしたときに、


「あっ聖慈さん!ちょっと待ってください」

 聖慈さんを呼び止める。


「ん? なんだい?」


 アイテムをいくつか準備をして合成!


「これ! 栄養ドリンクです。チーム対抗戦が近いみたいなので」


 さっき合成したそれを聖慈さんのアイテムボックスに送る。


「んん? ああ、ありがとう!」


「では、さよなら!」


 そう言って俺達も家に入った。



      *



「ははは、栄養ドリンクってのはまたずいぶん気が利いてるね」

「それって中身なんですの?」


「ああ、今から確認する」


アイテムメニューを開くと……


「これは……」


 そこにあったのは【万能蘇生の秘薬】。

 到底栄養ドリンクなんて代物じゃない。


「つくづく面白いね、八雲君達は。まあありがたく貰っておくよ」


 そして、万能蘇生の秘薬を飲んだ彼の今までの傷・疲労は一瞬で消え、体中の細胞が一気に活性化された。

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