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第二十話 こういう流れになったけど、いざ試験

「試験はあなた達と私達で1対1で対戦して判断します。ここにいるのはさっき到着したメンバー合わせて7人。その内、4人が相手にすることになるわ」


「それで対戦相手の決め方はどうするんだ?」


「こちらで判断します。そうねぇ、じゃあ私が一人目になるわ。水鳥川さん、あなたの試験を担当します」


 よりにもよって花耶か。


「先ほどのオーガとの戦闘はしかと見させてもらったわ。でもあくまであれはチーム戦よね。個人対個人ならどうかと気になっているの」


「わかったわ。じゃあ、私の相手はあなたね」


「じゃあ俺は君だね」

 確か須加聖慈と言っていたな。


「はい、よろしくお願いします」



「ねえ、リョーマ」

 カヤが近づいてきて小さな声で語り掛けてくる。


「あの人……」


「あぁ、かなり強い」


「アレは使うの?」

 アレってのはクラウソラスの事だろう。

 ただ、ここで見せるのもなんだか恥ずかしいというか嫌だしせっかくハルバードの使い方にも慣れてきたから、


「いや、さっきと同じでいく」


「そう。じゃあ私も」


 どうやら花耶もテンペストのままらしい。



「……となると僕は……」

 アキラちゃんと水面ちゃんを見ているがどうやら気まずそうだ。


「ちょっとやりづらいなぁ……」

 そういいながらさっき到着したメンバーの内二人を連れてきた。


「この二人に相手になってもらうよ」


「私達ですか!?」「試験なんてやったことがないんですけど」


「まあ普通に対戦してくれればいいよ。これも貴重な経験だ。頼んだよ」


 水面ちゃん達よりも少しだけ年上、高校生くらいの女の子が二人試験官になるようだ。


「じゃあ……やってみます」

「よろしくね、私は、そうだなぁ……君で!」


 どうやら向こうも対戦相手が決まったようだ。



「じゃあ残った僕達は対戦の様子を見させてもらうよ。対戦以外の視点から八雲君達を見ることも重要だからさ。そういうわけで両者とも頑張ってね」


 各人が対戦モードに移行して相対した。



 俺の相手は須加聖慈という人。他の人の反応で何となくわかるがおそらく強い。そして、この予想は確信に変わる。構えで分かってしまう。強いプレイヤー特有の雰囲気だ。


 相手が武器を取り出した。


 その武器は【エレメンタルブレード(上級)】、サブには【深淵の腕】。


 厄介だな。

 エレメンタルブレードは4属性を扱うことができる両手剣、そしてサブの深淵の腕は自由自在に動く黒の腕を3本自分の体から出現させる。


「これは試験ではあるが実戦だと思って全力で来てくれ」


「分かりました」


 俺も武器を取り出す。


 先に動いたのは俺だった。


 速度+4、まずは出方を見る。


 突きから入る。後ろに下がれば追撃、横に避ければ振り払う。でもこの作戦はすぐに失敗に終わった。


 しゃがんだ!?

 対人でなんて無茶な避け方だよ!?だがまずい!


 避けたと同時にすぐに切りかかる聖慈さん。刃には雷をまとっている。


 それをシールドで防ぐ。刃ではなく、柄の部分に出現させて。人の体部分には効果がないが武器にはシールドは干渉する。直接攻撃を防御せずに可動域を制限した。


 だが、さらに黒いとてつもなく濃い煙のような腕が伸びてくる。俺の足を捕えたのと同時に刀の向きをすぐに変え再度斬りかかろうとするがそこで大水霊の腕輪周辺、さらに聖慈さんが立っている場所から水が出現する。その場所にまるで滝が現れたような水流が溢れる。


【大精霊の腕輪ーオーバーチューンー】

 昨日、水面ちゃんと戦った後にこの腕輪の上限の性能が気になって強化しておいた。ちょうどボタニカルパニックで素材も手に入ったことだし。


 向こうの攻撃が遅れたことで避ける隙ができた。そのまま下方向にハルバードを向け斬りかかる。


 当たった!!


……


 いや、防がれた!?タイミングはばっちりだったはずなのに。


 黒い腕にハルバードの刃部分を押し返されてしまったのだ。そのまま腕を切り進めることはできた。だがどうしても抵抗力が加わってしまう。


 タイミングをずらされ、鍔競り合いに持ち込まれてしまった。


「クッ!!!」


 振り払いながら後ろに下がって一旦距離を取る。


「どうした?これで終わりか?」


 一瞬の攻防でよくわかった。この人は本当に戦い慣れている。


 ならば……


 速度+5、斬撃+5、動体視力+5。


「いえ、ここからですよ」


 さっきよりもさらに早く、もっと早く。



       *



「凄く激しいですね」

「あぁ、しかも短い間に何回も駆け引きと読み合いが発生している」



「あっ!あっちは終わったみたいですよ」

「慧香の方か」


 水鳥川花耶と京極寺慧香の戦いが終わった。


「二人ともお疲れ、っと勝敗は……」


「水鳥川さんの勝ちだわ」


「そうか、水鳥川さんって相当できるみたいだね。

ちょっと向こうを見ていたもんだからさ、ログも見せてくれないかな」


少しだけ京極寺慧香は渋るが……


「はい、これがログよ。」


「まだ他の人達が戦っているから全部は後で見るとして少しだけ拝見するよ」


そして、ログに残された戦闘データを見る京極寺徹獅達。


「え……嘘!?」

「もうスキルが発動していて、あっ、えっ!?これフェイント……」


 一同がその戦いに驚かざるを得なかった。


 ログの視聴は途中で終わるが、

「……っと、とりあえず試験の結果はどうですか……」

 メンバーの子が京極寺慧香に尋ねる。


「合格よ。他の試合を見ましょう」


(慧香、平然を装っているが……)

 徹獅が実の妹の様子を少しだけ心配した。


「あっちも終わったみたいですよ」


 水面の試験だった。


「うぇぇ……全く攻撃が当たりませんでした……」

 試験を担当した女子がしょんぼりしている。


「そうか、まあいい経験になったと思って。二人ともお疲れ!」


 上機嫌な佐伯水面は花耶がすでにいることを確認した。

 でもまだいない人もいる。


「お兄ちゃんとアキラちゃんは?」


「あっちよ。今戦っている」


 春夏秋冬ひととせあきらと八雲龍馬は比較的近い位置でそれぞれ試験を受けていた。なので両者とも見える位置に皆は集まる。


「アキラちゃんはちょっとやりにくそうだね」

「えぇ、彼女はどちらかというとサポート主軸だから。それに打撃って攻撃方法とあの子の性格から対戦は苦手かもしれないわね」


「どうして?」


「直接生身の人間の感触が伝わってしまうからよ」


「うっ、、、それはちょっと嫌かも。対戦というよりはストリートファイトに近いね」


「ははは。なるほど。確かに人によっては苦手な人がいるだろうね。さてどうしたものか……」

 少し、徹獅が考え込んでいるのが気になった花耶だがすぐに他に気を取られる。


 さっきまで激しかった戦いがさらに激しくなってきた。

 八雲龍馬の対戦だった。


「京極寺さん? だっけ?あの人って強いんですか。」

 水面が京極寺慧香に尋ねる。


「えぇ。強いわ。とっても」

「彼はね、このギルドの中でもトップクラスの冒険者なんだ。まあ冒険者って言ってもずっとこの町にいる滞在型だけどね。強力なモンスターが出てきた時の活躍は凄いよ。ただ……」


「ただ……?」


「あぁ、いや、何でもないよ」



       *



(おかしいな)


 確かに聖慈って人は戦い慣れている。


 それぞれの属性、時には複数の属性をまとった斬撃をよけながら様子を見ていた。互いに相手にダメージを与えては与えられての戦いだった。


 その中で時々変な動きをする。別に何か狙っているわけではない。そうならざるを得ないような動き。


 そして、急に向こうがガクッっとなった。膝が一瞬持たなかったようだ。他の人からはその違いに気づかないかもしれない。


 でもこの集中力の中、そして今までの経験則からこの動きは大きな隙だとわかった。すかさず攻撃を加える。1発ではない。何回も続けざまに攻撃をする。


 そして、ようやくわかった。さっきのあの隙は俺がこの戦いで生み出したものではない。向こうに溜まっているであろう疲労、傷?わからないが蓄積された悪いものなんだろう。




 こっちが察していることに気が付いたのか、聖慈さんは、


「集中してくれ。まだ終わっていないだろ?」


 少しだけさっきの一連の攻撃に罪悪感の様なものを感じた。本来は持っていないはずの弱点を突いた気がしたからだ。だが、こうした考え自体が失礼なのかもしれない。あの人が背負っている物を考えると。


 だから、手加減なんて考えない。

 次の攻撃で全てを決める。

 そして、駆け出す。


「そう来てくれないとね。じゃあこっちも」


 風の斬撃が無数飛んでくる。シールドで防ぐが少し当たる。でもそれで終わりではない。こっちの武器に対抗するために刀に炎をまとった。さらに電撃も。火力で真っ向勝負するらしい。




 だが、こちらもスキルを使わせてもらう。


 蔓が勢いよく伸びて向こうに迫る。普段だと10mほどの射程だがスキルだとさらに長さは伸びる。そして、投擲の構えに入った。


【ブランボルスアトラトル】

 蔓で対象を掴み、その後に火力・速度補正が入ったハルバードの投擲を行う攻撃スキル。掴んだ蔓がゴムのように縮む(元に戻る)ことでさらに誘導・スピードが加わり、確実に命中させる。

 ただし、武器が手元から離れるためスキル発動後にリスクも付きまとう。


 そして、蔓が聖慈さんの腰部分めがけて差し迫った。


 が、それらが切られてしまう。これでは掴めない。


 ただ、それでも関係ない。そのまま投擲を続けた。


 向こうはブレードでハルバードを受け流しながら防いで次の攻撃につなげようとする。メインの武器が無くなったんだから確かに今が絶好のチャンスだ。


 だが、


「なに!?」


 ハルバードの陰に隠れるように俺も一気に接近した。この攻撃が防がれることは何となくわかっていた。


 だから囮に使う。


 聖慈さんに向けて左手をかざして腕輪が光る。瞬く間にその空間を水が包み込む。まるで水の巨大な拳だった。


 さらに冷却。


 オーバーチューンした冷却は圧倒的だった。さっきまでの水が急に氷る。相手の体の半分を巻き込みながら。


 そして、右手は蔓を掴んでいた。


 投げた後にハルバード本体は掴むことができなかったが対象を掴めず、切られ、空中で行き場を失っていたこっちは掴めた。蔓が縮んで本体が戻ってくる。勢い余って多少自分も傷ついてしまったがそれでも関係ない。

 そして、最後はハルバードを掴みなおし、そのまま振り下ろた。



〈対戦終了。勝者、如月様。〉

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