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第十六話 佐伯水面 その4

「リョーマさんの攻撃当たりませんねぇ。素早い相手にも次々にクリティカル出していくイメージなんですけど……」


 観戦モードで八雲龍馬と佐伯水面の対戦を見ているアキラも違和感を感じ始めた。


「実際に手加減しているとかじゃなくてちゃんと有効な攻撃を繰り出そうとしているわね」

「でもなぜか紙一重で避けられている、いいえ、あらかじめどう攻撃されるかわかっているみたい。逆にリョーマが攻撃される時は防御しにくそう」


「ねぇ、お二人から見て水面ちゃんの戦い方って変わっているのかしら?」

 佐伯さゆりはゲームをまだ始めたばかりなのですでに自分よりもずっとやりこんでいるであろう二人に問いかけた。


「はい、今までに見たことがない動き方、戦い方をしていると思います。ただ、使っている武器は……確かエレメンタルロッド[上級]で強いには強いんですけどあのような動きをする効果は無いはずなので……」


 花耶は言葉に詰まった。

 実際に観戦モードだとトリッキーかつ正確な動きで戦っているようにしか見えないのだ。しかも、魔法系の戦い方とは異質な動きで。


「あの子はなんか「私にはとっておきがあるの!」って言っていたんだけど私はまだこのゲームがよくわからないから何がとっておきか想像つかなくて。でも確か自分だけの力って言っていたかしら」


(自分だけの……、それって……)



      *



 一旦距離を取るか。


 魔法の射程から逃れるために一気に後退した。俺の予想がもしも正しければあの子は、水面ちゃんは「独自武器オリジナル使い」だ。独自武器を持てる人なんてそうそういるわけではない。でもそうとしか考えられない。



独自武器オリジナル

 ROADではシステム上、主に武器関連に‟意図的”に設けられた穴が存在する。

 その穴を利用してプレイヤーが個人的に作る武器が「独自武器」である。

 これについてはあえて自由度を与えることでプレイヤー自ら武器を作るというゲーム攻略以外でのエンドコンテンツを提供するためだとか優秀な武器を作った人物をパンゲア社がヘッドハンティングするためだとか様々な噂がある。

 ただ、ROADは「多元宇宙」、「並行世界」、「物理法則が違うもう一つの世界」などと呼ばれることもあるようにそのシステムは複雑だ。

 なので、独自武器を持つものは全プレイヤー中0.1%未満。しかもこれは独自武器を作ることができるプレイヤーから譲り受けた物も含むので開発できる人物となるとさらに限られてくる。




 俺も一時期このゲームで使われている言語を調べて形なりに独自武器を作ってみたが実戦じゃあまずあてにならないレベルだった。


 だが、目の前にいる水面ちゃん。

 彼女が利用しているアレがそうだとすると厄介だな。


 再びハルバードを構える。そして、目の前にいる少女は杖をこちらに向けた。


 炎が出てきたがそれだけではない。風系統が合わさり、まるで炎の竜巻のようになったのだ。それがこっちに向かってくる。


 まずい。

 ハルバードをまずは使えなくするつもりか。でも、これはチャンスかもしれない。


 サブの武器、大水霊の腕輪が光り指定した地面から水柱が出てくる。竜巻を防ぐためだが目的はもう一つ。


(さらに冷却)


 広範囲の空気を冷やす。もう少しレベリングすれば冷やす温度も下げることができるが今はそこまでしなくてもいい。


 炎の竜巻と水柱がぶつかり、あたりが急に冷やされた。

 それによって視界が曇りだす。


「あ、ずるーい!」

 水面ちゃんの声がする。

 咄嗟に出た言葉だろうがこれで弱点は何となくわかった。


 そして、霧の中を突っ切って彼女の目の前に現れる。すかさず突きをする。さっきと同じ攻撃だと思って余裕の表情を浮かべているが今度は少し違う。


 突きをするつもり、その本当にそのつもりで途中まで攻撃をするが次の瞬間、振り払いに無理矢理切り替える。

 身体強化で多少の無理は問題ないがあまり続けるのも後々響きそうだ、でもおそらくこれが有効。


 そして、この攻撃が当たった。


「えっ、嘘!?」

 やはりか。


 彼女がさっきから表示しているISのようなものはISではない。おそらくISよりも詳細に敵のステータスを見ることができるサブの武器「賢者の魔眼」、それを元に改良したオリジナルだろう。


 あくまで予想だがその力は敵の次の行動を予測するというもの。

 ただ、ゲーム内のモンスターならいざ知らず生身の人間の動きをずっと先まで未来予知のように見ることなんて考えられない。だから、相手の身体情報(筋肉の動き・瞳孔・体温・脳波もあり得るかもしれない)をリアルタイムで計測してそれからわずかな時間の先の動きを表示する。

 

そのような能力だと仮説を立てた。そしてどうやらこれは正解らしい。


「やったねーー!!」

 水面ちゃんの表情がより真剣になった。

 でも楽しさはしっかりと見出している。


 4系統をまとめて使うつもりのようだ。

だが……


 その前に斬りかかろうとする。

 もちろん、彼女は避けるがこれは予想できないらしい。


 荊棘ノ斧槍から2本の棘の蔓が伸び、彼女の両足を捕える。

 あくまでハルバードのおまけのような力のはずだがアンテーア戦でこの手の攻撃の厄介さは十分わかった。


 これで移動はできない。


 思うように動けず、詠唱するにも時間は足りない。でも奥の手があると厄介だ。


 彼女をめがけ一気に距離を詰めつつもさらに保険をかける。大水霊の腕輪の効果。彼女の目の前に大きな水柱を出現させる。


「うっ!!」


 柱というよりは壁だな。


 そして、壁を破りぬけてそのまま攻撃。痛みはないとはいえちょっと心がちくりともするやり方だが……


〈ゲームセット。勝者如月様〉


 なんとか勝てたようだ。



「あーあ、負けちゃった。今までは対戦で勝てたんだけどなぁ」


 観戦していた3人も合流した。

「正直俺もびっくりしたよ。予想が合っているかどうかの賭けだったんだ」


「へー、どんな予想?」


 俺が戦闘中に立てた仮説を説明した。


「あーもー、悔しいぃ!! 大体それで正解」

「そう、これは私が作った相手の動きを予測するオリジナルね」

「モンスターにはかなり有効なんだけど人間相手だとまだまだ改良が必要だなぁ……」


「いや、オリジナルの時点で無茶苦茶凄いんだけど……っていうかまだ改良の余地あるの?」


「うん、一応ね!今はナイショ♪」


「オリジナルってのは本当に規格外ね」

 花耶も驚いている。


「でもそんなに簡単じゃないんだよ。あっ、そうだ、付けたほうが分かりやすいかも」

 そう言って花耶に付けてみてと催促する。


「私の方を見てねー」

 水面ちゃんが手を振る動作をすると……


「うっ何これ……!?」


 どうしたんだろう。彼女が苦い顔をしている。


「あっそこのえーと……」


 アキラちゃんの方を見る。


「アキラちゃんだよ」


「アキラちゃんも付けてみて」


次は彼女がつける。


「うわっ!? なんていうか、凄いですね……酔いそうです」


その様子を不思議がっていると次は俺の番が回ってきた。


「お兄ちゃんも」


「あ、じゃあ失礼するよ」

 

 そして付けてみると二人の反応の意味がよくわかった。動く前の動作はそのままだがさらに予測動作が重なる。それも1つの予測動作じゃなくて複数だ。

 改良の余地ってのはこれのことか?確かに戦闘中にこの情報を処理するってのは大変だ。


 使ってみて初めて分かった。これはただ単に相手の予測をするチートアイテムなんかじゃない。

かなりピーキーだ。それをこの子は実戦で、それも生身の人間相手に使っていたのか……

 

 改めて凄さを実感した。


「凄いね… はい、ありがとね」

 そう言って水面ちゃんに返す。


「これを使いこなしていたんだね。作ったのも凄いけど実戦で使うのも凄いよ」


「ふふふ。そうでしょ。でも使ったら分かるようにまだまだ直すところはたくさんあるし新しく加えたい能力もあるからまだまだ未完成だよ」

「でも褒めてくれてうれしい!!」


 しばらくはこの武器や対戦について振り返って俺達はまた歩き出した。


 そして、魚崎市にたどり着く。思ったよりも早く着いた。


 今晩泊る場所については大丈夫だな。実家の認証は変わっていないだろう。ただ、両親も弟も今は海外だから家には誰もいない。


「じゃあ花耶と俺はそれぞれの家に一旦行くとしてえーっと、水面ちゃんとさゆりさんとアキラちゃんは泊る場所は……なかったら家でも大丈夫ですよ」


「えっちょっと待って!!」

 花耶が遮った。


「あの、私も行っていい?」


「いや、でも実家は……」


「それは明日でもいいじゃん。久々に私もあなたの家に遊びに行きたい」


 うーん、まあ4人なら大丈夫か。


「わかった。じゃあ花耶も。あ、まだ3人の意見を聞いていなかった」


「アキラちゃんは?」


「いいんですか?じゃあお邪魔させてください!」


「水面ちゃんとさゆりさんはどうですか?」


「あら。嬉しい。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね。ありがとうね」

「やったー!!私もお兄ちゃんの家に行きたかったんだ!」


 そして、実家に戻る。よかった、別に家は壊れたりしていないんだな。


 と、何やら玄関に人影が……3人いるのか?


 あれ、おかしいな。今は誰もいないはずなんだが。


 もう日が沈んだからよく見るために少し近づくと、


「あ!!!」


 その内の一人が叫んだ!!そして俺と花耶もその声を発した人物に覚えがあって、


「え?」「なんで?」

 思わず動揺した。

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