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友達で居る理由。


ホームルームが終わると莉那が私の席にやって来た。


「まどか、香織も誘って吉井の部活見に行ってみない?」


「うん、いいよ。」


「そしたらさ、バレー部の見学も付き合ってよ。」


「莉那さ、本当はそっちが目的なんでしょう?」


「あははははっ。バレたか。行こう。」


「あっ、岸本さんちょっと待って。」


教室を出ようとしたら後ろから呼び止められ、振り返ると狩谷美穂子さんともうひとり女の子が居た。この前狩谷さんとチラチラ私を見ながら話して居た子だ。何となく嫌な予感がして体が固くなる。


「話があるの。円谷さんも残って。大事な話だからみんなが退けてから。」


「わかった。」


莉那が答えて、みんなが退けるのを大人しく待つ。最後の子が教室を出てガランとした教室に4人。狩谷さんが沈黙を破った。


「岸本さんにちゃんと伝えなきゃと思って。」


「何を?」


「円谷さんの事。岸本さんさ、学校違うから知らないと思うけど、円谷さんって小、中と友達らしい友達居なかった子なんだよ。強いて言えば変なデブの吉井が居たみたいだけど。」


「だから?」


「だからって?恥ずかしくない?岸本さんみたいな一軍クラスの子がランク外のワケわかんない子とつるんでるの。」


やっぱりだ。嫌な予感が的中した。

私はずっとずっと同じ学校に友達が居ないことを気にもせずに過ごしてきた。何だったら玲が居たし、週末になれば莉那と香織に会えたから。でも、そういうの本当はみんな気にするんだろう。私は急に恥ずかしくなって莉那の顔を見ることが出来ず俯いた。


「ねぇ、狩谷さんだっけ?逆にさ、恥ずかしくないの?そんなことで友達を選ぶの。貴女こそ知らないようだから言っとくね。私とまどかは小学校からの友達だから。言っちゃえばその変なデブの吉井も含めて友達なの。友達って言うよりもう親友だよ。気の合う仲間。代わりは居ないと思ってる。友達ってそういうものじゃないの?ランクとかよくわかんないけど、少なくとも私はそう言う損得勘定で仲良くなってないから。そういう人とは友達になりたいとも思えないし。」


「岸本さんは分かってないんだよ。人気者だから。無いようでもちゃんとあるんだよ。ランクが。」


「だから何?」


莉那が苛ついた様子で狩谷さんに訊ねる。


「だから、岸本さんと円谷さんじゃ釣り合い取れてないんだって!!」


「あーっ、もう。釣り合いとかそう言うのどうでもいいから。私はまどかが好きだから一緒に居るだけ。それ以外の理由は無いの。もう話すことも無いし帰ってくれる?」


「いいよ、もう。行こう。」


帰ってくれと言われた2人はすごすごと教室を出ていった。私は言葉にできない感情で胸がいっぱいになり目から涙が零れた。


「まどか、何泣いてんのよ。」


「莉那、ありがとう。」


そう言うので精一杯だった。


「お礼なんて馬鹿じゃないの?ほら、行くよ。」


「うん。」


しんみりした空気を払うように莉那が体を丸ごとぶつけてきて教室から出るように促される。出た所で香織が待っていた。


「お疲れ~。吉井、部活行ったよ。早く見に行こう。」


きっとさっきの出来事を知っているのかもしれない香織はその事には何も触れずいつも通り声を掛けてきてくれる。3人で昇降口を抜け校庭へ降りる階段を下っていくと、ドスドスと校庭を汗だくで走る玲とその姿を可笑しそうに眺めている部員が目に飛び込んできて、私は思わず大きな声で叫んだ。


「玲、頑張れ~。」


「つ、つぶちゃん、あ、ありがとう。が、頑張るよ。」


息を切らしながら返事を返してくれる。


「ねぇ、まどかと香織はここで吉井の応援してあげなよ。私、ちょっとバレー部見てくるから。」


「ひとりで平気?」


莉那に訊ねると笑って言った。


「私は全然平気。それよりあれじゃ吉井の精神が折れそうだから。ふたりでついててあげなよ。」


「分かった。頑張ってね。」


「うん。」


莉那と別れると、香織とふたり校庭のベンチに座り込み、玲が前を通る度に手を振った。


「まどかさ、陸上部のマネージャーとかなったらいいんじゃない?」


不意に香織が言う。


「マネージャーは無理かな。私、部活は今のところ考えてないんだ。」


「そっか・・・・・・。」


ちょっとした沈黙のあと香織が話し出す。


「さっきの話、聞いちゃった。ごめんね。でもね、私も莉那が言ってたのと同じ事思ってるから。まどかは大事な友達だって。変なデブの吉井も含めてね。だからこれからもずっと仲良しでいようね。」


「うん、ありがとう。」


「でも、変なデブって吉井、散々な言われようだよね。」


変わらずドスドスと校庭を走り回る玲を見て香織が言う。


「そろそろ莉那の方も見てこようか?」


「うん。」


降りてきた階段を登り体育館に移動した。開けた入り口から中を覗くと制服姿のままコートに立つ莉那が居た。楽しそうでキラキラしていてそこだけ眩しく見える。香織とふたり話もせずその姿を眺め続けた。どれ程時間がたったのか鞄を抱えた玲がやって来た。


「やっぱりここか。岸本、楽しそうだね。」


中を確認して玲が言う。

ピーッと言う笛の音でゲームが中断され、コーチだと思われる先生が解散を告げる。


「今日はここまでです。体験入部の岸本さんも明日からはジャージで参加するように。それと入部届け忘れずにね。」


「はい。」


眩しい笑顔で答えるとそのまま私達に気付き走り寄ってきた。


「来てくれたんだ。ありがとう。」


「うん、って言うか入部決めたんだね。おめでとう。」


「ありがとう。吉井が陸上で、私がバレー。まどかと香織は?」



「保留~。」


声を揃えて答える。


「つぶちゃんは本の発売が間近だもんねぇ。」


「そうだ。明明後日(しあさって)じゃん。」


玲のひと言で本の発売日を思い出す。

もう明明後日に迫っているのだ。



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