ランチタイムと玲の爆弾発言。
「まどか~、2限目の科学、実習室で実習だって。さっき翔子ちゃん先生が四人組のグループ作っておけって言ってたから一緒に組もう。」
「うん、いいよ。ありがとう」
莉那と同じクラスになって一週間。
莉那の良いところをたくさん知る。
まず、明るく陽気で誰とでもすぐに仲良くなれる活発な所。そして何より面倒見がいい所。内向的で人見知りな私を常に気にかけて仲間に入れてくれる。莉那のお陰でいろんな子と話せる機会が増え、だんだんクラスにも馴染んでいけるようになった。クラスの人気者の莉那のお気に入りの子としての立ち位置だけれども。それでも私にはすごく嬉しかった。
ある日の休み時間、莉那と他愛のない会話をしていたら不意に強い視線を感じて振り返ると女の子と目があった。どこかで見たことがあるような顔。でも、思い出せない。狩谷美穂子さんだっけ?自己紹介の時に聞いた名前を思い出してみてもピンと来ない。何をされた訳じゃないしとその時は気にしないことにした。
別の日にトイレに行こうとして、狩谷さんの席の近くを通ったら
「私、岸本さんに言ってあげようかと思ってるんだよね。だって知らないで仲良くしてるなんて可哀想だもん。」
と聞こえてきた。一緒に話している子は相づちを打ちながら私をチラチラと見ている。本当に何だろう?私、何か悪いことしたのかな?思い当たることが無くて不安になった。
昼食は各自、好きな場所でクラス関係なく食べていい事になっている。私と莉那、香織、玲の四人は天気のいい日は中庭の芝生にレジャーシートを敷いて食べることにしていた。いつものようにわいわいと食べていると香織が
「クラスに気になる子とか居る?」
と聞いてきた。気になる異性という意味で受け取った私達は「居ないよ~」と笑って答える。
「香織、気になる子出来たの?」
と逆に質問をしてみたら
「居ないよぉ。でも、何かさ恋バナとかしてみるのも高校生っぽくていいかなぁと思って。」
言い終わったあと、自分の発言に恥ずかしくなったのか香織は手に持ったおべんとうを慌ただしく口に運びむせ込んだ。
「ゲホゲホ。」
「ほらっ、お茶飲みなよ。」
莉那が香織にお茶を手渡し、
「慣れないこと言い出すからだよ。」
と玲が笑っている。私はふいに思い出してそれとなく狩谷美穂子さんの名前を出してみた。
「そう言えば、同じクラスの狩谷美穂子さんって知ってる?どこかで会った気がするんだけど、全然思い出せなくて。」
「つぶちゃん、それ本気で言ってるの?」
玲が今にも口に入れようとしていたウインナーの動きを止めてお弁当箱に戻し、パチパチと目を瞬かせた。
「狩谷美穂子だよ?」
念を押されるように確認され、正直に答えた。
「うん。分からない」
玲は呆れたようにため息をつきつつ教えてくれる。
「狩谷美穂子は中学のクラスメイトだよ。ついでに、クラスでも目立つグループに居た子。本当に覚えてないの?」
「うん、覚えてない。何となく見たことある気がするって思っただけで。」
「まどかってばどんだけ周りに興味ないのよ。吉井から聞いてはいたけどそこまでだとは。ほんっとにすごいよね。すごすぎて笑える。」
「でしょう?僕もビックリだよ。」
「まぁ、まぁ、まぁ。まどからしくていいじゃない。所でみんな入る部活とか決めたの?」
香織が、莉那と玲の話に割って入り話題を変えてくれ、莉那が目をキラキラさせて答える。
「私はバレー部!いちど部の見学に行ってみようと思ってるんだよね。」
「僕はもう、入部したよ。」
「えっ、何部に入ったの?」
玲の突然の発言にみんなが訊ねる。
「へへへっ、何部だと思う?」
「わかんないよ。でも、吉井なら料理愛好クラブとか?」
「チゲーよ!」
「囲碁とか?」
「それも違う。あのね、陸上部だよ。」
「り、陸上部?!何でどうして?!運動とか1番縁がないタイプじゃん!!続かないんじゃない?止めときなよ。今なら入部届け取り下げられるよ。きっと。返して貰いなよ!」
玲のタプタプした体にはあまりにも不釣り合いな部活への入部を聞かされ、みんなが本気で心配して止めに入るが本人のやる気は相当なもので私達は突っぱねられた。
「返してなんて貰わないよ。僕はね、もう決めたの。陸上部で頑張るって。すげー頑張って長距離選手になって、その内つぶちゃんの小説にでも書いてもらおうと思って。」
「私は書かないよ。絶対。」
「うわぁ。つぶちゃん、冷たいなぁ。」
私は、狩谷美穂子さんの件でからかわれた事を思い出して本気なのか冗談なのか分からない玲の発言をわざと冷たく玲をあしらった。その内、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り私達は『またね~』とそれぞれのクラスに戻った。




