↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍王の卵に転生した俺は各地の天才をスカウトして王国を築く  作者: バナナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/61

第7話 石噛みの群れ

石を砕く音は、夜が明けても止まらなかった。


旧鍛冶区画へ通じる北の通路。その暗がりを、灰色の背が幾重にも埋めている。姿は猪に似ているが、鼻先は平たい岩盤のようで、口から突き出た上下四本の牙が石壁を削っていた。


一匹が噛み砕いた石片を、後ろの個体が飲み込む。群れは少しずつ前進し、竜印炉まで残り二十歩へ迫っていた。


「二十七。いや、奥にまだいる」


グラウが入口の陰から数える。固定された右翼を床へ引きずらないよう、健全な翼だけで体を支えていた。


俺も殻へ届く振動を探る。目に見える列の向こう、壁を隔てた枝道からも細かな咀嚼音が返ってくる。


「三十を超えている。壁の向こうに六、七匹だ」


「昨日はそんなことまで分からなかったでしょう」


ミーナが俺の固定枠を炉から遠ざけながら尋ねた。


「炉の振動と重なって聞きにくい。正確ではない」


魔力枯渇から戻ったばかりで、殻の中心はまだ重い。大声を出せば頭のない頭が痺れた。それでも、壁越しの数を感じ取れるのは昨日までと違う。


俺は先頭の一匹だけを鑑定した。


【鑑定結果】

種族:石噛み(個体ランクD)

レベル:6

HP:68(ランクD)

MP:31(ランクE)

攻撃:19(ランクF)

防御:23(ランクF)

速度:11(ランクF)

技能:岩砕き:ランクE Lv2、群れ押し:ランクF Lv4

状態:炉熱へ誘引、飢餓


個体だけでも俺たちの誰より頑丈だ。それが三十以上いる。


「正面から倒す相手ではない」


俺が言うと、ミーナが安堵したように息を吐いた。


「王の威圧で退ける、と言い出すかと思った」


「俺も学ぶ」


「昨日の今日だからね」


ガンツは炉と通路の間を見比べ、床へ石片で線を引いた。


「ここの天井は古い支柱で持ってる。先頭が線を越えたら柱を外し、落石で塞ぐ」


「全部を潰せる?」


ポロが水袋を抱えたまま尋ねる。


「無理だ。先頭の三匹を止めて、後ろを詰まらせる。群れが別の餌場へ移れば勝ち」


「炉の熱へ来ている。塞いだだけで諦めるか?」


グラウの問いに、ガンツは黙った。


石噛みは目の前の壁を食べて進む。落石で通路を塞いでも、それ自体が餌になる可能性がある。


「罠は使う。ただし、塞いだ後の次手も要る」


俺は区画を見回した。


守るものは炉だけではない。荷台、水桶、寝床、治療中のグラウとミーナ。退路は南の水場へ続く一本。北から群れが入り込めば、全員が狭い通路へ押し込まれる。


「優先順位を決める。第一は南の退路。第二は負傷者と水。炉は第三だ」


ガンツが顔を上げた。


「炉を捨てるのか」


「必要なら。炉を守って退路を失えば、全員ここで食われる」


「石噛みは肉より石を食う」


「飢えている。俺の殻を石と間違えるかもしれぬ」


冗談のつもりだったが、誰も笑わなかった。


役割を分けた。ガンツが落石罠。ミーナは天井管から風を通し、炉の匂いと熱を西の空洞へ流す。ポロは床へ水をまき、群れの足を滑らせる。グラウは南の退路と全員の位置を見て、撤退順を決める。俺は壁越しの群れを読み、合図を出す。


「俺も前へ出る」


グラウが言った。


「飛べぬ者が何をする」


「風は使える」


「骨がずれる」


「溜めない。ミーナの風を曲げるだけだ」


「治療契約中は、こちらの制止へ従え」


「護衛契約でもある。何もしなければ契約違反だ」


互いに引かない。


ミーナが二人の間へ尾を振った。


「グラウは前線じゃなく、中央。私の風が戻ったら、健全な翼で方向だけ変える。それ以上はしない」


「俺は退路を見る」


「だから中央。前も後ろも見えるでしょう」


グラウは不満そうだったが、最後にはうなずいた。


準備に使える時間は短かった。


ガンツが罠の支柱へ切れ目を入れ、蔓を引けば外れるようにする。落ちる石の下へ炉の燃料屑をまき、先頭を誘う。ポロは飲用水を残し、洗浄用の半分だけを床の浅い溝へ流した。ミーナは風を何度も試したが、炉の熱は重く、思うように西へ曲がらない。


「グラウ、少し押して」


彼が健全な翼を一度振る。ミーナの風が壁へぶつかる前に角度を変え、燃料石の匂いが西へ流れた。


石噛みの何匹かが顔を上げる。


「反応した」


ポロが耳を立てた。


だが群れは西へ向かわず、先頭の三匹だけが歩調を速めた。炉の熱源そのものを目指している。


「来るぞ」


俺の合図で全員が持ち場へつく。


先頭が罠の線を越えた。


ガンツが蔓を引く。切れ目を入れた支柱が外れ、天井の岩塊が崩れ落ちた。


轟音と土煙。


一匹目の背へ大岩が落ち、二匹目の前脚を挟む。三匹目は後ろから押され、頭を石の隙間へ突っ込んだ。群れの列が止まり、後続が次々とぶつかる。


「成功だ!」


ポロが声を上げる。


「まだだ。動きを見ろ」


俺は昨日の失敗を思い出し、勝ち名乗りを飲み込んだ。


石の下敷きになった先頭個体が、低く鳴いた。


すると後ろの二匹が、その背へ前脚をかけた。助けるのかと思った。


違った。


群れは負傷した仲間の硬い背を踏み台にし、落石の上へ登り始めた。


先頭個体は鳴き続ける。それでも後続は止まらない。さらに別の一匹が負傷個体の横腹へ噛みつき、岩との隙間へ体を押し込んだ。自分たちの仲間を楔にして、通路を広げている。


「あいつら、仲間を盾にしてる」


ミーナの声が震えた。


一匹が落石を越えた。背中に傷を負いながら、こちらへ駆け下りてくる。


「第一線、失敗! 水溝へ誘導!」


俺が叫ぶ。


ポロが隠していた石板を蹴り、水を床へ放つ。濡れた斜面へ石噛みの前脚が乗った。爪が滑り、巨体が横倒しになる。


ミーナが風を送り、転がる方向を西へ変える。石噛みは壁へぶつかった。


だが厚い外皮が衝撃を受け流す。すぐ起き上がり、最も近い荷台へ牙を向けた。


「荷台を食う気だ!」


ガンツが工具で鼻先を叩く。金属音に石噛みがひるむ。二撃目を振り下ろす前に、別の個体が落石を越えてきた。


一匹目は囮だった。


二匹目が横からガンツへ突進する。


「右!」


俺の警告で、ガンツは工具を盾にした。石の鼻先が鉄板へぶつかり、彼の体が荷台まで吹き飛ぶ。右腕の打撲をかばえず、苦痛の声が漏れた。


ミーナが二匹目の目を狙って爪を振る。石噛みはまぶたを閉じ、顔を外皮で守った。爪が弾かれる。敵は首を振り、牙で彼女の左脚を払った。


ミーナが跳んで避ける。治りかけた脚へ着地の衝撃が走り、体勢が崩れた。


「グラウ、ミーナの風を床へ!」


二人が同時に翼を動かす。ミーナの広い風を、グラウの短い風が下へ押す。床の水が薄い幕となって敵の顔へ跳ねた。


石噛みが目を閉じる。


その間にポロが水桶を引き、南の退路へ運んだ。


「水、退避完了!」


「寝床は捨てろ。グラウ、次はお前が下がれ!」


「まだ二匹だ」


「後ろに六匹、落石を越える!」


殻へ伝わる脚音が増えていた。罠は群れを止めるどころか、負傷個体を足場にする方法を教えてしまった。


「炉を消す!」


ガンツが立ち上がり、竜印炉へ走る。


「待て、退路が先だ!」


「火を落とせば群れが止まる!」


彼の判断にも理がある。だが南の通路には、荷台がまだ残っている。車幅いっぱいの荷台が詰まれば、全員が逃げられない。


「ミーナ、ガンツを援護! ポロ、荷台を南へ! グラウは退路の詰まりを見ろ!」


俺自身は荷台の固定枠にいる。ポロ一人では動かせない。


「俺を降ろせ! 枠ごと床へ置け!」


「危ないよ!」


「荷台が動かぬほうが危険だ!」


ポロが固定具の結び目へ歯を立てる。焦って逆の蔓を引き、枠がさらに締まった。


「下の輪だ。二本目!」


俺は振動で結び目の位置を伝える。ポロが二本目を切ると、固定枠が荷台から外れた。俺は床へごろりと落ち、亀裂へ痛みが走る。


ポロは空になった荷台を押した。少し動くが、左車輪が石へ引っかかる。


グラウが南から戻り、健全な翼と肩を荷台へ当てた。


「一度右へ振れ。石を外す」


「翼は使うなと言った!」


「これは風じゃない!」


二人で荷台を揺らし、車輪を石から外す。その後ろへ、新たな石噛みが迫っていた。


俺は床から殻を震わせ、大声を放った。


「こちらだ!」


音に反応し、石噛みの頭が俺へ向く。


灰色の巨体が突進してきた。


逃げられない恐怖で、殻の内側が冷たくなる。初日の洞鼠とは重さが違う。ぶつかられれば、亀裂ごと砕ける。


「アルド!」


グラウが荷台から離れようとする。


「戻るな、荷台を出せ!」


俺は敵の足音へ意識を集中した。真っ直ぐ来る。三歩、二歩。


ぶつかる直前、俺は高い声を一度だけ殻へ響かせた。


石噛みの右耳が反応し、頭がわずかに傾く。牙の先が俺の殻ではなく、床の固定枠へ引っかかった。


木枠が砕ける。衝撃で俺は横へ弾かれ、炉壁の近くまで転がった。


石噛みは壊れた枠を噛み、木ではなく中の石留め金へ牙を立てる。俺を見失った。


「今だ、出せ!」


グラウとポロが荷台を南の通路へ押し込む。


そのとき別の石噛みが横から飛びつき、後輪の車軸へ牙を食い込ませた。


がりっ、と嫌な音。


補修した硬木が二つに割れる。右車輪が外れ、荷台が傾いた。逃げ道の中央で止まる。


「車軸が!」


ポロが泣きそうな声を上げる。


「荷台を捨てろ!」


「でも、また作ったのに!」


「今は通路からどける。横へ倒せ!」


グラウが迷わず荷台の上端を押した。ポロも反対側から潜り込み、二人で排水溝へ傾ける。荷台は横倒しになり、半分が溝へ落ちた。南への道が一人分だけ開く。


「退路確保!」


グラウの声が響いた。


一方、ガンツとミーナは炉の停止に取りかかっていた。


ガンツが燃料口を閉じ、ミーナが天井管へ逆風を送り込む。俺は炉へ伸びていた細い魔力を一段ずつ切る。


炎が弱まり、区画の熱が下がる。


石噛みの何匹かが足を止めた。


「効いている!」


だが先頭の五匹は止まらない。一度見つけた燃料石と炉壁へ興奮し、牙を鳴らして突っ込んでくる。


「全員撤退!」


俺は命じた。


ガンツが炉から離れない。


「あと一つ、燃料箱を閉じる!」


「捨てろ!」


「開いたままなら全部食われる!」


彼は工具を燃料箱の蓋へ差し込み、歪んだ金具を戻そうとする。ミーナが隣で石噛みを風で押し返すが、敵は床へ爪を立てて進む。


一匹目が風を耐え、ミーナへ頭突きを放った。彼女は横へ避ける。二匹目がその陰から現れ、ガンツの背を狙う。


「後ろだ!」


俺の声より早く、グラウが中央から短い風を放った。


敵の頭突きが半歩ずれ、牙はガンツではなく燃料箱の側面へ刺さる。箱が敵の頭へ引っかかった。


「閉じる必要がなくなったな」


ガンツは即座に工具を捨て、ミーナとともに南へ走った。


俺は床に残っている。


「アルドを!」


ポロが戻ろうとする。


「俺が行く」


グラウが先に駆けた。三歩目で固定した翼が壁へ触れ、苦痛に体が沈む。それでも止まらず、健全な翼で俺をすくい上げた。


「風は使うなと言ったぞ!」


「これは翼だ!」


先ほどと同じ返答だ。彼は俺を胸へ抱え、足を引きずりながら南へ走る。


背後で石噛みが燃料箱を噛み砕いた。赤い燃料石が床へ散り、群れが殺到する。互いに押し合い、牙をぶつけ、通路が詰まった。


「今なら罠をもう一度使える!」


ガンツが南側の古い支柱を指す。


最初の罠と違い、こちらは退路の入口だ。崩せば炉を完全に手放すことになる。


「やれ!」


ガンツが蔓を引き、支柱を外す。今度の落石は敵を潰すためではない。俺たちと群れの間へ厚い壁を作るためだ。


石が落ち始める。


最後尾のミーナが境界を越えた直後、灰色の一匹が落石の下から飛び出した。背へ石が当たりながらも、前脚だけで這ってくる。後ろでは仲間がその負傷個体を押し、また盾にしようとしていた。


「同じ手を使わせるな!」


ポロが残った洗浄水を床へ投げた。敵の前脚が滑る。


ミーナが風を左から、グラウが右から送る。二つの風が正面でぶつかり、負傷個体の顔へ巻き上がった砂を叩きつけた。


石噛みが目を閉じる。


ガンツは地面に落ちた太い支柱を両腕で持ち上げ、敵の鼻先へ押し当てた。右腕の痛みに歯を食いしばり、足を一歩ずつ進める。


俺はグラウの胸から、低い声を殻へ響かせた。


床と壁が同時に震える。石噛みは仲間の足音と俺たちの位置を見失い、頭を左右へ振った。


「押せ!」


四人の力が重なる。


敵の巨体が落石の向こうへ戻る。直後、最後の岩塊が隙間へ落ち、通路を塞いだ。


壁の向こうで牙が石を噛む。


だが炉の火は落ち、燃料石は散っている。咀嚼音はしばらく続いた後、少しずつ遠ざかり始めた。


誰も勝ったとは言わなかった。


俺たちは水場まで下がり、人数と傷を確かめた。ミーナの左脚は再び腫れ、ガンツの右腕には紫色の打撲が広がっている。グラウの翼固定は緩んだが、骨の位置は大きくずれていない。ポロは無傷。俺の亀裂も広がっていなかった。


荷台は車軸を失い、南の通路脇へ横倒し。炉は火を消し、燃料を一日分使った。寝床の一部と固定枠は破壊された。


「守れなかった」


ガンツが右腕を押さえ、俯く。


「何をだ」


「炉も荷台も。俺が作った罠も、一度で破られた」


「退路は守った」


グラウが言う。


「罠が破られたから、敵が負傷個体を踏み台にするって分かった。二度目はその前に押し返した」


ミーナも傷を冷やしながら続ける。


「荷台を倒したから、全員通れた。壊さなかったら、あそこで詰まってた」


ポロは空になった水袋を抱えた。


「水、全部使っちゃった」


「また汲める。お前が水場を見つけたからだ」


俺は一人ずつ見た。


最初の罠が失敗した。炉を消しても先頭は止まらなかった。荷台を守ろうとして退路が詰まりかけた。それでも、そのたび判断を変えたから生きている。


「反省すべきは、落石で止まると考えたことだ。群れは仲間さえ足場にした。次は敵の習性を一度見てから罠を決める。設備は最初から切り離せるように作る。守る順序は戦う前に全員で確認する」


「お前を退避させる方法も」


グラウが俺を床へ置く。


「固定枠が壊れたら、毎回抱えて走るのは無理だ」


「俺は軽いだろう」


「重い」


「王の威厳だ」


「中身が詰まってる」


ミーナが笑い、緊張が少しだけほどけた。


午後、群れが去ったことを確認してから炉へ戻った。落石の下には、動けなくなった石噛みが三匹残っていた。二匹は既に死に、一匹は重傷だった。


俺たちはすぐ近づかず、長い支柱で反応を見る。生きていた一匹が最後の力で噛みついた。支柱が中央から砕ける。


「確認してよかった」


ポロが青ざめる。


ガンツが落石を少しずつ動かし、敵の頭を固定する。ミーナとグラウが左右から風を当て、こちらを向けないようにする。俺が動きの間隔を読み、ガンツへ合図する。最後は太い岩を首元へ落とし、息の根を止めた。


決着後も、全員で呼吸と脚の反応を確かめた。


解体には半日かかった。


石噛みの肉は硬いが、炉で長く煮れば食べられる。牙は車軸の外側へ添える補強材。外皮は熱へ強く、炉の亀裂を覆う断熱板になる。爪は石を掘る工具へ加工できる。


「敵が壊したものを、敵の体で直す」


ガンツの目に少し光が戻った。


「牙は全部使うな」


俺は言った。


「一本は罠の試験に使う。石噛みがどの角度なら噛みにくいか、次までに調べる」


ポロは肉を水で洗い、食用と保存用へ分けた。ミーナは狩猟に出られない代わりに、外皮についた汚れと寄生虫を調べる。グラウは落石の向こうへ残った群れの足跡を記憶し、再び来た場合の別退路を選んだ。


ポロが白い根の歯痕を見つけた旧鍛冶区画への道も、石噛みの移動と落石で塞がれていた。細い隙間から匂いは拾えるが、掘れば群れを呼び戻す。捜索は道を開けるのではなく、まず別の入口を探すことになった。


戦闘が終わっても仕事は続く。


肉を煮る火。車軸を直す牙。炉を守る外皮。今日の傷から、明日の生活を作る。


夕方、竜印炉を最低出力で再点火した。俺はガンツの確認を待ち、魔力を細い糸三本だけ流す。ミーナが排熱、ポロが水、グラウが退路を確認する。


炎が安定した瞬間、殻の中で新しい感覚が形を取った。


壁の向こうの足音。床下の空洞。炉壁へ残る細かな亀裂。それらが、振動の濃淡として一つの地図になる。


殻響探知。


名前が浮かんだ。


「群れの数を、もっと正確に読めるようになった」


俺が告げると、ミーナが微笑んだ。


「痛い目に遭った分は、無駄じゃなかったのね」


「無駄にはせぬ。次は、もっと早く撤退を決める」


勝つことだけが成長ではない。何を守り、何を捨て、どう生き残るかを選べるようになることも、力だ。


解体した最後の牙をガンツが持ち上げたとき、先端から青い液が一滴落ちた。


石の床が、じゅっと音を立てて黒く変色する。


「触るな!」


ミーナがガンツの腕を止めた。


青い液は牙の内側から、次々とにじみ出していた。


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。