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龍王の卵に転生した俺は各地の天才をスカウトして王国を築く  作者: バナナ


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第5話 折れ翼の逸材

黒い影は、壊れかけた矢のように荷台へ突っ込んできた。


旧採掘支路の幅は荷台一台分しかない。左は岩壁、右は腰ほどの深さの排水溝。前方から迫る影を避ければ、荷台ごと溝へ落ちる。


「水桶を守れ!」


俺が叫ぶより早く、ミーナが前へ跳んだ。


黒い影の姿が淡い鉱石灯へ入る。痩せた四肢を灰黒い羽毛が覆い、肩から伸びた翼の片方が不自然に垂れていた。嘴ではなく獣の顎を持ち、額から後ろへ短い羽角が並んでいる。赤茶色の目は落ちくぼみ、頬の肉が削げていた。


ミーナの右爪が影の顔を狙う。


相手は走ったまま健全な翼を床へ叩きつけた。


ぶわり、と通路の空気が膨らんだ。


目に見えない塊がミーナの胸へぶつかる。彼女は爪を届かせる前に横へ押され、壁へ肩を打った。黒い個体は進路を変えず、その脇を抜ける。


狙いは俺ではない。


荷台の後ろに積んだ、最後の洞鼠肉だ。


「止めろ!」


ガンツが荷台を斜めにし、通路を塞いだ。ポロは水桶の陰で蔓を握り、肉の包みを荷台の中央へ引く。


黒い個体は速度を落とさない。折れた翼を体へ巻き、頭から荷台へぶつかった。


激突。


固定枠が軋み、俺の殻が前へ傾く。ガンツの四肢が床を滑り、荷台は半歩押し戻された。相手も額を打ってよろめいたが、すぐ前脚を荷室へかけた。


ポロが肉を抱えて後ろへ逃げる。


黒い顎が、彼の尾のすぐ先で閉じた。


「ポロから離れろ!」


俺は声を殻へ響かせた。狭い通路で増幅された音に、黒い個体の耳が伏せる。その一瞬にミーナが背後から飛びかかり、首筋へ爪を立てた。


相手は倒れず、健全な翼を内側へ畳んだ。


先ほど放った風が翼の下へ吸い戻される。羽毛の隙間で空気が唸り、目に見えない力が蓄えられていく。


「離れろ、ミーナ!」


彼女が跳んだ直後、黒い個体は翼を一気に開いた。


圧縮された風が破裂する。ミーナは空中で回転し、壁へ背中から叩きつけられた。ガンツも荷台ごと押され、左車輪が排水溝の縁へ乗り上げる。


俺の固定枠が大きく傾いた。


「また落ちるぞ!」


ガンツが尾を車軸へ巻き、右腕だけで荷台を支える。昨日打った腕が震えている。


黒い個体は風を放った反動で床へ伏せた。呼吸が荒い。それでも肉へ向かって前脚を伸ばす。


「来ないで!」


ポロは後ずさり、肉の包みを胸へ抱いた。逃げ道はない。後ろは崩れた石で塞がれている。


俺は黒い個体へ鑑定を伸ばした。


動きの最中で焦点が定まらない。名前も種族名もぼやけ、状態だけが赤く明滅する。


【鑑定結果】

名前:グラウ

種族:黒翼の希少個体(個体ランクE)

レベル:4

HP:19(ランクF)

MP:7(ランクG)

攻撃:14(ランクF)

防御:12(ランクF)

速度:15(ランクF)

状態:重度飢餓、脱水、右翼骨折、全身衰弱

技能:風溜め:ランクF Lv2、突進:ランクF Lv3

観察:風を保持する羽毛構造に特異な反応がある。


敵ではない。


少なくとも、俺たちを殺すことが目的ではない。ただ飢えに追い立てられ、食料以外が見えなくなっている。


「攻撃を止めろ! こやつは腹が減っているだけだ!」


「だから襲っていいわけじゃない!」


ミーナが立ち上がる。背を打った痛みで顔をしかめながらも、再び爪を構えた。


「分かっている。だが骨折している。次に風を使えば、翼が二度と戻らぬかもしれん」


グラウの赤茶色の目が、初めて俺を見た。


「黙れ……」


掠れた男の声だった。


「俺の、何が分かる」


「三日以上まともに食べていない。右翼は根元から折れ、熱を持っている。風を溜めるたび骨がずれている」


「見るな!」


怒声とともに、グラウが床を蹴った。


今度は俺へ向かってくる。


ミーナが横から爪を振り、彼の進路を変えた。グラウは身を低くしてかわし、左前脚でミーナの傷ついた脚を払う。ミーナが体勢を崩す。


グラウはその隙に荷台へ飛び乗った。


「アルド!」


ガンツが固定枠を守ろうと腕を出す。グラウは顎でその腕を弾き、肉へ手を伸ばした。


俺は殻を前へ揺らし、彼の額へぶつけた。


鈍い痛みが全身へ走る。グラウもよろめいたが、倒れない。赤茶色の目が怒りで細くなる。


「食いたいなら条件を言え!」


「邪魔するな!」


「腹が減ったと一言言えぬのか!」


「言えば、くれるのか!」


「全部はやれん!」


俺の返答に、グラウの顔が歪んだ。


「なら同じだ!」


彼が前脚を振り上げる。爪が殻へ落ちる直前、ガンツの太い尾が横から巻きついた。グラウの胴を締め、荷台から引きずり下ろす。


グラウは床へ落ちながら、健全な翼でガンツの顔を打った。尾の拘束が緩む。彼は再び風を溜めようと翼を引いた。


「使うな!」


ポロが叫んだ。


全員の動きが一瞬止まった。普段は小さな声しか出さないポロが、肉を抱えたままグラウの前へ立っている。


「翼、震えてる。お腹空いて、足も震えてる。もう一回やったら、立てなくなるよ」


「どけ」


「半分ならあげる。だから止まって」


「ポロ、それは群れの分だぞ」


俺が言うと、彼は唇を噛んだ。


「分かってる。でも、このひとも今、死にそう」


肉は一包みしかない。半分はポロの群れへ持っていく約束だった。残り半分を四人で分ける予定だ。グラウへ渡せば、ミーナとガンツとポロの食事がなくなる。


グラウが鼻を鳴らす。


「同情はいらない」


「じゃあ、何がいるの」


「肉だ」


「同じじゃないか」


ポロのまっすぐな返しに、グラウが言葉を失った。


ミーナが俺へ低く囁く。


「今なら押さえられる。気を失わせて、遠くへ置いてくる」


「目を覚ませば追ってくる。こちらの拠点も知られる」


「じゃあ倒す?」


「それでは翼も、命も失う」


「あんたは何を守りたいの」


厳しい問いだった。


俺たちの食料。ポロとの約束。仲間の安全。目の前で飢えているグラウ。全部守る方法などない。


「まず、戦いを終わらせる」


俺はグラウへ向き直った。


「グラウ。肉の四分の一を今すぐ渡す。水も飲ませる。代わりに武器となる爪を引き、風を溜めるな」


「足りない」


「飢えた体で一度に食えば吐く。四分の一を食べ、半刻休む。その間に次の条件を話す」


「信用できるか」


「できぬだろうな。俺も、お前を信用しておらん。だからミーナとガンツは構えたままでよい。お前も逃げ道へ近い位置に座れ」


グラウは通路の前後を見た。前は荷台、後ろは俺たちが来た道。排水溝へ飛び込めば逃げられるが、骨折した翼では登れない。


「肉を先に寄こせ」


「爪を引くのが先だ」


「また奪うつもりだろ」


「肉はポロに持たせたまま、一歩ずつ近づける。お前も一歩下がれ」


グラウは拒みかけた。だが腹が鳴り、赤茶色の目が肉へ吸い寄せられる。


彼は前脚の爪を岩へ押しつけ、ゆっくり鞘へ戻した。一歩下がる。


ポロが一歩進む。


互いに三度繰り返し、肉を床へ置いた。ポロが離れると、グラウは飛びつき、一口で飲み込みそうな勢いで噛み始めた。


「遅く食え」


「うるさい」


「吐けば分け前は増やさぬぞ」


グラウの顎が少しだけ遅くなった。


水も小皿へ一杯ずつ出した。彼は最初の一杯を一気に飲み、二杯目へ顔を近づける。ミーナが皿を引いた。


「時間を置いて」


「返せ」


「吐きたいなら飲めば」


ミーナは皿を置き直した。グラウは睨んだ末、顔を背けた。


戦いが止まると、全員の負傷が見えてきた。ミーナは背中を壁へ打ち、左脚の傷も少し開いている。ガンツは昨日の打撲に加え、顔へ羽軸の切り傷。グラウは右の翼骨が皮膚の下で盛り上がり、乾いた血が羽毛を固めていた。ポロだけは無傷だが、肉を渡した緊張で前脚が震えている。


俺の殻も、グラウの額へぶつけた場所が鈍く痛んだ。


「最初から肉を投げていれば、戦わずに済んだかもしれぬ」


俺が言うと、ミーナが首を振った。


「あの速さで飛び込まれたら、考える暇なんてなかった。それに、投げた後で私たちまで襲ったかもしれない」


「俺は首を狙いすぎた」


ガンツが顔の血を拭う。


「風を溜める前に、翼の根元を押さえるべきだった」


「ぼく、肉を後ろへ持っていったから、逃げ道を塞いじゃった」


ポロも俯いた。


「いや。守ろうとした判断は間違いではない。次は食料を荷台の中央ではなく、切り離せる袋へ入れる。襲われたら袋だけ投げ、敵との距離を作る」


俺がまとめると、グラウが低く笑った。


「次も襲われるつもりか」


「ここでは当然の備えだ。お前も含めてな」


グラウの目が冷える。


「俺を仲間にしたつもりか」


「まだしておらん。なぜ一人で、そんな傷を負っているか聞いてからだ」


「関係ない」


「なら、ここで別れる。肉の残りは渡せぬ」


「脅しか」


「取引だ。俺たちはお前を治療するか、敵として警戒するか決めねばならん。何も知らずに拠点へは連れていけぬ」


グラウは立ち上がろうとした。前脚に力を入れた瞬間、体が傾く。健全な翼を床へついて支え、痛みを隠すように牙をむいた。


「一人で行ける」


「行けるだろう。次の曲がり角まではな」


「黙れ」


「その先で倒れ、追っている者に見つかる」


グラウの瞳が揺れた。


追手がいる。俺は確信した。


「誰に追われている」


「追われてない」


「では、なぜ後ろの音を何度も確かめる。肉を食うときも、俺たちより来た道を見ていた」


彼は答えなかった。


沈黙が長くなる。ミーナは急かさず、傷ついた脚を畳んだ。ガンツは工具をしまわないが、先端を床へ向けた。ポロは肉の包みを抱いたまま、グラウから目をそらさない。


「群れを追い出された」


やがて、グラウが絞り出すように言った。


「飛行狩りで翼を折った。飛べない者へ割く肉はないと言われた。夜のうちに風穴から逃げたが、二匹が追ってきた」


「なぜ追う。追放したなら放っておけばよい」


「俺が知ってる狩場を、別の群れへ売ると思ってる」


「売るつもりは?」


「食うためなら売る」


即答だった。ガンツが眉を寄せる。


「正直だな」


「嘘を言っても、そこの卵が見る」


「心までは見えぬ」


俺が訂正すると、グラウは初めて驚いた顔をした。


「それを俺に言うのか」


「できぬことを、できるとは言わん」


「王だって話は嘘だろ」


「それは真実だ!」


声が大きくなり、皆が耳を伏せた。


グラウは痛みに顔を歪めながら、わずかに笑った。


「その姿で?」


「今は卵なだけだ」


「じゃあ、孵ってから言え」


腹立たしい。だが、彼が完全に敵意を向けていないことも分かった。


「条件を提示する。翼が治るまで、俺たちの寝床と水を使ってよい。食料は全員で分ける。その代わり、夜の警戒と荷台の護衛を担当せよ。追手が近づけば隠さず報告する。拠点の場所を外へ売らぬ」


「治るまで何日だ」


「今のままなら十日以上。正しく固定し、食べれば短くなる可能性はある」


「飛べない俺に護衛ができると思うか」


「先ほど俺たち四人を押し返した。風を溜める力は飛ぶ以外にも使える」


鑑定で見えた特異な反応は、現在の技能よりはるか先へ続いていた。風を羽毛へ保持する構造が異常に強い。育てば、S級へ届く可能性さえある。


だが、それは俺にしか見えていない。将来の力を餌にすれば、彼自身ではなく可能性を買うことになる。


「ただし、今のまま無理に風を使うな。見張りでは耳と判断を使え。戦うときも、誰を先に逃がすか決める役が要る」


グラウは鼻で笑った。


「会ったばかりの俺に任せるのか」


「試用だ。失敗すれば役割を変える」


「追手が来たら、俺だけ置いていくか?」


「お前が俺たちを売らぬ限り、置いていかぬ」


返事はすぐになかった。


グラウは残った肉を見た。次にミーナの固定された脚、ガンツの打撲した腕、ポロの小さな体、最後に俺のひび割れた殻を見る。


「弱い連中ばかりだ」


「お前も含めてな」


「俺は弱くない」


「では立って十歩歩いてみよ」


グラウは立ち上がり、三歩目でよろめいた。


ポロが支えようと近づく。グラウは反射的に牙を見せたが、すぐ顔を背けた。


「治るまでだ」


彼は低く言った。


「翼が治ったら、契約は終わり。追手と戦うかどうかは俺が決める。王だろうが卵だろうが、勝手に命令するな」


「共同体を危険へさらす判断は認めぬ」


「なら俺は入らない」


また衝突した。


ミーナが間へ入る。


「追手を見つけたら、まず全員へ知らせる。戦うか逃げるかは、その場で話す。急ぐなら、退路を確保する人が決める。これなら?」


グラウは考え、うなずいた。


「退路は俺が見る」


「なぜだ」


「追われる側が、一番逃げ道を知ってる」


筋は通っている。


「よかろう。治療期間だけの護衛、警戒、退路確認を任せる」


「臣下じゃない」


「ガンツと同じことを言うな」


「事実だ」


「共同作業者が増えたな」


ガンツが笑った。


俺たちは荷台の荷を組み替えた。グラウを固定枠へ寝かせ、俺はその脇を蔓で固定する。水桶は前へ移し、食料袋は一息で外せる結び方へ変えた。ミーナとガンツが荷台を押し、ポロは後ろの警戒を担当する。


「俺は歩ける」


グラウが不満を漏らす。


「三歩で倒れた者が言うな」


「卵に言われたくない」


「俺は生まれつき歩けぬだけだ」


「もっと悪いだろ」


彼の返しは鋭い。ミーナとは違う種類の厄介さだった。


狭窄部を抜ける前に、俺たちは戦闘の跡を消した。血へ乾いた土をかけ、落ちた黒い羽を回収し、車輪跡を途中で二方向へ分ける。グラウが指示し、追手がどちらを選ぶか迷うよう、片方には彼の匂いがついた羽を置いた。


「最初から逃げ道を考えているのだな」


「考えなかった奴から死ぬ」


「お前の群れでは、誰が退路を決めていた」


「俺だ」


「それでも追放されたのか」


グラウの顎が固くなる。


「飛べなきゃ、正しいことを言っても遅い」


悔しさと怒りが混じった声だった。


俺はそれ以上聞かなかった。いつか彼自身が話すまで待てばよい。


水場へ戻ると、まず翼を固定した。ガンツが細い骨を左右へ当て、ミーナが羽毛を分ける。ポロは冷たい水で熱を持った根元を濡らした。グラウは痛みに息を詰めても声を上げず、爪で床を削った。


「痛いなら痛いと言え」


「言ったら治るのか」


「周りが力加減を変えられる」


グラウはしばらく耐えた後、骨を正しい位置へ戻す瞬間だけ「待て」と言った。ガンツが止まり、呼吸が整うまで待つ。二度目の合図で固定を再開した。


治療を終えると、肉の残りを分けた。ポロの群れの分には手をつけない。ミーナ、ガンツ、ポロ、グラウで少量ずつ。誰の腹も満たせない量だった。


「明日は狩りが必要ね」


ミーナが空の包みを見る。


「私の脚と、グラウの翼じゃ遠くへ行けない」


「荷台も予備車軸がない。戦いになれば逃げ切れん」


ガンツが続ける。


「ぼく、食べられる根を探す」


ポロが言った。


「水場の周りだけだ。群れの痕跡も見たい」


俺は役割を決めた。ミーナは近場の罠と匂いの確認。ポロは根と菌の採取。ガンツは荷台修理と肉を吊るす棚。グラウは休みながら通路の警戒、追手が来た場合の退路を二本選ぶ。俺は採取物の毒性を鑑定する。


狩りと生活の準備を分けなければ、獲物を得ても保存できず、負傷者ばかり増える。


「命令か?」


グラウが問う。


「提案だ。異論があるなら言え」


「俺を入口側へ置け。奥だと、追手の音が水に紛れる」


「だが逃げるには遠い」


「先に見つければ逃げる時間が増える」


「一人で戦うな」


「分かってる」


短い応答だったが、彼は自分の役割として考えていた。


夜、四人が眠りについた後も、グラウは入口で耳を澄ませていた。俺は水音を聞くふりをして、その背を感じていた。


彼は一度、こちらを振り返る。


「なぜ俺を殺さなかった」


「食料を狙っただけだと分かったからだ」


「荷台を奪おうとした」


交渉が成立する直前、グラウは降参したふりをしていた。力を抜いたと見せ、ガンツが近づいた瞬間に固定蔓へ爪を伸ばした。ポロが空腹による震えに気づき、体勢を崩したため失敗したのだ。


処罰する理由はある。


「奪っても、お前一人では運べなかった。飢えで判断を誤った者を殺しても、得るものはない」


「甘いな」


「次に同じことをすれば、契約を切る」


「殺さないのか」


「追手へ拠点を売れば別だ。仲間の命を危険へさらす者を、放置はできぬ」


俺の声は、自分でも驚くほど硬くなった。


グラウはしばらく黙り、入口へ顔を戻した。


「王族って話は信じない」


「しつこいぞ」


「でも、弱い奴を見捨てないって判断は覚えておく」


それは忠誠でも感謝でもなかった。ただ一つの判断を、彼が自分の目で確かめたということだ。


今はそれで十分だった。


深夜、壁の奥から低い脈動が伝わってきた。


どくん。どくん。


俺の魔力が動くたび、同じ間隔で返ってくる。水音でも、獣の足音でもない。


「起きろ」


グラウが先に異変へ気づいた。


壁の一部に刻まれた古い竜の印が、赤い線を浮かべている。今まで冷たい石だった場所が熱を持ち、閉ざされた炉の輪郭を闇へ描き出した。


俺が近づくよう意識すると、赤い光はさらに強くなった。


「これは……俺を呼んでいるのか?」


壁の向こうで、長く眠っていた何かが目を覚まそうとしていた。


挿絵(By みてみん)


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