第6話 禁術の心得
「………あー…」
眠りから覚めた煌矢、神としての新たな日常を想像できずにいた。
(…暇だな。)
この世界においてゲームや動画の様な娯楽は無く、チェスやトランプ程度だという。
「なんてつまらない世界なんだ…」
煌矢が今行える暇潰しは神殿を散策する程度であった。神殿の外は深い木々に囲まれた樹海であり、一度迷えば命取りとしか思えない…
(外出は止めといた方がいいけど、しかし…今は何だか寝付けないし、暇だ。)
ベッドから身体を起こして神殿内を見て回る。
(…ある程度聞いていたけど、広いな)
真っ暗な神殿内はとても広く、学校の体育館すら小さく思えるサイズ感だ。
「デカけりゃいいってもんじゃねぇだろ…」
虫の声一つすら無い広大な部屋は孤独をより実感させる…
「はぁ〜…」
溜息を吐きながら入った一室、馬鹿げたサイズの本棚が並ぶ書庫であった。
「…日本語の本棚は何処だろうか」
本棚に目を向けていると、様々な背表紙の文言が目に入る。
(えと…魔導連盟術書記録第十二、初版…ゴブリンでも分かる魔力構築…あれ?)
書かれた文字は日本語ではない異郷の言語だ。
しかし、目に入った文字を情報として読み解く事が出来ているのだ。
(なんで?………神様になったからか)
蝋燭の明かり一つ無い書庫で、煌矢は当たり前の様に本を読む。
(…明かりもつけずに読んでたら、気味悪がられるか?)
家に引きこもり、暗闇で生活してきた煌矢にとってはこれは普通のことであった。
(…変えてかなきゃな)
適当に選んだ本を手に取り、魔力という存在について読み解く。
しかし、そこには一つの問題が見つかった。
(当たり前だけど、どの本も魔力が使える事は《《前提条件》》だな…)
カルシノクが言っていた様に、彼らにそれを説明する為の言葉が無いのだ。それ故に個人の直感とイメージこそが重要なのだろうか…
「う〜む…こういう時は真似だな」
目を閉じて、カルシノクの放った光の魔法を思い出す。
「カルシノクは確かこうやって…」
両手を高く上げた後、大地に触れて魔法陣を構成して光を作り出すイメージを練る。
「……!?」
突如、眩い光が現れる。閉じた目の上から視界を焼き尽くさんばかりの光が現れている事を実感する。
「ぬわぁっ!?消灯!ライト消して!!」
パチッ…と閃光は消え失せ、少しづつ白く眩んだ視界を暗闇が優しく包み込む。
「うぅ〜…目がぁ〜…眩しぃ…」
しかし、今の体験を通して魔力を使うという事が何であるかを体感した。脳や脊髄の身体制御よりも更に深くに結びつく魂や精神の様な[何か]を制御する事。それは脳による簡略化された制御ではなく、魂による複雑で精密な肉体の完全な制御。
「うう…疲れるなこれ…しかもまだちょっと明るいし…」
「何事だーっ!」
「うわっ!?」
空間に亀裂が入り、上からファトゥールが隕石の如く降ってくる。
「危な…」
「ぶぎゅ!?」
ソファに激突してファトゥールが地面に伸びている。
「…危ないでしょ、何やってるんです?」
「こっちの台詞だよ!何だったのさっきの馬鹿みたいな魔力は!?」
「分かったんですか?まぁ、周りを明るくした方がいいと思ってカルシノクがやってた魔法の真似を…」
「マジ?う〜ん…」
ファトゥールは光を作り出し、地面を見つめ始める。先程魔法を試した箇所は地面に奇妙なミステリーサークルが焼き付いている。
「真似るだけでこうはならないでしょ、どうやって魔法を使ったの?」
「本を読んだんですよ」
「本〜?どれどれ……あ〜この禁書ここにあったのかぁ…………禁書ォ!?」
「…めんどいし僕はもう疲れたんで、そろそろ一眠りさせてもらいますよ」
「あっコラ待て!?」
続




